クイーンズ・ギャンビット

2020 Netflix スコット・フランク

 売り出していたし、アニャ・テイラー=ジョイの独特の雰囲気に惹かれて見た。チェスは正直良く分からないが、分からなくても楽しめた。

登場人物

 数学者の母親を持つベスは自閉症の症状があるが、9歳で交通事故で母親を亡くす。養護施設の用務員ウィリアム・シャイベルは経験豊富なチェスプレイヤーだが、ベスのチェスの才能を見い出す。

物語の始まり

 母親を失ったベスは養護施設に入れられる。そこでは薬物を子どもたちに投与しており、ベスは依存症になっていく。ある日ベスはひとり地下室で用務員のシャイベルが打つチェスに特別に興味をそそられ、彼からチェスの手ほどきを受けのめり込んでいく。

テーマ

 チェスの才能と道徳性の欠如を併せ持った女性が世の中の脚光を浴びて、チェスという男性社会に乗り込んでいく様が気持ちいい。依存症を持つ様子もベスの便りなさを表しているようで、むしろ許容してしまう。どの世界でもちょっとズレているような女性でないと男性社会では戦えないのかしらとも思う。

最後に

 撮影効果も凄いと思ったが、アニャ・テイラー=ジョイの雰囲気も大きいように感じた。女性の活躍やチェスという独特の世界を垣間見たい人にはおすすめです!

ジョゼと虎と魚たち

2020 松竹 タムラコータロー

 実写映画を見て、田辺聖子の短編も読んだ大好き大好きな話だが、アニメ化されたと聞いて映像もきれいだったので映画館に見に行った。実写映画とはまったく違う脚本でまた別な方面から考えさせる映画になっていて、素晴らしかった!

登場人物

 恒夫は海洋生物学を専攻する22歳の大学4年生。幼少の頃、メキシコの海のみに生息する「クラリオンエンゼル」を近所のアクアショップで見かけて以来、その群れを自分の目で見ることを夢に抱いている。通称ジョゼは幼いころから車椅子生活を送り、現在は祖母と二人暮らし。外は危ないと外出はさせてもらえず日中のほとんどを家で過ごして、自室で様々な絵を描いている。

物語の始まり

 ある夜のバイト帰りに坂道を猛スピードで下ってくる車椅子の女性、ジョゼを助ける。そのまま家まで送ってくると高額なバイト料を提示されて、ジョゼの相手をするように依頼された恒夫は留学費用のためにアルバイトとして通うようになる。ジョゼの可愛らしい容姿とは裏腹な高飛車な言動に翻弄され、アルバイトを辞めようとする。しかし一緒に様々な場所を訪れるうちにジョゼのことを理解していく。

テーマ

 一番ハイライトされていたのはハンディーキャップを持つ人への偏見や限界や可能性と感じた。いろいろな制約を課される中でできることもあるのかもしれない。けれど、自分がそのような状態に陥ったときに希望をもって前を向いて行けるかは、非常に難しい問題だということを胸元まで突きつけられた。

 もう一つは世界の美しさ・面白さというのだろうか。ジョゼは恒夫といっしょに町に出るようになるが様々なものを初めて体験し子供のように感動する。それが感動的なのだ。私達が何気なく見逃している風景などは何度も見ていたりもう一度見ることができると思っているからかもしれない。それを初めて見たり二度と見れないものだとしたら物の見え方は変わるだろう。

最後に

 映像も美しいし涙なくして見ることができないし、実写版と同じように今後の人生で何度も見返す映画だと思う。実写版を見た人にもおすすめできるし、制約を課される人にも一度自らを省みる機会を与えてくれる映画かもしれない。とにかくおすすめです!

ヤンキーと地元 解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち

2019 筑摩書房 打越 正行

 100分で名著に出ていた岸政彦さんが紹介していて本書を知りました。現場を重視する社会学者ということで、興味があり手に取った。

本の構成

 第一章「暴走族少年との出会い」ではパシリとして暴走族に参加することで、参与観察を始める。そこで拓哉と出会い落ち着けない家族環境や同じく落ち着けない学校と仕事の話など過酷な生活の様子を聞く。暴走族の披露の場のごーぱちなどの様子も描かれる。
 第二章「地元の建設会社」では沖縄で働く若者の多くは中学を卒業すると現場に入るが、沖縄の調査の中心人物は高卒という少数派でいろいろな人を紹介してもらう。その中で沖組を立ち上げた康夫社長と出会い働く。現場の様子や週末の過ごし方、出会った人たちの人生を聞く。
 第三章「性風俗店を経営する」ではセクキャバの受付をしている洋介の話から始まる。ヤクザの対応、雇う女性の選び方、地元とのつながりについて研究考察する。
 第四章「地元を見切る」では勝也の歴史になっていて中学生から建設現場で働き鳶になり、キャバクラで和泉と結婚・離婚する。キャバクラ通いしたりもする。キセツと呼ばれる季節出稼ぎで本土に行ったり漁船に乗ったりして仕事もしている。
 第五章「アジトの仲間、そして家族」で良夫の歴史から始まり中学の卒業証書ももらっていない。無免許や窃盗で少年院に入って母親が毎日のように面会に来てくれたり、盗んだオードバイや全生徒の給食費の弁済してくれていたことに気づき心を入れ替えた。キャバクラの経営に踏み出すが店を閉めボーイになったようだがその後は不明。サキとエミの歴史も語られる。二人とも自分の親や彼氏を見てそれぞれ評価基準を作り、より良い家族に近づける努力をしている。

気になったポイント

 「少年たちの環境を知ることで自分の環境を客観的に見ることができた」という著者の率直な感想も素晴らしいと感じた。本書を読む意義の多くは接点の無い世界を知ることで、自分のいる世界を客観視できることだと思う。

 キャバクラはあまり行ったことがないが「キャバクラ嬢が綺麗」で「キラキラしている」という感想が興味深かった。私はそう思ったことがなかった。またキャバクラは「女性をめぐって男性同士が争奪戦を繰り広げる場所」という認識は面白く、「彼氏旦那がいるキャバクラ嬢に手を出して何が悪い。それが嫌ならその男が家において働かせるな」という意見も至極まっとうに思えて興味深かった。

 実は本によっては後書きが本文以上に好きだったりするが、本書もそのような本である。感謝の言葉と共に誰にどういう刺激を受けたのかが率直に書かれていて、著者の歴史や研究に対する情熱が伝わってきて、感動的だった。

最後に

 赤裸々な若者たちとの会話が収録されていて刺激的であった。とにかく素晴らしい研究だと思う。普段は脚光を浴びることがない声をつぶさに拾い届けていただいていることに感謝しかない。沖縄語を学び若者たちの中に分け入っていくのは相当なエネルギーが必要だと思う。このように現場に足を運ぶ研究者や社会学者が好きである。本書が紹介しているような書籍もぜひ読んでみたい。

 沖縄に限らないのかもしれないが生活状況が厳しい若者の状況や考え方に興味がある人はおすすめです!ぜひに手に取ってほしい。

君の膵臓をたべたい

2017 東宝 月川翔

 なんとなく見たが切ない物語が良かった。浜辺美波さんがキレイだった。

登場人物

 主人公の「僕」は友人や恋人などの関わり合いを必要とせず、人間関係を自己完結する。さくらは天真爛漫で積極的であるが、不治の病にかかって余命が幾ばくもない。

物語の始まり

 母校で国語教師になった「僕」(小栗旬)は、老朽化により閉鎖が決まった図書館の蔵書整理を任され、図書委員と一緒に作業をしていました。教え子と話す中で、かつて1人の少女・桜良(浜辺美波)と過ごした日々を回想する。
 学生時代に主人公である「」(北村匠海)は病院で偶然「共病文庫」というタイトルの本を拾う。その本はクラスメイトである桜良がつづっていた秘密の日記帳で、彼女は膵臓の病気により長く生きられないことが書かれていた。秘密を知った「僕」は桜良に死ぬまでにやりたいことを一つづつやっていくことに付き合うことになる。

テーマ

 人に想いを伝えるなら早いほうがいい。一方で時空を超えて届く想いもある。生きるということは人との関わりの輝きと煩わしさに交わって生きるということなのかもしれない。

最後に

 匠海さんはカッコいいし、美波さんもキレイ。とりあえずこの二人を見ているだけどもハッピーになるが、切ない物語の最後の余韻もたまらない。切ない青春映画が好きな人にはおすすめです!