パラレルな世紀への跳躍

2007 集英社 太田 光

 

「人間は本当に皆、歳を重ねるにつれて大人になっていくのだろうか。私にはどうも、その逆に思えて仕方がない。我々は歳を重ねるにしたがって“無垢”に向かっていくのではないだろうか。」

太田光氏のエッセイ。話題は政治、戦争、妄想、回想、小説、芸人、芸能など多岐に渡る。切り口も面白く、自分と世界とのギャップや、理想論を当事者として率直に語る。

太田氏を特に好きということはなく、今までちゃんと見たこともなかったが、某女優さんが一番好きな本に挙げていたので読んでみた。すごい読書家ということで、文章もうまく羨ましい。全体を通して強い反戦主義を貫き、表題の「パラレル」の中には多様主義の匂いを感じた。その多様主義の源は、自分と周りとのギャップがあるのかもしれない。特筆すべきは、すべての問題に対して、自分が問題に責任ある立場として批評することなく意見している点だ。宇宙や戦争の問題はちょっと自分との認識の差を感じたところもあった。サリンジャーを好きなのも共感を持て、挙げられていた作家さんも読んでみようと思った。一番に好きな話は短編の天使のものかな。短編を読んでみたい。とにかく、笑ったり泪が出たり考えたり、こんなにゴチャゴチャなエッセイは初めて。たぶんテレビの中の太田氏を好きになることはないかもしれない。けれど、彼の書いたものは大好きになった。

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