パルムの僧院

1969 岩波書店 スタンダール, Stendhal, 生島 遼一

 

「それでは、自分からわざと恐ろしい不幸にとびこみ、この世でいちばん愛するものから遠ざかって生きるようにすることを誓います」

己の本能に従って生きるファブリスと、その彼を熱烈に愛する美しく才気に満ちた叔母。さらにクレリアがファブリスの人生に登場する。それに女性たちの崇拝者たちも加わり、それぞれの欲望がパルムの地で交錯する。

他のレビューでも、「赤と黒」のジュリアン・ソレルとの比較が書かれていたけど、個人的にはソレルが好き。けれど、「パルムの僧院」は女性陣に関して、最強の布陣を整えていると思う。物語については、特に結末について、幸福とは良心とは何だろう?といろいろ考えさせらえるけど、やっぱりもう少し若いときに一度読んでおきたかった。10年後にまた読もう。

消費税は0%にできる―負担を減らして社会保障を充実させる経済学

菊池 英博 ダイヤモンド社 2009年7月17日

 

消費税にとどまらず、新自由主義のやり口を分析・非難し、それに迎合するマスコミ・官僚・政治家を非難する。元東京銀行のエコノミスト、菊池氏による辛らつな批判。

– いざなぎ以来の景気拡大は悪質な統計偽装
– 新自由主義はエセ経済学、国家を破綻させる、反国家的な破壊行動!
アメリカはチリやアルゼンチンと同様、新自由主義に破壊された。
新自由主義の徒である東大や慶応の教授を名指しで批判。
– 小泉改革の郵政事業民主化も医療費圧縮もアメリカの要望
郵政選挙にてアメリカの保険業界が巨大広告メディア経由で電通に小泉支持広告を依頼!
– 日本は財政危機ではない!諸外国の普通の認識。
500兆円を超える金融試算があり、純債務は300兆円。800兆円はウソ!
– 一般会計からのお金が行く特別会計にはお金がある!
特別会計では歳出の2割が余剰金として余る仕組み、これを一般会計に回せば一般会計が黒字に。
– 財政赤字の原因は医療費ではない!
– 消費税は諸外国と比べてまったく低くない!
– 日本はアメリカよりも小さな政府!
– お金を使わない日本人には、均衡財政は不向き!
橋本内閣は財政改革で倒れた。
– 法人税、取得税は引き上げるべき

著者は消されるのではないか?と心配になる衝撃的な内容。おんとし74歳だからOKなのか?マクロ経済学から新自由主義への総攻撃。日本にもまともな人がいるんだと安心した反面、なぜこのような人が少なく見えるのかが不思議。そして、どうすれば、まともな政策ができるのかが問題。
橋本竜太郎先生が候補者挨拶で国民にも謝り、アメリカにも謝った、というのは知らなかった。

消費税をどうするか―再分配と負担の視点から (岩波新書 新赤版 1204)

小此木 潔 岩波書店 2009年9月

 

朝日新聞論説副主幹の小此木氏による消費税解説。

– 財政赤字と、その責任(デフレ、減税)
– 消費税の歴史
– 貧困、格差
– 欧米の例 … 日本がよく引き合いに出すアメリカにはそもそも消費税ないし。ヨーロッパも日用品はゼロ税率か軽減税率。
– 税制改革の提言 … 2%上げるのがいいとか結論している。おい。

定説の域を出ない当たり障りのない解説という印象。

ドリルを売るには穴を売れ

青春出版社 佐藤 義典

 

マーケティングの基礎知識をドラマも混ぜて分かりやすく解説した本。

– マーケティング脳を鍛える
– あなたは何を売っているのか?
– 誰があなたの商品を買ってくれるのか?
– あなたの商品でなければならない理由をつくる
– どのようにして価値を届けるか?
– 強い戦略は美しい

分かりやすいし、さらっと読めた。素人にとってはハッとするアイデアが詰まっていて興味深かった。

図解 実戦マーケティング戦略

2005 日本能率協会マネジメントセンター 佐藤 義典

 

佐藤氏独自の数値化可能なツールによるマーケティング戦略の解説。

図が付いていて分かりやすかったし、実践的で各ツールが補完的で相互に関係しているのも興味深かった。いずれにしても使わないとダメですね。

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く

藻谷 浩介 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010年6月10日

 

藻谷氏による現在のデフレの原因を人口の波として分析。この分析により過去に起こっていた経済の動きも理解でき、今後起こるであろう超高齢社会への対応を考える。

伊東千秋氏が何度も薦めていたので読んでみたが、素人には分かりやすく書かれていて良かった。GDPの減少が問題で、結局なんとか付加価値を上げなくちゃいけないってことなのかな。一つ思うのはGDPへの貢献の度合いを企業単位で正規化させて定量的に表す指標はないものかね。それによって税の控除をさせるとかしてほしい。期間工とかで奴隷のように人を使って利益を上げてGDPを下げている企業には負のモチベーションを与えたい。それで経営者がしこたま儲けて海外に投資したら、ほんと意味ないし。ローマの富豪みたいに公共事業を自費でやってくれるなら大歓迎だけど。それにしてもこの本はマクロ経済学者とか新自由主義者とか大企業とか富裕層とか方々から叩かれているのかな。。。がんばってください。

消費税によらない豊かな国ニッポンへの道―税をただすだけで社会保障財源は十分にある

富山 泰一 あけび書房 2009年5月

 

大企業と富裕層の減税による再配分効果の減少をなくせば、消費税を0%にできると説明。独自の試算を実行。

– 日本の税・社会保障負担は低いのか、高いのか
– 日本はなぜ財源不足になったのか
– なぜ、消費税は導入されたのか
– 消費税導入後の税・社会保障の「抜本改革」
– 税財政政策・社会政策を作っているのは誰か
– 「構造改革」路線で格差と貧困が拡大
– 消費税によらない豊かな国ニッポン創出のために

左側からの消費税増税や大企業・富裕層の減税への攻撃。GDP縮小のストーリーも書かれていた。

消費税のカラクリ (講談社現代新書)

斎藤 貴男 講談社 2010年7月16日

 

消費税の暗部にスポットをあてた、斉藤貴男氏渾身の一冊。中小・零細企業の生の声が聞ける。

– 消費税は国税滞納額ワーストワン
– 価格に転嫁できない中小・零細業者
– 輸出戻し税
– 派遣に切り替えると合法的に節税できる消費税
– 富裕税廃止の代替財源としての大型間接税
– 不公平税制をただせば税収は増やせる

「本書は消費税論の決定版である」と熱く語られていたので、買ってみた。税務署のひどい仕打ちや、中小企業が価格に消費税を転嫁できない現状など、語られている内容は眠れなくなるほど衝撃的だった。輸出企業が消費税の還付金の割合が多い(トヨタ 2千億円とか)のは知っていたけど、派遣社員の採用まで助長していたとは知らなかった。経団連の売国奴たちは還付金と法人税の減税がほしいだけだから、早く消費税を失くさなければならない。