急変する中国人の人生観―庶民が語る社会主義的市場経済の実際

はまの出版 2004年5月

 

25人の中国人(北京付近に在住?)が直接語る形で自身の現状や半生を語る形で中国の今(2004年)をつづってる。

垣間見える社会の仕組みと、その変化。その中で真摯に努力している人もいればそうでない人もいる。こうも変化が急だと大変だろうなぁーという感想。

戦場へ行こう!!雨宮処凛流・地球の歩き方

2004 講談社 雨宮 処凛

 

「理解不能な異形なものがあると徹底的に叩かないと気が済まないのは、自分の中のふれちゃいけない何かが脅かされるからだろうか。白装束を否定することで、彼らが守りたいものは何なのだろう。オウムを持ち出すまでもなく、ある種の物語の中にどっぷりと浸かって生きている人を目の前に突き付けられると、人は心の深い部分を脅かされるようだ。ちなみに私が心を動かされる理由は、どこかで自分も大きな物語の中で生きていたいという願望があるからだと思う。」

右とか左とかの外側にいる雨宮女史がつづる華麗な濃厚逆噴射人生のエッセイ。ブラウン管の向こう側で起こっている惨事にアグレッシブに参加していく。文章がうまく、ガサ入れ体験話は爆笑ものである。

彼女の行動を見る限り、ナウシカじゃないけど、人間は清浄な世界では生きていけないんじゃないか。雨宮さんの本はもっと読みたいなぁー。

自負と偏見

1997 新潮社 オースティン, 中野 好夫

 

「エリザベスの結婚観が、すべて自分の家の経験から推して、つくられたものだとすれば、結婚生活の幸福や家庭の楽しみについて、あまり愉快な想像をもてなかったのは当然であろう。父親というのは、若さと美貌と、それにたいてい若い美人がもっているに決まっている表面だけの朗らかさに惹かれて、結婚してしまったのだった。ところが、その妻は、知能も弱く、心もさもしいとあっては、ほんとうの愛情は、結婚するとまもなくさめてしまった。尊敬だの、敬意だの、信頼だのというものは、永久に消えて、彼が考えていたような家庭の幸福は、完全にくつがえされてしまった。だが、ただミスター・ベネットという人は、自分の無思慮からまねいた失望のかわりに、世上よくある例だが、己が不徳、己が愚かさから不幸に陥っておきながら、その慰めを、ほかのいろいろな快楽に求めるような、そんな性質の男ではなかった。彼は、もっぱら田園、そして本を愛した。そしてそういう趣味から、彼の主な楽しみは生まれていた。妻から受けているものといえば、彼女の無知と、そして愚かさが提供してくれる面白さというほかには、ほとんどなかった。」

イギリスの田舎町、五人姉妹のベネット家の隣に、青年紳士ビングリーが引越して来る。温和で美しい長女ジェーンと才気溢れる次女エリザベス、そして快活なビングリーとその親友で気難し屋のダーシー。ところが、エリザベスが高慢で鼻持ちならぬ男と考えていたダーシーが、実は誠実で賢明な紳士だと判った時…。二組の恋の行方と日常を鋭い観察眼とユーモアで見事に描写した名作。

↑コピー。モームの十大小説。大した事件も起こらないような恋愛物語ではあるが、いやはや面白かった。歯に衣着せぬ人物評には笑ってしまうし、長所と短所をあわせもった登場人物たちも魅力的で本当に生きているかのよう。ドップリと世界に浸れる。ダーシーかっこいい。エリザベスもたまらん。岩波はダメで河出がいいらしかったが新潮を読んだ。

日本史の誕生 (ちくま文庫 お 30-2)

岡田 英弘 筑摩書房 2008年6月10日

 

日本書紀や中国の歴史書などから日本の起源に迫った書籍。魏志倭人伝などは当時の政治的な意味を加味する必要があり、邪馬台国も誇張されている。倭王とは中国との窓口を勤めていた部族の長に与えられていた特権だった。百済が滅びて孤立したために、日本が日本としてのアイデンティティを確立せざるを得なかったというのが岡田氏の説である。そのときに中国語の方言を話していた先祖たちは、日本語を確立するために苦心した。

感銘を受けたのは、序説にある歴史の定義や役割だ。個人にアイデンティティや世界観を提供するものとして、宗教やイデオロギーとの機能的な差異について説明されている。宗教は現実との差異を認めずに原理主義に陥るので、歴史の方が優れているという見解が述べられていた。個人的には歴史も原理主義に陥ることがあるとも思うが、そもそも歴史が宗教などと比べられるものという認識がなかったので興味深かった。

岡田氏は専門分野の関係なのか中国から影響に偏っている気もするけど、中国についても書いているようなので読もう。

異邦人

1954 新潮社 カミュ, 窪田 啓作

 

母の死を悲しまず、翌日に浜辺であった女と関係を結び、太陽のせいと人を殺害する。虚無の世界に生きるムルソーを描いたカミュの代表作。

うーん。あんまり面白くなかった。

文明の衝突と21世紀の日本

2000 集英社 サミュエル・P. ハンチントン, Samuel P. Huntington, 鈴木 主税

 

冷戦後の世界のありようを描いた「文明の衝突」のダイジェスト版みたいな書籍。終わりかけた西欧の価値観は今まで栄えては衰退した数ある文化の中の一つでしかなく、今後は文化を軸とした多極的な世界になると。CGを使った直感的な図が掲げられているのが特徴。

いつだかに買ったのでいちおうサラっと読んでおいた。意外に日本が語られていない。日本は第二次世界大戦意外は歴史的に適切と思われる強国と同盟を保ってきたので、次は誰と同盟を結ぶか?が主要な問題だ。

『答えは明確になりつつある。「口に出して公言したり、了解を示してはいないが、まだ北京が国際的にかなり孤立していた1992年に、日本の天皇が中国を訪問したのは意義深いことだ」』

天皇の方が外交をしているのはどういうことよ?君主だから?政権はコロコロと変わるから、外交は天皇がした方がいいの?もしかして歴史的に天皇が外交をしていたから日本の政治は外交が弱いの?とか思った。