トム・ジョウンズ

岩波書店 フィールディング, 朱牟田 夏雄

 

ロンドンから帰ったオールワージ氏は寝床に入ろうと掛け布団をあげると、赤ん坊が熟睡していた。優しいオールワージ氏はその赤ん坊を保護し育てることになる。この赤ん坊こそがトム・ジョウンズであり、素直でやさしい男子に成長するが、その出生ゆえに時には困難にも出会う。そんなトム・ジョウンズの半生を描いた作品。モーム十選の一つだが、絶版。

モーム十選って面白くなくね?と思っていたところに、別の読書案内の雑誌で丸谷才一氏が薦めていたから読んだ本。ストーリーの進みが遅いし、人物も典型的だし、第一主人公にいまいち人間味が足りなくて感情移入もできない。ただ勉強になったところもいくつかあるので、以下、引用。

「真に賢い善良な人は、人も事物もありのままに受け入れて満足し、その短所に文句も言わねばそれを矯正しようともしないのである。彼らは親戚知友に欠点を認めてもそれを本人に向かっても他人に対してもおくびにも出さず、しかも愛情を減らしもしないでいられるのだ。」

「人間、善良な心と公明な性質だけでは、心中に大きな慰めを感じ誠実な誇りを持つことはあっても、決してそれだけでは世間に通用しないことを彼らは悟るであろう。慎重と細心とはいかに善良な人間にも必要である。この二つは善のいわば護衛兵、これなしでは善もあん如とはしれおられぬ。諸君の意図が、いな、行動が、本質的に善であるというだけでは十分でない。諸君はそれが善と見えるように配慮せねばならぬ。いかに内側が立派でも、同時に美しい外観を保持せねばならない。たえず外観に気をつけるのでなければ、悪意嫉妬の徒が必ずこれにとんでもない濡衣を着せて、その結果は、オールワージほどの叡智善良の士もそれを見透かして内部の美しさを見ぬくことはできない。若い読者諸君は、すべからく座右の銘として、いかなる善人も慎重の原則を無視することはできぬ、また善の権化といえども外観を体裁と世間態の衣で飾らぬかぎり美しく見えぬ、という句を銘記したまえ。」

『私は生まれながらに足りないところがあるとみえて、ほかの人の持つ感覚がないのです。世の中には音や見てくれの喜びを喜ぶ感覚というものがあるにちがいないのに、私にはそれがありません。だってもし世間の人たちが、私が世にもつまらない些事と思うことをやはりつまらないと思うなら、まさかそれを手に入れようとしてああまであくせくしああまで犠牲を払い、またそれを手にすればあんなに意気揚々と得意にはなるまいじゃありませんか。』

台湾人のまっかなホント

宮本 孝, 蔡 易達 マクミランランゲージハウス 2000年4月

 

台湾文化の、気質、態度、価値観、行動、娯楽、ユーモア、文化、習慣、伝統、食、健康、犯罪、教育、政治、ビジネスについて、小さい章に分けてエッセイのように説明している。浅いが読みやすい。