フロイトからユングへ―無意識の世界

1999 日本放送出版協会 鈴木 晶

 

フロイトとユングの理論を半分づつ解説している本。平易な文章で論文チックでもなく読みやすい。二人の人生と世界の状況なども合わせて解説されている。出典や著作の索引もあるので、次に読む本を探しやすいと思う。

フロイトの心理学が問題の解決を目的としているのであれば、ユングは自分の内面と向き合うことで自分の将来を考えていくという、目的が違っているところが面白い。また、フロイトやユングの提唱した理論によって、著者が彼ら自身を分析しているのも面白かった。

あとフロイトが行ったレオナルド・ダ・ビンチやドストエフスキーなどの分析ものっていたので興味深かった。ドストエフスキーはギャンブル狂だったそうな…。ギャンブルしたいがために名作が次々と生まれた??

日本人にはユングが人気が高いらしい。ゴッホとかも日本人に特に人気があるみたいだから国民性とかってあるのかな?日本人は抽象的なものが好きだと思う。

そういえば、ユングはグノーシス派に傾倒していたらしい。最近よく耳にするグノーシス派。まあ、よく聞くようになるってのは、外界が変化しているわけではなくて、自分の脳がそれを捕らえて記憶に残すようになったので内面の変化。(←ちょっと自己分析)外界が変化しているように見えて内面が変化していることってよくある。つまり世界とは意識の中に広がっている。(←ちょっと宗教)

コンセント

2004 中原俊

 

兄が餓死でなくなる。兄は精神病だった。大学で心理学を学んでいたユキは兄の死の真相を知るために行動を起こす。それは自分の過去を清算することでもあった。ホラー的要素もある物語。

うむ?撮影がいまいちなのかな…。技術はよかったかな。全体的には微妙だった。

田口ランディさんの作品は読んだことがない。MSNが始ったころにはコラムを楽しく読んでいた。あのころのMSNのコラムは楽しかった…。ユングが出てきたのは田口さんのコラムだったが、すっかり忘れていた。前の本でもユングが出てきたから、これは勉強しろ、ということだな。

パッチギ ! スタンダード・エディション

2005 井筒和幸 塩谷瞬, 塩谷瞬, 高岡蒼佑, 沢尻エリカ

 

京都にある朝鮮学校と、対立する日本人学校。康介はひょんなことから、朝鮮学校の番長の妹のキョンジャに一目ぼれをする。康介は二人の間に横たわる歴史や文化の壁を越えようと奮闘するが、韓国人の中にある根深い感情に戸惑う。60年代を舞台にした青春、ロミオとジュリエット。

2シーン目がよかった。不良?の悪いことをするときの表情が最高。撮影がかなりイイのではないか。暴力シーンだらけだが見てて本当に痛い。在日韓国人をテーマにしているのはすごくイイと思った。京都弁とハングルが混在しているのも良い。

しかし(気持ちはわかるけど)説教臭さは何とかならなかったのだろうか。あと最後に向かって複数の話が重なりあっていくが、ちょっとゴチャゴチャ。ウエストサイドストーリーみたいにうまく絡まっていない。って比べるのは酷だけど。

沢尻エリカはかわいい。性格悪いとか聞いたけど、あの実力なら、まあいいか。って何が。

みんないってしまう

1999 角川書店 山本 文緒

 

山本文緒さんの12の短編集。言葉にできないような微妙な感情を短いストーリーで丁寧に描き出す。

すごかった。どれもこれも、すごかった。どれもこれも、痛い。「いつも心に裁ちバサミ」では軽く泣いた。って、これよんで泣く男ってマジキモイ。

『…四十五点の人生でよかったとよかったと笑ってあげられる。人様に誉められなければ充実しないような、そんな人生を否定してあげられる。』って「ハムスター」の中の一文だけど、ハッとした。

そういえば「裸にネルのシャツ」は田辺さんの短編で同じようなものを読んだことがある気がした。本はほとんど買わないけど、これは買うかもしれない。

へんないきもの

2004 バジリコ 早川 いくを

 

へんな生き物を1ページの文章と1ページのイラストで紹介している。文章は毒舌でフザケていて、おもしろい。また、写真だとエグそうな生き物もイラストだと美しくみえる。文章もイラストもフザけ具合にニンマリしてしまう。おすすめの一冊です!

図書館の本棚でたまたま蛍光色の本が目に付いたのでパラパラ読んでみると、ハリガネムシが書いてあったから、借りてみた。文章のタイトルとして、動物が簡単に説明されている。たとえば「最初から守りに入っている人生 ハリモグラ」とかフザけている。内容もカスザメの説明では「…待ちに待った獲物が通りかかると電光石火で丸呑みにするのだ。その間わずか0.2秒。ちなみに次元大介の早撃ちは0.3秒。次元より早いのだ。」と、これまたフザけている。カンザス州では進化論を教えなくなったという情報とか、クラゲの話が連れ込み宿の話で終わったり、説明に731部隊とかまで出てくる始末。けどプラナリアも出てきたし、海ほたるショウで海ほたるには電気がかけれているとか、「150度の高熱にも絶対零度にも、真空にも乾燥にも6000気圧もの高圧や放射線にも耐えられる」クマムシとか、ライバルの子供を生き埋めにして殺すメスのプレイリードッグの習性とか、ホホウと思う。アーイアイ、アーイアイのおさるさんが現地では「悪魔の使い」と呼ばれるほど怖い外見なんだってさ、、。

最後はツチノコについてのコラムが書かれている。ツチノコがキリスト教グノーシス派のイコンとして崇拝された「ウロボロスの龍」に似ているとか関係ないことが書かれていると思ったら、ユングの普遍的無意識が出てきて、西欧ではUFOなのに、日本ではツチノコというのはお粗末だとか言い出す。とりあえず、いろんな意味でおもしろい!!

楽園

1995 新潮社 鈴木 光司

 

古代のモンゴル沙漠で生き別れた二人。二つの魂は強い絆によって、時空を超えて出会う。壮大な愛のファンタジー。

壮大さのわりに短くまとまっているので、食い足りない感がある。人類が世界に広がっていく過程で実際にあったかもしれない物語なので、そういうロマンは好きである。最終章は映像化を意識しているのか描写的であった印象がある。

アジアンタムブルー

2005 角川書店 大崎 善生

 

雑誌の編集者の山崎は、みずたまりを撮りつづけるカメラマンの葉子と出会う。取材先で葉子は倒れ、末期ガンであることがわかる。人はどこまで人につくせるのか。せつない愛の物語。

物語はやっぱり後半から加速していく。しかし、なぜかその波に乗れなかった。なぜだろうか。精神状態だったのか、一気に読めなかったからだろうか。パイロットの方がグッときた。作りこまれた舞台装置が見えてしまったのかな。