マグロ戦争

2007 アスコム 軍司 貞則

 

魚は有限な資源だ。以前、飛行機で漁業関係の方と乗り合わせて話す機会があった。ここぞとばかりに、海洋資源について聞くと「減っていっている」ということだった。その人は「刺身は料理だ」と言っていた。刺身として食べるために様々な技術を使っているとのことだった。それは、この本で語られているマグロの超低温保存技術についてのことだったのかもしれない。

著者は様々な人に取材することでマグロについての情報を集めていっている。逆に資源が枯渇しているという近年のマスコミ報道には否定的だ。

日本のマグロ生産者(漁船)がカツカツ。台湾人は国ごとに船の制限があるから、他の国の国籍の船として漁業をしたり、日本人に帰化して日本船のオーナーになっている。超低温によって保存が効くようになり、流通革命が起こった。現在では半年もたせることができるということだ。

違法行為をする台湾船を主導しているのは日本の商社。日本VS台湾の構図ではなく、日本VS日本であるとのこと。(日本の商社は日本の産業を壊すことを他業界でもしていると思う。林業について前から知りたいと思っている)

COマグロ。一酸化炭素で色をよくして、かつ鮮度を保っているマグロ。台湾などではマグロの消費量は少ないとのこと。巻き網という一網打尽の漁法は環境への負荷が大きい。アメリカなどの環境保護団体のために、イルカを保護するために捕るべきではないマグロの稚魚が犠牲になっているとのこと。そもそも環境保護団体は企業献金によって支えられているので、企業の利益に沿った行動を少なからずするとのこと。マグロの稚魚はツナ缶などになるとのこと。(つまり環境に負荷を与えている漁法で取られたものがツナ缶…。うむむ)

そしてマグロの蓄養。抗生物質の投与や、薬品での色づけ。(まあ、これはマグロに限らないだろう)

まとめると、「生のクロマグロが食べたい」と思った。

雨はあした晴れるだろう

2000 角川書店 三浦 綾子

 

「雨はあした晴れるだろう」「この重きバトンを」「茨の蔭に」の3篇。

白と黒がハッキリしている。鋭すぎる正義に痛みを感じる。自分の中の“罪”を感じるのか。やっぱりキリスト教的な手法なのかな。「茨の蔭に」で子供が犠牲になっているのはやるせない。ほんとにそれだけはやめて欲しい。

柔らかい心

角川書店 鎌田 敏夫

 

イタリアで自立して生活する律子の元に一通の写真が届く。二人の少女が写っている写真だ。「私とあなたは病院で取り違えられたんや、二十八年前に」日本から来た美弥はさらりと告白する。それから律子は自分自身を見つめなおす。

ソツがない。芸術に対する考え方が好き。女性の手練はすごい。こんな女性を作り上げられる作家さんはモテるだろうなぁ~って。

空中庭園

2005 文藝春秋 角田 光代

 

「家買ったら帰るところがあるって発想がお子さまなんだよねー」

娘、父、母、息子。それぞれから見た“隠し事のない”家庭。

やるせない。ん、けど勉強になった。

メゾン・ド・ヒミコ 通常版

2006

 

自分と母を捨てたゲイである父親。沙織はその存在さえも否定して生きてきた。ある雨の日、彼女が働く塗装会社に春彦という青年が訪ねてくる。父の恋人である彼は、沙織の父が癌で死期が近いと言い、父の営む老人ホームを手伝わないかと誘う。“メゾン・ド・ヒミコ”—-そこはゲイのための老人ホーム。犬童一心監督、渡辺あや脚本による第2弾!!

前作のジョゼ…が良すぎたので、ちょっと躊躇していたけど、早く見ればよかった。家族、居場所、ゲイ、老人、恋愛、性愛、、、テーマがこれでもか!ってほど詰まり過ぎているが、すべてを消化しきっている。すごすぎる。

秘密

2001 文芸春秋 東野 圭吾

 

「世の中には、素晴らしいものが本当にたくさんあるのよね。そんなにお金をかけなくても幸せになれるものだとか、世界観がかわっちゃうものだとかが簡単に手に入る。どうして今まで気がつかなかったのかなと思っちゃう」

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの直子だった。直子として送ったものとは違う人生を切り開いていく妻に、夫・平介はとまどいを隠せない。切ない、そして愛情あふれるファンタジー。

いやー。せつねー。せつないの大すきときめきときす。正直、何となく手にとったので、あまり期待をしていなかったけど、こんなに泣けるとは思わなかった。3本くらい軽くとられた。最後のページでは、ともえ投げで場外までぶっ飛んだ。「目に見えるものだけが悲しみではない」など感情のディテールをうまく捕らえた言葉もあったし。ファンになりますたたたたたまらん。

オーデュボンの祈り

2003 新潮社 伊坂 幸太郎

 

コンビニ強盗に失敗した伊藤は、警察に追われる途中で意識を失い、見知らぬ島で目を覚ます。仙台沖に浮かぶその島は150年もの間、外部との交流を持たない孤島だという。そこでは独自の文化が発達している。言葉を解するカカシ「優午」がいて、人を死によって自由に裁く権利を持つ男「桜」がいる。その島で事件が起こる。

どうにも読みにくかった。カオス理論などの説明がチャチに感じる。うん、けど、やっぱり正義漢かな。超正義漢トマス・モアが「ユートピア」を作ったけど、それを意識しているところもあるのかな。

自動車の社会的費用

1974 岩波書店 宇沢 弘文

 

『イキガミ』という漫画を知っているだろうか?この漫画の日本では、「国家繁栄維持法」によって、国民に「いのちの価値」を考えさせることで国家をより豊かにしている。およそ1000分の1の確率で選ばれた18~24歳の若者が、24時間後には死んでしまう…。国家の繁栄のために命を?!とあまりにも現実離れした設定であるように感じる。

ひるがえって、現在の利便性を追求した自動車社会である。年々、法律が厳しくなっているせいか、死亡者数は減っているが、それでも18年度も6000人近くの人が亡くなっている。負傷者数にいたっては100万人を超えている。効率化のために犠牲になっているようにも見えないだろうか?もちろん包丁にだってフォークにだってリスクはあるが、自動車社会が市民に与えている影響は大きいように思える。もちろんメリットも計り知れないが、結果的には市民の基本的権利を大きく阻害する要素にもなっていないか?というのが著者のスタンスだ。

著者は経済の専門家である。経済の専門用語が頻出して後半は読みにくかった。自動車は安価な交通手段だが、その費用を「内部化」できていないという。利用者が支払うべき費用を支払わないで、使っているということだ。たとえば、先にあげた交通事故の費用や、環境に与える影響を費用化したものだ。環境汚染はきっと各種のアレジーの原因にもなっているだろう。もし事故が起こりにくい道路の建設などを含めた社会的に費用を算出してみると、車一台辺りの価格は200万円/年になるという。また道路の建設に関しては弱者が大きな負担を強いられているということだ。

かくいう私は、車をコスって修理に出しましたorz
ガソリンも上がったし、もう、普通に車の維持費って高い…。
そういえば、奈良にはNOxの規制もないらしい。

サマータイムマシン・ブルース

2006 本広克行 瑛太, 瑛太, 上野樹里, 与座嘉秋, 川岡大次郎, ムロツヨシ, 永野宗典, 真木よう子

 

真夏なのにクーラーのリモコンが壊れたSF研究会の部室。そんなところへ偶然現れた本物のタイムマシン。昨日にタイムスリップして、壊れる前のリモコンを取ってくれば良いと思いつく。だが、それは過去を変える行為であり、そのせいで矛盾が起こったら、全てが消滅する恐れが!そこで過去を元に戻すための大冒険がスタートする!真夏の青春SFコメディ。

構成がすごいうまくできてて、後半に向かって謎がとけていく。けど、もうちょっと人間くさい?青春っぽいエピソードを入れてほしかったなぁ~と。

ストロベリーショートケイクス (出演 池脇千鶴)

魚喃キリコの同名コミックを原作に、現代を生きる4人の女性の姿を描く。恋を切望する少女、一途な想いを抱えたデリヘル嬢、自尊心の高いイラストレーター、愛に飢えたOL、4人の女性の恋愛を通して女心をえぐりだした作品。

痛し…。魚喃キリコさんの漫画は何冊か読んでいるし、痛さには免疫があると思っていたが、痛すぎ~~。ベッドシーンで涙が出てきた作品は初めて~~。下着姿がよく出てきたが、妙に気恥ずかしかった。「それ見せてくれるな」みたいな。現実では特異点にいるような女性の痛さを10倍くらいにして描いているのかなぁ。ふと思ったのがみんな「求めている」ってことかな。「求めている人は多いけど、与える人って少ないのよ」という山本文緒の文を思い出す。与える人の需要は多いからモテるらしいヨ!w

池脇千鶴さんはスッピンっぽいメイクと前髪はよかったけど、後ろ髪とあの服装とかどうなの?と、おもた。