ヒヤマケンタロウの妊娠

2022 Netflix 箱田優子、菊地健雄

なぜかNetflixで子どもが見ていると言っていたので見てみたが、かなり衝撃的な内容だった。坂井恵理氏の漫画作品が原作のドラマ作品。

登場人物・世界観

桧山健太郎はイケメンでモテモテのできる広告マン。職場は「男が育児に振り回されるとかバカバカしい」とか言っちゃう社員がいるマッチョな感じで、男尊女卑的な感じがある。自身も「よく産むよなぁ、子ども。男でも女でも仕事のジャマになっちゃうし」というスタンス。いろいろな女性に手を出してみるが定まらない。一番落ち着くのが亜季。仕事での成功を第一に考えているのもあり”面倒くさくない大人の関係”という感じ。さらに女手一つで桧山を育ててきた母も関わってくるが、母子家庭で育った檜山は子供時代にあまり良い思い出がない。

物語の始まり

仕事で自分の手柄で大きな仕事も取れそうで順風満帆で進む中、何か吐き気をもよおすような気持ち悪さがこみ上げてくることが増えてくる。あまりの気持ち悪さに会議を中座するほどになり、ついに病院に行く。エコーで検査されると、どこかで見た医師が診察にきて妊娠を告げられる。何かの間違いだと逃げる主人公。すぐに妊娠検査薬を買ってテストをするが結果は、、、

妊娠するまでの男マッチョ社会の描写がこれ大丈夫なのか?という感じの日本のザ男尊女卑会社。おそらくこういう会社は今でも現存しているのだとは思う。

テーマ

子どもにまつわることを男性は関わらなくて良いと仕事以外の家族関連のことを少し小馬鹿にしているエリートビジネスマンが妊娠を通じて、男尊女卑的な世界を目の当たりにする。また、世界への見方が変わっていくとともに、行動が変わっていく様子が清々しい。あぶり出されてくる男尊女卑社会は桧山に重くのしかかってくるが、何か自分のできる行動をしようとする。

男性と女性の大きな差異を生んでいるが妊娠と出産。その一番大きな差異を逆転させることにより大きな効果を生んでいる。逆転により男性社会を客観視することができる。このアイデアには脱帽だし、この世界はおかしいでしょ?と問いかけているのは素晴らしいと思う。アキが仕事一筋なので、男性が妊娠しているのに仕事を優先してしまう女性になって、逆転感がうまく出ている。

最後に

とにかくの日本社会の男性感女性感が一気に逆回転して、自分の物言いが自分に降り掛かってくるのが本当におかしい。さらに檜山は状況を変えていこうとしているのが素晴らしい。男性はこんなもんだからその中で女性はうまく生きていこうね!というドラマも多いなか、この設定の抜群の切れ味で世界を切りまくるドラマになっていて好きになった。

このドラマは男性が見るべきものだろう。子どもがいる男性は見るのが必死だし、これから結婚するようなカップルにもぜひこれを一緒に見てから相手を決めるべきだと思う。

Shall we ダンス?

1996 東宝 周防正行

 古い映画で2回ほど過去に見たことがあったと思う。当時も面白かったが、気付けば主人公と同じような年になっていた。どのように感じるか知りたかったのと、子どもに見せてみたかったので見せてみた。

登場人物・世界観

 東京の会社の経理課長である杉山正平(役所広司)は妻の昌子、娘の千景との三人暮らし。真面目な性格で遅くまで飲み歩くこともない。小さなダンス教室でダンス講師をしている舞(草刈民代)は佇まいから風格のある。ダンス仲間として同時に入会した服部(徳井優)や田中(田口浩正)と仲良くなり、ひょんなことから会社の同僚の青木(竹中直人)とも出会い親交を深めていく。

物語の始まり

 杉山正平は郊外に庭付きの家を買い、人生の大きなハードルをクリアーした。仕事にも家庭にも何の不満もないが、何か張り合いもない。心の奥には満ち足りない何かを抱えた杉山は帰宅途中の停車駅で、小さなダンス教室の窓辺に佇む女性を見つける。電車でいつも窓から見えるその女性に心を惹かれ、その気持がどんどん膨らんでいく。数日経ったある日、思い切ってそのダンス教室を訪れる。彼女がダンス講師であることを知り、気付くと社交ダンスに登録をしていた。
 社交ダンスの先生は舞ではなかったが、ダンスをする仲間に出会い真摯にダンスに向き合ううちにいつしか社交ダンスに没頭していく。

テーマ

 それまで体験したことがないダンスとそれを愛する人達に出会い、困難もあるけれどそれらを乗り越え、再び人生の喜びを発見していく、というのをコミカルに描いているので見てて疲れない。その中の著しい成長や仲間たち、ダンスパートナーとのやり取りなどは嬉しく楽しい気持ちになる。

 ダンスそのものもテーマであろう。ダンスがうまくなっていくシーンや、本物のダンスシーンは美しい。カメラを回したくなる気持ちも分かる。ダンスそのもののパワーも十分に味わえる。この映画で社交ダンスをしたくなる気持ちも分かる。

最後に

 再び見ると家族とのシーンなどが印象に残ると思ったが、そんなにこれまでの感じ方と違うところはなかったように思えた。では私が好きな点は何だろう?と改めて考えると、やっぱりたま子先生役の草村礼子さんだ。足取りおぼつかない杉山に優しく教えるシーン。階段を登って柔らかい口調で「大会に出てみようよ」と杉山を誘うシーン。たま子先生の話すフランクな語尾とこの声質。これが当たり役で賞も沢山とったのだから、みんな大好きに違いない!こんな優しい人にみんな出会いたいのだ。

 ということで、人生はそこそこ順調に進んでいるけど、何か毎日に物足りないような人。熱い社交ダンスの世界を垣間見たい人。何より草村礼子が好きな人。そんな人にはおすすめの一本です!