ヤンキーと地元 解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち

2019 筑摩書房 打越 正行

 100分で名著に出ていた岸政彦さんが紹介していて本書を知りました。現場を重視する社会学者ということで、興味があり手に取った。

本の構成

 第一章「暴走族少年との出会い」ではパシリとして暴走族に参加することで、参与観察を始める。そこで拓哉と出会い落ち着けない家族環境や同じく落ち着けない学校と仕事の話など過酷な生活の様子を聞く。暴走族の披露の場のごーぱちなどの様子も描かれる。
 第二章「地元の建設会社」では沖縄で働く若者の多くは中学を卒業すると現場に入るが、沖縄の調査の中心人物は高卒という少数派でいろいろな人を紹介してもらう。その中で沖組を立ち上げた康夫社長と出会い働く。現場の様子や週末の過ごし方、出会った人たちの人生を聞く。
 第三章「性風俗店を経営する」ではセクキャバの受付をしている洋介の話から始まる。ヤクザの対応、雇う女性の選び方、地元とのつながりについて研究考察する。
 第四章「地元を見切る」では勝也の歴史になっていて中学生から建設現場で働き鳶になり、キャバクラで和泉と結婚・離婚する。キャバクラ通いしたりもする。キセツと呼ばれる季節出稼ぎで本土に行ったり漁船に乗ったりして仕事もしている。
 第五章「アジトの仲間、そして家族」で良夫の歴史から始まり中学の卒業証書ももらっていない。無免許や窃盗で少年院に入って母親が毎日のように面会に来てくれたり、盗んだオードバイや全生徒の給食費の弁済してくれていたことに気づき心を入れ替えた。キャバクラの経営に踏み出すが店を閉めボーイになったようだがその後は不明。サキとエミの歴史も語られる。二人とも自分の親や彼氏を見てそれぞれ評価基準を作り、より良い家族に近づける努力をしている。

気になったポイント

 「少年たちの環境を知ることで自分の環境を客観的に見ることができた」という著者の率直な感想も素晴らしいと感じた。本書を読む意義の多くは接点の無い世界を知ることで、自分のいる世界を客観視できることだと思う。

 キャバクラはあまり行ったことがないが「キャバクラ嬢が綺麗」で「キラキラしている」という感想が興味深かった。私はそう思ったことがなかった。またキャバクラは「女性をめぐって男性同士が争奪戦を繰り広げる場所」という認識は面白く、「彼氏旦那がいるキャバクラ嬢に手を出して何が悪い。それが嫌ならその男が家において働かせるな」という意見も至極まっとうに思えて興味深かった。

 実は本によっては後書きが本文以上に好きだったりするが、本書もそのような本である。感謝の言葉と共に誰にどういう刺激を受けたのかが率直に書かれていて、著者の歴史や研究に対する情熱が伝わってきて、感動的だった。

最後に

 赤裸々な若者たちとの会話が収録されていて刺激的であった。とにかく素晴らしい研究だと思う。普段は脚光を浴びることがない声をつぶさに拾い届けていただいていることに感謝しかない。沖縄語を学び若者たちの中に分け入っていくのは相当なエネルギーが必要だと思う。このように現場に足を運ぶ研究者や社会学者が好きである。本書が紹介しているような書籍もぜひ読んでみたい。

 沖縄に限らないのかもしれないが生活状況が厳しい若者の状況や考え方に興味がある人はおすすめです!ぜひに手に取ってほしい。

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