Googleを支える技術 ~巨大システムの内側の世界 [WEB+DB PRESS plusシリーズ] (WEB+DB PRESSプラスシリーズ)

2008 技術評論社 西田 圭介

 

Googleの技術を論文を元に分かりやすく解説した本。サーチの概要から始まって、データ保護機能を実現した分散ストレージ、ハードを増やすことによりリニアに性能が上がっていく分散処理などの基盤技術を説明する。それに加えてハードの運用コスト、電力、HDDの特性などのレポート、さらに独自の開発文化、開発環境、有名な20%ルールなどを解説する。

分散技術はほとんど知らなかったが興味深く読めた。方法を変えていくことにより徐々に進化しているのには恐れ入った。また20%ルールは、他のことをやるように“求められてる”というのを知らなかった。開発文化、運用なども興味深い。とりあえずオリジナルのドキュメントも読まんとあかん。

こぼれる

酒井 若菜 春日出版 2008年6月

 

一つの物語を複数の人の視点から描いた群像劇。恋愛小説という括りではないと思う。“雫”を中心に交差する人間たちのドラマ。

司馬先生の本を読むと知って、にわかにファンになった。正直、始めの方の文体などは読みにくく感じたが、後半はすらすら読めた。なにげに技巧的で扱っているテーマも読みごたえがある。普通に面白かった。一つ一つの物語はハッピーとは言いがたいが、ポジティブなメッセージを発している。きっとそれは「夢を与えられなければ、テレビではない」と臆面もなく言いはなつ彼女のスタンスなのだろう。あとがきは特に好き。すっぴんで町を歩くというが、言葉もすっぴんである。次回作には謝辞を入れてほしい(^ ^

ピープルウエア 第2版 - ヤル気こそプロジェクト成功の鍵

2001 日経BP社 トム・デマルコ, ティモシー・リスター, 松原 友夫, 山浦 恒央

 

ソフトウェア開発管理の名著。環境、退職の影響、チーム、プロセスなど様々なトピックについて、実際のエピソードを交えながら管理者の心構えについての書籍。

デマルコ氏の書籍は昔に一冊読んだことがあったが、これもリストにあったので読んでみた。CMMについて、批判的なのが印象的だった。やはり自尊心の問題は大きいと思った。

パラレルな世紀への跳躍

2007 集英社 太田 光

 

「人間は本当に皆、歳を重ねるにつれて大人になっていくのだろうか。私にはどうも、その逆に思えて仕方がない。我々は歳を重ねるにしたがって“無垢”に向かっていくのではないだろうか。」

太田光氏のエッセイ。話題は政治、戦争、妄想、回想、小説、芸人、芸能など多岐に渡る。切り口も面白く、自分と世界とのギャップや、理想論を当事者として率直に語る。

太田氏を特に好きということはなく、今までちゃんと見たこともなかったが、某女優さんが一番好きな本に挙げていたので読んでみた。すごい読書家ということで、文章もうまく羨ましい。全体を通して強い反戦主義を貫き、表題の「パラレル」の中には多様主義の匂いを感じた。その多様主義の源は、自分と周りとのギャップがあるのかもしれない。特筆すべきは、すべての問題に対して、自分が問題に責任ある立場として批評することなく意見している点だ。宇宙や戦争の問題はちょっと自分との認識の差を感じたところもあった。サリンジャーを好きなのも共感を持て、挙げられていた作家さんも読んでみようと思った。一番に好きな話は短編の天使のものかな。短編を読んでみたい。とにかく、笑ったり泪が出たり考えたり、こんなにゴチャゴチャなエッセイは初めて。たぶんテレビの中の太田氏を好きになることはないかもしれない。けれど、彼の書いたものは大好きになった。

スーパーエンジニアへの道―技術リーダーシップの人間学

1991 共立出版 G.M. ワインバーグ, 木村 泉, 木村$

 

ワインバーグ氏が問題解決型リーダーについてエピソードを交えて示唆的に語る。動機付け、組織化、アイデアの流れの制御、などにテーマを分類している。

コンピュータ関連のバイブルをあまりにも読んでいないことが露見したので、「コンピュータの名著・古典100冊」にあった本書を読んでみた。内容を一言で語るのは無理であるが、エピソードで暗示された方法論に学ぶところは多い。何度か折にふれて読み返した方がいいかもしれない。コミュニケーションの方法論で、自分の発言にいたるすべての感情の変化を説明するというものがあったが、これはいいかも、と思った。もちろんフィルターは必要だとは思うが。

世界文学全集〈第3〉赤と黒 (1965年)

1965 河出書房新社

 

身分は低いが野心を持った美しい主人公ジュリアン・ソレルは、その頭脳の明晰さを買われて町長・レナール家で家庭教師として雇われる。やがて、ジュリアンはレナール夫人と恋におちる。さらにパリの神学校に行き、大貴族のラ・モル侯爵の秘書にまで上り詰めるが、そこで起きる事件によって出世の道は閉ざされる。スタンダールの代表作。

モーム10選に入っていたから読んだが、素晴らしく面白かった。気持ちよかった。