太古からの啓示

2022 Netflix

 古代遺跡に惹かれて見始めたが面白くて2,3日で見てしまった。

構成

 失われた文明の謎を追うグラハム・ハンコックがその証拠をもと求めて世界をかけめぐる。インドネシアのグヌンパダン遺跡、メキシコのチョルーラの丘、マルタ島の巨石神殿、ビキニ沖の海底の石造物、トルコの巨石のギョベクリテペ遺跡、アメリカのバティポイントの遺跡、トルコのデンリユグの地下都市、北米大陸の洪水の跡。古代の遺跡たちをまわり、闇に包まれたその遺跡が意味するものを解明しようとする。

気になったポイント – 大洪水

 神話を重視している姿勢に共感したが、各地に伝わる神話にある共通性に注目していたのは興味深かった。ノアの方舟で有名な洪水の伝承はいろいろな場所にあると聞いたことがあり、実際に洪水の跡も発掘されていると聞いていたが、それがヤンガードリアス期の海面上昇と結びつけているのが真実味があった。

最後に

 ムー大陸があったとは思わないし、古代に現代を超える文明があったのは簡単に信じられないが、とにかく古代には現代人が思っているよりも高度で長い歴史に支えられた文明があったと思う。神話や古代遺跡が好きな人にはおすすめです!

還魂2

Netflix 2022

パート2が出たということで主人公は変わっていても期待して見た。1ほどではなかったが1から出演している俳優たちが盛り上げてなかなか面白かった。

登場人物

 チャン・ウクはチャン家のお坊ちゃん。3年前にムドクに殺されたが、体に宿っていた氷の石の力で蘇った。氷の石の力で還魂人を退治するため、「怪物を捕まえる怪物」と恐れられている。チン・ブヨンはムドク(ブヨン、ナクス)の身体を湖から引き上げ、ブヨンの真気を使って治療した。容姿はナクスに変わっており、過去の記憶がなくなっている。

物語の始まり

 シーズン1から3年。氷の石の気を得たことで強大な力を得て周囲から腫れ物のように扱われいる。孤独の中で、その力を還魂人の討伐に捧げている。ある日、還魂人を追って鎮妖院に侵入するが、そこでチン・ブヨンに巡り合う。ウクは自分がしたいことのためにブヨンと結婚することを画策する。

テーマ

 運命の赤い糸のようなものだろうか。容姿が変わっても魂が同じであれば、お互いに気づいて惹かれ合っていく。

最後に

 シーズン2ということもあって、いろいろな制約があって、物語も若干強引なところもあったが、ハッピーエンドで終わってスッキリとした。シーズン1を見た人は2も見てスッキリするのがおすすめです!

今際の国のアリス 1/2

Netflix 2022

 流行っているので見てみた。スリリングで理不尽なゲームに巻き込まれていく様子を描いた謎解きや心理描写、アクションなどで魅せるシリーズ。最後にはすべての謎が溶解してスッキリと終わって良かった。

登場人物

 山崎賢人が演じるアリス。ゲームばかりしていて、勉強もスポーツもぱっとしない。同じくあぶれているカルベやチョータと遊んでいる落ちこぼれの少年。土屋太鳳が演じるうさぎは唯一敬愛していた同じクライマーである父・重憲が不祥事に巻き込まれ自殺した後は世の中を信じられずに孤独に過ごしている。

物語の始まり

 アリスはカルベやチョータと渋谷にいて羽目を外し警察に追われてトイレに逃げ込む。トイレから出てみる渋谷には人が一人もいなくなっており、電気も消えている。スマホも使えず夜を迎えるが、前触れ無くビルの巨大テレビに「GAMEを開始します」という文字とともにアナウンスが始まり、3人は雑居ビルに入っていく。そこでゲームで負けると死が待っているデスゲームとしるが、アリスの機転でゲームを何とかクリアーしていく。

テーマ

 死と隣り合わせの人間の浅ましさやその反対の友情、たくましさなどを描いている。様々な代償を負っても生にしがみついて行く。そんな姿が人間の本来の姿なのではないかと思った。

最後に

 絶望的な状況を描いているように見えて、一方に人間のたくましさや人々の交流などの希望も描いているように感じた。明日への力を得たい人にはおすすめです!

美男堂の事件手帳

2022 韓国KBS 2TV 高在賢、尹羅英

 Netflixで予告編での主人公の不思議なおどりのようなものが気になってみてみた。サスペンスでもありコメディでもある刑事ドラマ。

登場人物・世界観

 ナム・ハンジュンは元プロファイラーで現在は美男堂で男の巫女をしている。妹のナム・ヘジュンはハッカーとして美男堂を手伝っている。また友人のコン・スチョルも腕っぷしの強さで美男堂を支えている。時に警察とぶつかることもあり、鬼と恐れられている警察庁の女性刑事ハン・ジェヒと対立する。チェ検事はハン・ジェヒにほのかな思いを寄せつつ、ハン刑事を検察の側からサポートする。

物語の始まり

 ナム・ハンジュンは美男堂でVIP顧客を持っている。会社の経営者などだ。彼らの問題を解決してあげて、荒稼ぎをしているが、ある時に法に触れるような問題が発生する。警察沙汰になる問題を何とか法の目をかいくぐって解決してあげるが、警察としては犯罪者を擁護しているように見えて、事件を追うハン刑事のチームと対立する。そうして話が進むにつれて、なぜナム・ハンジュンが男の巫女をしているかが明らかになってくる。

テーマ

 あえて描かれているテーマを挙げるならば、犯人が仕掛けている罠にかかりつつも何度も立ち上がっていく粘り強さ、困難にも立ち向かう勇気などだとは思う。ただ犯人を追っているのが警察ではないので、”正義を貫くには不正も厭わない”というのが面白いストーリー展開を生んでいる。他にも「正義とは何か?」「人は自分の性質を乗り越えられるのか?」などの本質的な疑問がストーリーに織り込まれている。

最後に

 ”現代ドラマ”なので、随所に唐突に出てくる”広告”は正直、鼻につく。突然、唐揚げのチェーン店にいたりとか。あと気になるのはナム・ハンジュンを演じたソ・イングクの演技。男の巫女としての演技は素晴らしかったが、恋愛の演技は何か淡泊さがある気がする。うーん、気のせいか、、女性ファンはどう思うのだろう。。とはいえ、物語としては殺人が出てくるのでエグさもあるが、状況が二転三転して手に汗を握る展開は楽しめた。

 多少のご都合主義もありコメディ要素もあるが、全体としては深みのあるサイコ・サスペンス・スリラーだと思う。ドキドキしたい人にはおすすめです!

アンナラスマナラ-魔法の旋律

 Netflixでイケメンのお兄さんをフィーチャーしているザ・ファンタジーのような雰囲気に惹かれて見てみた。見てみると予想外にテーマも深く、エンターテイメントしても一級品で面白かった。

登場人物・世界観

 ユン・アイは両親はおらず妹とと一緒に貧しく暮らしている女子高校生。アルバイトでお金を稼いで家計を支えているため生活は安定していない。同級生で優等生のイルドゥンはアイに興味があるが、家がお金持ちで境遇はアイはかなり異なっている。

物語の始まり

 山の上の閉鎖された遊園地で怪しい魔術師がいて”本物の魔術”をするという噂がある。魔術をする前に必ず「あなたは魔術を信じますか?」と聞くという。ある晩にその遊園地に迷い込み、その魔術師の”本物の魔術”に魅了され、そこから魔術師との交流が始まるのである。

テーマ ー それぞれの生きにくさ

 アイは経済的に困窮していて、学校の食堂でブッフェの料理をこっそり持ち帰るような状況である。それでなく生き別れた両親の問題もあり、惨めな人生を送っていると感じている。けれども自分を生きにくくしているのは経済的な状況だけではないと、ある時気づくのである。アイはそこから脱するのは簡単ではない。一方でお金持ちで優等生のイルドゥンは幸せかというとそうではない。有名な判事の父親を持つ彼は、多くのものを与えられるが「両親に望まれた目標に向かって進んでいるだけだ」とある時気づくのである。けれども、イルドゥンとてそこから抜け出すのは簡単ではない。境遇が違う二人がそれぞれの問題にどう向き合っていくかも目が離せない。

最後に

 このドラマはミュージカルである。はじめから歌と踊りで始まるが、途中にも突然アイやイルドゥンが自分の想いを歌いだしたりして楽しい。重いテーマだけど楽しく見ていられるのはこの愉快な構成のためだと思う。さらに魔術師やその周辺に不可解な事件がつきまとう。この謎も物語を引っ張っていくが、最後にすべての伏線が回収されて気持ちよく解決するのでご心配なく!

 何かうまく行かなくてもがいている人は勇気を与えられる作品。あとは現実逃避したい人にもお勧めかも。

オスマン帝国: 皇帝たちの夜明け

2020 Karga Seven STXエンターテインメント エムレ・シャーヒン

 コンスタンティノープルの陥落を読んで、オスマン帝国に興味が興味が湧いてきたところにたまたまNetflixで”オスマン帝国”の文字があったので、見てみた。まさにメフメト2世によるコンスタンティノープルの陥落を描いている全6回のドキュドラマ(ドキュメント劇)になっている。先に読んだ塩野先生の書籍の復習にもちょうどよかったので興味深く鑑賞できた。

登場人物・世界観

 主人公はオスマン帝国の20代のメフメト2世。まさにコンスタンティノープルを落とそうというとこと。その周りにはキリスト教国からメフメト2世の父親ムラト2世のもとに嫁いだ継母のマラ。子供の時から知る大宰相ハリルパシャは首相という立場だが、ともに権力を持つものとして緊張関係がある。またビザンツ帝国側では傭兵隊長のジュスティニアーニがスルタンに対峙して奮闘する様子が描かれる。メフメト2世 vs ジュスティニアーニという構図である。

物語の始まり・構成

 メフメト2世が父親の死を知らせる連絡を受けるところから物語が始まる。スルタンの座を確かにしようと、急いで首都に駆けつける。ハリルパシャは我が王よと迎え入れる。このシリーズはドラマ仕立てだが、途中にオスマン帝国関係の書籍の著者などによる解説が入り、より理由や細かい背景を説明してもらえるようになっている。またドラマは幼少時代に一度父親が引退してスルタンを継いだ時代に戻ったりもする。そうしてコンスタンティノープルでの戦闘がはじめって行く。

気になったポイント ー 裏切り

 印象的だったのは、ジェノバ商人vsヴェネチア商人という構図だけでなく、相互の内通者がいて、それぞれの動機で戦闘を終わらせように努力しているだけでなく、自分の利益のために両方に取り入っている商人がいて自体を複雑にしていたということである。ドラマの中ではどちらかというとスルタン側に有利になっていたように感じた。

最後に

 戦闘の全体像や金角湾などの位置関係などがCGで表現されていて理解しやすかった。ただドキュメントではあるがドラマということもあり、メフメト2世が瀕死状態なったり、ジュスティニアーニと至近距離で対峙したりするような過剰演出もあったが、エンターテイメントなので仕方がないとする。映像によって歴史上の人物が生き生きと動くことで印象が深まったのは間違いない。

 トルコで制作されたもののためかオスマン帝国側から描かれているので、オスマン帝国に興味がある人にはうってつけで、実力のあるメフメト2世にも魅了されること間違いなしである。

還魂

2022 tvN パク・ジュンファ

 中二病気味の娘はアクションなどが入っているファンタジーは楽しめるのではと薦めたNetflix作品だが、見てみると複雑な人間関係の中に様々な伏線がはられた見ごたえのあるもので、自分もハマってしまった。大人も子どもも楽しめるファンタジーロマンスドラマである。

登場人物・世界観

 テホ王国という場所で、水の気を使う術士がいる世界。4つの名家、パク家、チャン家、ソ家、チン家がある。パク家はテホ国の最大組織「ソンニム(松林)」を統括しており、術士教育機関である精進閣には術士が所属している。術の中には禁術の還魂術があり人の魂を入れ替える術である。この術を使って身体を入れ替えたり、死にそうな人に健康な人の身体をあてがったりできる。
 また、それぞれの名家には若者がいて、比較的仲良く交流している。ソンニムの統帥の子どもはパク・ダング。チャン家にはおぼっちゃまのチャン・ウク。ソ家にはソンニムに留学してきているソ・ユル。チン家にはお嬢様のチン・チョヨン。この中でチャン・ウクだけが術を使えない。
 主人公はナクスという女性で、強い術を使うことができる一匹狼の殺し屋。ソンニムの術師と戦っている。

物語の始まり

 ナクスは組織の求めに応じて、高度な術を駆使して殺し屋として働いてきたが、ソンニムとの戦いでついに負傷する。追い詰められたナクスは身体を入れ替える還魂術を使って負傷した身体を捨てて、ムドクという身体に乗り移る。ムドクの身体は弱々しくでナクスであったときの自分の力を出すことはできない。そんな折、ムドクはチャン家のお坊ちゃまのチャン・ウクの下女として身の回りの世話を焼くことになる。
 チャン・ウクは術を使えるようになるために様々な師匠に弟子入りしているが、未だ術を使えない。そんな折にチャン・ウクは下女のムドクは実はナクスであることを見抜き、弟子入りすることになる。

気になったポイント

 術を使えるという不思議なファンタジー世界だが、ハリボテ感はなく奥行きのある世界として感じて没入できる。理由の一つは術やその他で使われるシーンのCGが美しく幻想であることかもしれない。また回想シーンなどで過去からつながる現在の時間の流れを描いているのとともに、主人公が暮らす地域以外の場所も描かれていて空間的な広がりも描いていて幻想的な世界を抜け目なく形作っている。

 また脚本がコメディ小話のようなものを挟んで、視聴者の気持ちを緩ませてくれている。またムドクを演じているチョン・ソミンさんの愛嬌のある演技も全体的な雰囲気を柔らかくする。走っている姿だけでも運動神経がよくなさそうで可愛げがある。シーズン2は彼女がいなくなるようだが、私も心配している視聴者の一人である。

最後に

 過去から続くそれぞれの思惑に翻弄され、主人公たちはたびたび苦境に立つ。しかしその苦境の中でチャン・ウクと師匠のムドクが手を取り合って成長し、問題を打破していく物語になっている。またなかなかうまく行かないラブロマンスでもあり、血みどろの戦いシーンもあるが全体としてはコメディタッチで描かれていて、力を抜いて鑑賞できる。還魂術によって人が入れ替わることで、物語を複雑で謎の多いものにしていて、多くの伏線を生む魅力的なストーリーの源泉となっている。シーズン1の20話が終わっても伏線をすべて回収しきれていない。

 基本的にはラブコメディでもあるので広く楽しく見られるドラマです。シーズン2も製作中ということなので、早めにシーズン1を見て準備しておくことをおすすめします!

ウ・ヨンウ弁護士は天才肌

2022 ENAチャンネル ユ・インシク

 Netflixのおすすめに表示されて自閉症に関連していたので、気になった。自閉症といえば過去にも本を読んだこともあるが、「ザ・コンサルタント (原題: The Accountant)」も好きな大好きな映画だ。見てみると楽しくて心に響くドラマだった。

登場人物・世界観

 ウ・ヨンウは新米の弁護士である。小さい頃から挙動が普通ではなく医者に自閉スペクトラム症と診断されるが、一方で驚異的な記憶力に恵まれ、その特技を生かして見事に弁護士になった。その後なんとか一つの法律事務所に所属して、弁護士として歩み始める。優しい父親、理解して評価してくれる優しい上司ミョンソク、いつも味方をしてくれる同僚でロースクール時代の同級生スヨンもいるが、一方でライバル視をしてくるクォンなどもいる。また訟務チームのジュノはモテモテの爽やかイケメンだが、いつしかウ・ヨンウが気になっていく、という少女漫画的なストーリーにもなっている。

物語の始まり

 幼少時代は外的なショックでパニックになってしまったり、トランポリンを飛び続けるような不思議な子だったが、ふとしたことから部屋にあった刑法の全文を暗記していることが分かる。弁護士になり初出社の日を迎えるが、満員電車のストレスを大好きなクジラを思い浮かべることでやり過ごそうとする。なんとか会社にたどり着いて上司に面会するものの、”自閉スペクトラム症”と説明された上に言葉遊びのような早口の自己紹介をされると上司は持て余してしまう。しかし、その上司も仕事を進めていく中で、ウ・ヨンウの実力に気づいていく。

テーマ ー 誰もがもっている社会との摩擦

 ウ・ヨンウは回転ドアをうまく通れない。ドアを開けて部屋に入るときに間をおいて入る。物理的な世界においても何かウ・ヨンウがうまく行動できないような仕組みになっている。気持ちの世界でも人の気持がわからなかったり、言動が直接的でオブラートには包まれていないことが、他の人を気まずくさせたりもする。

 社会は自分専用にはできていない。誰しもが多かれ少なかれ社会との摩擦を抱えている。主人公は社会の大多数の人たちと違う性質を持っているので、特にその摩擦が多い。その社会の中で普通の人は妥協しながら生きている。先日もADHDの方がものすごい努力で”普通のフリ”をして生きているという辛い投稿をSNSで読んだが、ウ・ヨンウはそのようなフリもできない。そんな素のままの自分で社会に向き合って奮闘している主人公はこのドラマの魅力の一つであるのは間違いない。また、そんな主人公が仕事をしていく中で社会の不条理や、マイノリティに対する社会の矛盾や差別なども浮き彫りになっている。

最後に

 このドラマの大きな魅力は”普通以下に見える主人公が天才的な活躍をする”という少し陳腐なスーパーマン的な構図だろう。けれど、それがいい!弁護士という社会的地位がある人達を主人公が蹴散らすのが爽快である。また女性には”普通以下に見える主人公がイケメンに好かれる”という少し陳腐な少女漫画的な展開も惹かれるポイントになるはず。まあ、よく見るとこのシンプルな髪型でも普通に可愛い女優さんである。
 そんなこんなで万人が楽しめる良質な社会派エンターテイメントですのでぜひ!害もなさそうなので小学生の娘にも紹介しましたが、面白く見ていました。

ボクらを作った映画たち (原題: The Movies That Made Us) シーズン1~2

2019-2021

 本も面白いし、劇も面白いが、映画も面白い。脚本、演技、美術、カメラ、音楽、それに特殊効果やCGも加わっての総合芸術と言っても良い。ヒット作と呼ばれる作品たちはどこか理路整然としていてスキがないようにも見えるが、本当のところはどうなのだろうか。誰もがよく知っている映画たちの製作の裏側を知ることができるドキュメンタリー。

構成

 シーズン1は「ダーティ・ダンシング」「ホーム・アローン」「ゴースト・バスターズ」「ダイ・ハード」、シーズン2では「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「プリティ・ウーマン」「ジュラシック・パーク」「フォレスト・ガンプ」を紹介している。
 映画の企画がどのように生まれていったのか?から始まり、脚本がどのように作られて、それがどこかの映画会社の目に止まって、予算などの壁を打ち破り、何とか撮影までこぎつける。たいていそこでもトラブルがいろいろあり、何とか撮影が終わる。実際に携わった人たちの証言を聞きながら、時系列に起こったことを様々な人の視点から証言してもらい、製作中の難題を語っていき、映画の成功までの道のりを描く。最後に当時、撮影に使った現場を関係者が思い出を語りながら歩く。

ポイント – どんどん変わる脚本

 まず脚本がどんどん変わっていくのは当たり前のようだったが、スポンサーから脚本に基本プロットを変えるように言われるダーティ・ダンシング。クリスマスに改変したホーム・アローン。説得され設定を変更したゴーストバスターズ。基本プロットを作った脚本家がクビになるダイハード。制作会社の指示の中でタイトルの変更だけは食い止めたバック・トゥ・ザ・フューチャー。ダークな脚本をディズニー風に書き換えたプリティ・ウーマン。宇宙に行ったりしていた原作を書き換えたフォレスト・ガンプ。いろいろな人の手で磨き上げられていくものだとは思うが、やはり大変な作業だ。

ポイント – 偶然

 偶然の数々に驚かされる。綿密な計画に基づいて製作されていると想いきや、様々な偶然によって映画製作の道がひらけていったりする。ダーティ・ダンシングのキャスティングは監督がたまたま俳優を知っていたり、配給会社を転々としたプリティ・ウーマンが最後にディズニーの子会社に行き着いたとか。ジュラシックパークはCGありきで始まったものだと思っていたが、そうではなかった。ホームアローンは巨匠にお願いしたらまさかOKして映画の雰囲気がまったく違ったものになったり。ダイハードでは脚本は撮影を追いかけるように書かれていたが、話の運びに苦労して言う中、偶然、現場での俳優のジョークを良い設定を思いつく。才能があつまって真摯に仕事に向き合っているからこそ、生まれる”偶然”なのだろうけど、そこからヒット作が生まれているのは興味深い。

ポイント – キャスティング

 キャスティングにも苦労しているのを知った。ダーティ・ダンシングの主役同士の諍いや、ホーム・アローンの相性。バック・トゥ・ザ・フューチャーはなんと主役とその恋人役を撮影6週目でで変えている。ゴーストバスターは脚本を執筆中にキャスティングしようとしていた友人がなくなたり、肝心の主人公たちがなかなか揃わない。ダイハードは弱い主人公でキャスティングに苦労したが、その”弱い主人公”が以後の映画の青写真になった。プリティ・ウーマンは主役に断られたがジュリア・ロバーツがリチャード・ギアをいとめた。

ポイント – 制作会社との関係

 音楽もお金がかかる部分でダーティ・ダンシングでは脚本家のエレノアが選んだ曲を使うのには苦労していたり。ホーム・アローンは予算が却下されてストップになり途中で制作会社が変わっている。ゴーストバスターでも予算の関係で著作権を買えずにタイトルが決まらず2つのタイトル用に2回撮影したりもしている。またゴーストバスターは予算は十分だったが条件に付けられたスケジュールは厳しく、途中でさらに厳しくなる。フォレスト・ガンプも予算の関係でシーンのカットの圧力があるが、監督がお金を出したり隠れて撮影をしたりと強行した。

最後に

 とにかく、どの作品も作品を愛する人達がありとあらゆる困難を乗り越えて、完成に行き着いている。非常な情熱を持ってその映画の企画を実現させたかったというプロデューサーや脚本家を見ると嬉しくなる。自叙伝的な脚本を書いたダーティ・ダンシングのエレノアとリンダや、フォレスト・ガンプのウェンディも。特に実績もなかったりする作家の場合には何年も我慢強くチャンスをまったりしている。フォレスト・ガンプでは監督やトムハンクスがギャラを減額したりもしている。このような執念には心を打たれる。

 どれもヒット作なので知っている作品だと思う。製作の裏側や情熱的なプロデューサーたちを知ると、更に作品たちを好きになることが間違いない。映画好きにはおすすめのうドキュメンタリーです。

ヒヤマケンタロウの妊娠

2022 Netflix 箱田優子、菊地健雄

なぜかNetflixで子どもが見ていると言っていたので見てみたが、かなり衝撃的な内容だった。坂井恵理氏の漫画作品が原作のドラマ作品。

登場人物・世界観

桧山健太郎はイケメンでモテモテのできる広告マン。職場は「男が育児に振り回されるとかバカバカしい」とか言っちゃう社員がいるマッチョな感じで、男尊女卑的な感じがある。自身も「よく産むよなぁ、子ども。男でも女でも仕事のジャマになっちゃうし」というスタンス。いろいろな女性に手を出してみるが定まらない。一番落ち着くのが亜季。仕事での成功を第一に考えているのもあり”面倒くさくない大人の関係”という感じ。さらに女手一つで桧山を育ててきた母も関わってくるが、母子家庭で育った檜山は子供時代にあまり良い思い出がない。

物語の始まり

仕事で自分の手柄で大きな仕事も取れそうで順風満帆で進む中、何か吐き気をもよおすような気持ち悪さがこみ上げてくることが増えてくる。あまりの気持ち悪さに会議を中座するほどになり、ついに病院に行く。エコーで検査されると、どこかで見た医師が診察にきて妊娠を告げられる。何かの間違いだと逃げる主人公。すぐに妊娠検査薬を買ってテストをするが結果は、、、

妊娠するまでの男マッチョ社会の描写がこれ大丈夫なのか?という感じの日本のザ男尊女卑会社。おそらくこういう会社は今でも現存しているのだとは思う。

テーマ

子どもにまつわることを男性は関わらなくて良いと仕事以外の家族関連のことを少し小馬鹿にしているエリートビジネスマンが妊娠を通じて、男尊女卑的な世界を目の当たりにする。また、世界への見方が変わっていくとともに、行動が変わっていく様子が清々しい。あぶり出されてくる男尊女卑社会は桧山に重くのしかかってくるが、何か自分のできる行動をしようとする。

男性と女性の大きな差異を生んでいるが妊娠と出産。その一番大きな差異を逆転させることにより大きな効果を生んでいる。逆転により男性社会を客観視することができる。このアイデアには脱帽だし、この世界はおかしいでしょ?と問いかけているのは素晴らしいと思う。アキが仕事一筋なので、男性が妊娠しているのに仕事を優先してしまう女性になって、逆転感がうまく出ている。

最後に

とにかくの日本社会の男性感女性感が一気に逆回転して、自分の物言いが自分に降り掛かってくるのが本当におかしい。さらに檜山は状況を変えていこうとしているのが素晴らしい。男性はこんなもんだからその中で女性はうまく生きていこうね!というドラマも多いなか、この設定の抜群の切れ味で世界を切りまくるドラマになっていて好きになった。

このドラマは男性が見るべきものだろう。子どもがいる男性は見るのが必死だし、これから結婚するようなカップルにもぜひこれを一緒に見てから相手を決めるべきだと思う。