自負と偏見

1997 新潮社 オースティン, 中野 好夫

 

「エリザベスの結婚観が、すべて自分の家の経験から推して、つくられたものだとすれば、結婚生活の幸福や家庭の楽しみについて、あまり愉快な想像をもてなかったのは当然であろう。父親というのは、若さと美貌と、それにたいてい若い美人がもっているに決まっている表面だけの朗らかさに惹かれて、結婚してしまったのだった。ところが、その妻は、知能も弱く、心もさもしいとあっては、ほんとうの愛情は、結婚するとまもなくさめてしまった。尊敬だの、敬意だの、信頼だのというものは、永久に消えて、彼が考えていたような家庭の幸福は、完全にくつがえされてしまった。だが、ただミスター・ベネットという人は、自分の無思慮からまねいた失望のかわりに、世上よくある例だが、己が不徳、己が愚かさから不幸に陥っておきながら、その慰めを、ほかのいろいろな快楽に求めるような、そんな性質の男ではなかった。彼は、もっぱら田園、そして本を愛した。そしてそういう趣味から、彼の主な楽しみは生まれていた。妻から受けているものといえば、彼女の無知と、そして愚かさが提供してくれる面白さというほかには、ほとんどなかった。」

イギリスの田舎町、五人姉妹のベネット家の隣に、青年紳士ビングリーが引越して来る。温和で美しい長女ジェーンと才気溢れる次女エリザベス、そして快活なビングリーとその親友で気難し屋のダーシー。ところが、エリザベスが高慢で鼻持ちならぬ男と考えていたダーシーが、実は誠実で賢明な紳士だと判った時…。二組の恋の行方と日常を鋭い観察眼とユーモアで見事に描写した名作。

↑コピー。モームの十大小説。大した事件も起こらないような恋愛物語ではあるが、いやはや面白かった。歯に衣着せぬ人物評には笑ってしまうし、長所と短所をあわせもった登場人物たちも魅力的で本当に生きているかのよう。ドップリと世界に浸れる。ダーシーかっこいい。エリザベスもたまらん。岩波はダメで河出がいいらしかったが新潮を読んだ。

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