地図でスッと頭に入る古代史

2021 昭文社 瀧音能之(監修)

日本の古代史は日に日に興味が出てきてるので、図書館で見かけて薄くてわかりやすそうな本だったので手にとってしまった。

本の構成

 第一章で「縄文・弥生時代」、第二章で「古墳時代」、第三章で「飛鳥時代」、第四章で「奈良時代」にフォーカスして、トピックを取り上げて、図を伴って解説していく。途中にクローズアップ古代史という章を設けて、従来の説から変わっているものについて、最新の説を解説している。

気になったポイント 従来説と新発見

 教科書でも語られているという最新の説で知らなかったことはいろいろあったので興味深かった。仁徳天皇陵とされていた古墳が築造時期と天皇が活躍した時代と合わないことから、大仙陵と改められていたのは驚いた。一方で聖徳太子が実在しなかったという説はさすがにありえない気がした。

最後に

 あまり詳しくないのもあり、聞いたことがあるなぁという感覚で、綺麗な絵を見ながら流し読みしてしまったところもあったが、目を引くところもあった。黒曜石の分布や、古代の出雲大社がかなり高層の建物だったことなどは興味深かった。

 詳しくない人も気軽に手にとって読み進められるので、初心者への歴史の解説本としておすすめです!

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの 上・下

2012 草思社 ジャレド・ダイアモンド(著), 楡井 浩一(訳)

 ジャレド・ダイヤモンド氏による「銃、病原菌・鉄」に続く著作であり、様々な文明の崩壊を考察する内容となっている。全体としては現代の環境問題への対応について問題提起をしている内容に読めた。

本の構成

 4部16章で成り立っている。文明の崩壊を招く要素として環境被害、気候変動、近隣の敵対集団、有効的な取引相手、環境問題への社会の対応の5つを挙げてこの観点で各文明を分析する。第一部「現代のモンタナ」では過去の鉱業からの汚染と、森林伐採の必要と経済的な効率、古くからの暮らしと土地開発の摩擦について、第二部「過去の社会」ではイースター島での森林資源の不足による崩壊、ピトケアン島・ヘンダーソン島での人口に対する資源不足による崩壊、アメリカのアナサジ族の森林伐採と旱魃による崩壊、マヤの敵と旱魃による崩壊、スカンジナビア半島から外海に進出し移住したヴァイキングの行く末、特にグリーンランドの興亡について、加えてニューギニア・ティコピア・日本の成功例について、第三部「現代の社会」では、ルワンダでの大虐殺の土地問題にまつわる背景、一つの島に隣り合うドミニカとハイチ、中国の人口・食糧・環境問題、痩せた土地を搾取するオーストラリア、第四部「将来に向けて」では、社会がなぜ壊滅的な方向に向かうか、大企業と環境対策の良い事例と悪い事例、十二の環境問題と反論やこれからについて語る。

気になったポイント – 支配者層の非合理

 支配者層が無駄なものを浪費したり自分だけ裕福な暮らしをしたりと、非合理的な決定をしていたのが社会が崩壊した原因の一つなのではないか、とあった。イースター島の社会階層やグリーンランドにも社会階層あり、それらによる弊害である。

 社会階層は社会のアイデンティティを維持するために必要なものだったのではないかというのが自分の考えである。滅亡した社会にはあったが多くの現存している社会にも存在する。それがないと集団としての物語が失われてしまい、人々が野生化してしまったら、それこそがら文明が崩壊してしまうのではないかとも感じる。

最後に

 崩壊した社会は環境が痩せていて人類が適応するのが難しい場所だったという印象で、度重なる旱魃などの環境変化で崩壊するケースもある。その地域がどのくらいの人口を養えるかが重要だったが、現在では地球規模のやりとりで養える人口が変わっている。

 その土地が持っている潜在能力が重要だったが、現在の地球はどのくらいの人口を養うことができるのか、興味は膨らむ。過去の文明崩壊や世界の環境問題に興味がある人にはおすすめです!

「宗教」で読み解く世界史 教養として知っておきたい

2020 日本実業出版社 宇山卓栄

宗教は世界史の中で大きな要素であって興味があったので手に取った。一つ一つのチャプターが短いので、扱っている範囲は広いが読みやすく工夫されている。

本の構成

 四部32章で構成されている。第一部「東アジア」では、中華思想と宗教である儒教を信じる中国、小中華に服した朝鮮、成文や組織のない神道を重んじる日本、儒教・仏教の影響を受けたが中華に組み込まれなかったベトナム、清に制服されたイスラム教の新疆ウイグル自治区、中国とは別文化の仏教国の雲南、中国から逃げ逃れた道教が信奉されている台湾について説明。

 第二部「インド・東南アジア」では、選民思想をもったバラモン教は王朝が国をまとめるための仏教に押されたがヒンズー教に変遷し地方豪族が信仰するようになったインド、アンコール朝はヒンドゥー教だったもののその後仏教国として栄えたタイ・ミャンマー・カンボジア、中国の混乱で海上貿易の収益源を失った仏教国シュリーヴィジャヤ王国、王朝が自分と共に民と富裕層の利益を図り建設されたアンコールワットなどのヒンドゥー教の王国、インドで発展した商人に時事されたジャイナ教・宗教的に分断されたパンジャーブ地方で生まれた戦闘色の強いシク教、インドをイスラム化して統一できなかったムガル帝国、イギリス統治で分割させられたイスラム教国パキスタン、仏教のアーリア系シンハラ人とヒンドゥー教のドラヴィダ系タミル人との内戦になっているスリランカ、ムガル帝国を引きづいでイスラム教のバングラディッシュ、マラッカ王国のイスラム教を引き続き中国資本に対してイスラム主義で対抗しているマレーシアやインドネシアについて説明。

 第三部「ヨーロッパ」では、カトリックの教皇による緩やかな教皇の連合体による支配と腐敗による瓦解、教会との利権闘争に利用され印刷技術によって広まったプロテスタント、営利を推奨しブルジョアを取り込んだ経営者カルヴァン、資金が集まって大航海時代をスペインと新教徒が集まるアントワープを潰して没落した敬虔なカトリックのフェリペ2世、新教徒が毛織物産業で経済発展をさせてスペインを倒したイギリスとオランダ、ブルジョアを取り込むためプロテスタントも取り込んだイギリス国教会、メアリ1世が諸侯と和解するためにカトリックを復活させるがエリザベス一成がイギリス国教会を復活、カトリックのアイルランド人とイギリスの対立、プロテスタントを使ってカトリックを排除し王権を確立したデンマーク、オランダ新興勢力はハプスブルグ家との代理戦争を支援しついにオーストリアだけになったカトリックのハプスブルグ家、フランスはユグノーの支援を受けたアンリ4世に始まりそれを覆して新興ブルジョアの財を接収しようとしたルイ14世さらに反動で合理主義で混迷を極めたフランス革命、ローマの分裂で生まれたギリシア正教とビザンツ帝国崩壊で独立した各国の正教、東方正教会の最高祭祀者となったロシア皇帝、ポーランド・ハンガリーはドイツに近くカトリックが主流、プロテスタントが根付かずカトリックに戻ったチェコやスロバキア、イギリスの貧困層のプロテスタンとピューリタンが移住したアメリカ、カトリックのヒスパニック系。

 第四部「中東・中央アジア・アフリカ」では、通商を重視したイスラム教、アラブ人軍人のクーデターで生まれた軍人のウマイヤ朝、軍人の重用をやめたが分裂を招いたアッパース朝、イスラム商人に支えられた戦闘のプロのクルド人のサラディンは戦争で商機を失うのを嫌った商人たちに財政援助を止められ、利権を狙うリチャード一世に敗れる、トルコ人軍人のマルムーク朝はモンゴルの進撃を止めてインド洋交易の利権も抑えるがポルトガルの大砲に敗れ利権を失いオスマン帝国に吸収される、宗教民族に寛容なオスマンの発展と衰退、近代化を阻んだイスラムの要因と改革したトルコのケマル、シーア派の十二イマーム派のイランとアメリカその他の国とのグレートゲーム、中国マネーに支配されつつある中央アジア五カ国、イスラム教国でモンゴル系のティムール帝国、それを滅ぼしたトルコ系のシャバイニ朝、それを滅ぼした無神論でイスラムを弾圧した南下したロシア、その後ソ連は西側諸国への対抗するためイスラム教に懐柔的に対応、崩壊後はイスラムが復権したが弾圧によりイスラム信仰は緩やかに、富を肯定するユダヤ教とその不満から生まれたキリスト教、アフリカでの北のイスラム教と南のキリスト教の分断、コプト教の流れを汲むエチオピア

気になったポイント – 宗教は強力なソフトツール

 宗教は国内に向かっては「ソフトツールとして、思考や思想を共有し、一つの価値理念に向かって協働することができる」また国外に向かっては「公然性をもった対外工作ツールとして政治的に利用されてきた」というような、「宗教は救済」というようなナイーブなものでないと語っている。

 たしかに民族を超えて協働するには宗教という物語が一番成功してきた気がする。しかし今は資本主義というのはまさにソフトツールで思考や思想を共有し、一つの価値理念に向かって会社などを通じて協働している。

気になったポイント – 利子

 利子は以前から気になっていたが、イスラム教は利子は貧富を拡大するからとらないとあり、それが近代化を阻んでいると書いてあった。一方でカトリックは認めていなかったが認めた。カルヴァンは5%を許容して商業が発展。溜め込んだお金を外に回すために重要である気がする。利子についてはもっと勉強したい。

最後に

 「宗教地政学」の本と銘打っているが、国や地域ごとの宗教の遷移と対立などがよくわかった。宗教という切り口で世界史をみたい人にはおすすめです!

SNS-少女たちの10日間

2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, 

SNSをめぐる少女たちがさらされている現実を撮ったドキュメンタリー。ビッグイシューで読んだいたが、その後にネット記事で紹介されていて、見てみたら想像以上でした。

構成

 三人の女性が未成年の少女になりすまして、女の子っぽいセットの部屋からパソコン経由でSNSにアクセスして書き込みをしたり画像つきで会話したりする。様々な男性が卑猥なことを言われたり、写真などを送りつけられたり、ネットごしの性的な嫌がらせをする男性たちをに合う様子を描く。

気になったポイント

 基本的には社会でうまく行っていない人たちのストレス発散のようにも思っていたが、実際には知り合いの普通に見える男性すらも同じような行為に及んでいたのには驚いた。

最後に

 とにかく本当にひどいなと思った。女性は日々様々な被害にあっているのだろうけれど、特に未成年の女の子がSNSにアクセスするのは危険だと思った。まともな男性は一人しかいなかった。仕事場でも女性だとメールをするだけでいろいろあると聞いたことがあったが、同じような感じになっているのかと思った。

 弱いものを狙って鬱憤を晴らすクソみたいな男性を見たい人や女性の性的被害の状況をしりたい人にはおすすめです!

知ってるワイフ

2018 tvN イ・サンヨプ

 どんなドラマだろう?と見始めたら、面白くて止まらなくなってしまった。夫婦をテーマにしたファンタージドラマ。

登場人物

 ジュヒョクはKCU銀行の融資担当代理として勤務する。ウジンと結婚し2人の子供をもうけ家庭を築くも仕事の事で精一杯で妻のウジンから毎日罵声を浴びせられている。ウジンはエステティシャンとして働いている。結婚してからは仕事の忙しさを理由に家族と向き合ってくれないジュヒョクに嫌気が差している。

物語の始まり

 ジュヒョクは仕事はうまく行かず、子供の迎えを忘れて車を飛ばすと事故にあってしまう。家に帰ると仕事と子育てに疲れたウジンが鬼の形相で待っている。そんな折に今でも輝いている学生時代のマドンナと会い、自分のことが好きだったと知る。学生時代の可愛らしいウジンや結婚する経緯を振り返るが、いろいろなことに流されて結婚したようにも感じる。そんなある日電車に乗っていると、みすぼらしいなりのおじさんが時空のゆがみから過去に戻れると言うのを聞く。

テーマ

 「違う人生だったら」「あそこで自分が違う行動をしたら人生は違う方向に進んだかもしれない」と誰もが思うことがある。ジュヒョクはそう思い別の人生を生きようとする。けれど、どうだろう。今の人生がよりベターな選択だったり、たとえ一つの行動が異なっていても近しい人生を生きるかもしれない。そうすると人生の幸福を決めているのは「選択」ではないのかもしれない。

最後に

 はじめの方のジュヒョクは駄目な旦那の典型である。妻の大変さを顧みないでゲームをやろうとしたりする。ウジンはそういう旦那に歯に衣着せぬ言葉を浴びせかける。韓国ドラマだからできるのか、そういうところも痛快だ。また妻を顧みない人は駄目だと思うし、自分は「仕事ができる人は家事も育児もできる」と言い聞かせて日々ほぼフルコミットまではいかなくても7割コミットくらいはしている。
 とにかくドラマは肩の力を抜いて見られるコメディファンタジーでおすすめです!ちょっと違う人生に飛び込んでみようではありませんか。