パール・バック聖書物語 旧約篇 (1)

1981 社会思想社 パール・バック, 刈田 元司

 

旧約聖書を読みやすくした翻訳本。作者は「大地」のパールバック(大地はカナリお薦め)。アダム、ノアの箱舟、アブラハム、モーゼの出エジプト、ダビデとゴリアテの対決、その後ダビデが王になる、などのエピソードがつづられている。イスラエル、ユダヤ人の歴史がわかる。始めの方は放牧生活を中心としているが、後のほうは国と戦争の話が主になっているような印象。

叔母から「旧約聖書は人類の闘争などの歴史のすべてが書いてある」と以前聞かされたので読んで見たいと思っていたが、やっと簡易版を読むに至った。どうだろう。少なくても簡易版を読んだ限りでは人類の普遍的な大きな流れを感じるとまではいかなかった。けれど旧約聖書そのものだと筋を追いにくいようなイメージがあるが、こちらは普通に物語していてサラサラ読める。

物語の始めの方で「遠方から嫁いで来たリベカはラクダの上から、遠くに夫となるイサクを見とめると、結婚式まで顔が見れないようにベールをした」との記述があったが、この遊牧民族の風習が2000年以上の月日を越えて、今も教会で行われていて日本人が真似をしていると思うと壮大さと滑稽さが入り混じる。出てくることは知っていたがレンズ豆のスープも登場。女性が子供をもうける箇所で「○○が新しい国民を生んだ」みたいな記述が使われていたが、一人の子供が国民になるというスケールのデカさにビビッた。ほかには、、、従わないものをやたらに殺している気がした。モーゼも隣人を殺すべからずみたいな十戒を受けておきながら、一緒に逃げてきたけど十戒に従わない人たちを皆殺しにしている…汗。あと主からの飢えを凌ぐために謎の食物“マナ”が毎朝降ってきた、とあったがこれはいったい何だろう。マナ食べたし。

歴史としてはイスラエル国とユダ国という二つの国に分かれてイスラエル国は滅びた、という過去にはちょっとビックリした。その後、ユダ国も征服されるが、その国民は捕虜になるが彼らをユダヤと呼ぶというのも知った。ユダヤ民族は過去によく捕虜になっているが、どうも占領国の中枢に入って行くのがうまいように感じた。それでいて自分の国を運営するのはあまり得意でないような印象を受けた。いずれにしろ、世界で重要な地位にいるユダヤ民族をもう少し学びたい。旧約聖書はユダヤ教キリスト教イスラム教の聖典なので一度で3度美味しい(?)ので、やはりもう少し詳しい旧約聖書の簡易版をまず読んで、その後にオリジナルかな。

「二人が喋ってる。」「金魚の一生」 犬童一心監督作品集

2004

 

大阪の二人組みの女芸人の会話劇。現在と出会った頃のシーンが交互に折り重なり、離れられない二人の関係を映し出していく。

思ったよりもおもしろかった。大阪の街中で撮影されているが工夫してカメラに気付かれずに撮影できているとのこと。監督というのは撮影方法も考えるものだとわかった。犬童監督は大阪の人だと思ったら違っていた…。

吉本の芸人たちがたくさん登場するがこれも見所の一つかもしれない。夢の中のシーンで歌詞を読み上げるシーンがあるが内容や言い回しが面白かった。

誰がために

2006 日向寺太郎 浅野忠信, 浅野忠信, エリカ, 池脇千鶴, 小池徹平, 眞島秀和, 菊地凛子

 

古びた写真館をとりしきる主人公は、美しい女性と出会い、子供を身ごもり結婚に至る。子供を身ごもった最愛の人は少年に殺される。やり場の無い怒り抑えようとするが…

池脇千鶴さんは主人公の幼馴染という役どころだけど良い良い良い。改めてあの演技が良いと思ったけど、感情を表す微妙な仕草とかが、シーンの切れ目で切れてたりすることがあった気がする…涙。全体としてはなにか空々しいというか、重いテーマのわりに何故か心に迫ってこない…。なぜだろうか人物のディテイルが伝わってこないのだろうか…。

地球 塩の旅

2004 日本経済新聞社 片平 孝

 

世界の塩の生産について写真を中心に紹介している。

塩湖、岩塩鉱山、塩田などが順番に説明されている。なにしろ絶景と呼べるような風景が美しい。シャンデリアまで塩でできた教会、インカの高山にある塩田など興味深い。いろいろ行ってみたいところも多数あった。日本古来の塩の生成についても説明してある。最後に説明されているサハラ砂漠で塩を決死の思いで運ぶキャラバンは胸を打つ。

塩屋さんが書いた塩の本

1990 三水社 松本 永光

 

「伯方の塩」の社長が書いた塩の本。塩の歴史、製造法、活用法、自然塩の普及を目指した起業の顛末なども書かれている。基本的に現在の減塩の流れを否定するなど、全編に渡って塩の効用を賛美している。

歴史の話は世界の塩にまつわるエピソードが書かれていて面白かった。塩田などによる方法が最も原始的な方法だと思っていたが、海藻(カイソウ)に海水をかけて、それを燃やして、かん水(濃い塩水)を作る方法が日本で古来から行われており、百人一首などにも登場するということだった。より効率的な塩田による製法ができたことにより、この製法は行われなくなったが、皇族などはこれを食べていたとか書かれている。この塩を食べてみたい。減塩がより健康的というのは科学的な観点からは微妙らしい。岩塩の色は泥や鉄などの不純物らしい。最も驚いたのは「赤穂の天塩」が(今はわからないが)この本によると中国で科学的に精製された塩化マグネシウム(にがり)を“添加”しているということだった。原料の塩は赤穂の天塩も伯方の塩もメキシコなどの外国の塩だ。これは専売公社時代に海水から塩を精製することが制限されていたから。

今は海水から塩を精製しても良くなったようなのでシママースなどの海水塩を使ってみたいなぁと思った。

ベンゴ

2002 トニー・ガトリフ アントニオ・カナーレス, アントニオ・カナーレス, トマティート, ラ・パケーラ・デ・ヘレス, ベルナルド・パリージャ

 

スペインを舞台にロマ人の主人公にしたストーリーをロマの音楽を中心に描いている。

ロマ人とはいわゆるジプシーと呼ばれている国を持てずに世界に散らばっている民族だ。スリランカで掘っ立て小屋に住んでいるジプシーを見たことがある。以前、ラッチョ・ドロームというロマ音楽の映画を見て、DeepForestなどに使われている曲などが登場して、ロマ由来の切実な内容だということを知って驚くと共に、ロマ人たちの音楽性にひどく感動した。それと同じような映画を探してみたが、結果的に同じ監督だったようだ。スペインのフラメンコなどがロマ人によって演奏されたり歌われたり踊られたりするが、そのエネルギーは心のギリギリまで迫ってくる。その源はやはり歴史の重みなのかもしれない。ぜひ生で体感したいなぁと思う。

ガッジョ・ディーロ

2002 トニー・ガトリフ ロマン・デュリス, ロマン・デュリス, ローナ・ハートナー

 

フランスの青年が亡き父が好きだったロマ音楽を求めて旅をする。途中でロマの村にたどりつき、そこのおじいさんに引き止められて、その村で生活すると共にさまざまなことを体験する。

ロマの音楽というよりもストーリーに重点を置いたつくり。ロマ人への迫害などを描こうとしているのだと思ったが、ロマ人の切実さというのはストーリーでは描けないのではなかろうか。それは音楽を通して描かれた方より迫ってくるものがあるのではなかろうかと思った。助演のおじいさんが居そうで味がありすぎて良い。素人で実際にその村に住んでいる人というから驚きだ。