菊と刀―定訳

1967 社会思想社 ルース・ベネディクト, 長谷川 松治

 

西洋人には奇妙に見える日本人の行動基準を人類学者ルース・ベネディクト女史が説明する。訳者のあとがきが昭和23年になっている。

日本も40年もたてば行動基準は変わるとは思うが、はっとさせられることが多く、基本的なところは変わっていないと思った。それにしても彼女のニュートラルなものの見方ができる才能が、ここまでバランスのとれた分析を可能にしたのかもしれないと驚いた。中国やアジアの文化にも精通している彼女が初めに言っていることもおもしろい。『徳と不徳は西洋人が考えているものとはまるで違ったものであった。その体系は全く独自のものであった。それは仏教的ではなく、また儒教的でもなかった。それは日本的であった』

義理や恩の概念なども客観的に分析されていて、今まで省みることがなかった概念を、なるほど、と思ってしまった。