イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所 (原題: If I stay)

クロエ・グレース・モレッツ, ミレイユ・イーノス 2014

 

ミア17歳、高校3年生。親友と呼び合える友達がいて、つきあい始めて1年の大好きなミュージシャンの彼氏がいる。将来の夢はチェロ奏者。今はジュリアード音楽院への入学をめざして猛練習中。
そんなミアを、ある雪の朝、突然の悲劇が襲った。一家が乗った車に対向車が突っ込み、ミアは一瞬にして家族を失ったのだ。病院のベッドの上、昏睡状態のミアの目に映ったものは、ベッドに横たわる自分の姿と幸せだったこれまでの人生、そして、彼女を死の淵から呼び戻そうとする人々の姿。生か死か、どちらを選んでも過酷な状況で彼女はいったいどちらを選ぶのか。

 

正直、はじめを少し見て、主演の二人の演技がいまいちと感じて、見るのを止めてしまったが、思い直して見てみた。子を思う親の気持ち。これはいつも感動する。クロエ・グレース・モレッツの顔が整形っぽくて気になる。親も整形外科みたいだし。しかし、彼女の弾くチェロはすごい。もちろん音は後付けだろうが、3ヶ月でこのように弾けるなんて、ほとんどありえない次元。音楽映画としても完成度が高い。

 

娘を持つ男親はがんばってみる価値ありです。

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

ジャレド・ダイアモンド (著), 倉骨彰 (翻訳) 2012

 

この本もまた長いスパンで人類の歴史を知りたいと、手に取った。

ニューギニア政治家のヤリは聞いた「あなたがた白人は、たくさんのものを発展させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」

進化生物学者でカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部教授である著者は「世界の富や権力は、なぜ現在あるような形で分配されてしまったのか?」「南北アメリカ大陸の先住民、アフリカ大陸の人びと、そしてオーストラリア大陸のアボリジニが、ヨーロッパ系やアジア系の人びとを殺戮したり、征服したり、絶滅させるようなことが、なぜ起こらなかったのだろうか?」というシンプルで根源的な問いについて答えられないかった。そこで著者はこの謎について、1万3千年前に遡り大陸ごとの発展などを人類の進化、歴史、生物学、言語学などの豊富な知識を駆使して説き明かすことを試みる。ピューリッツア賞受賞を受賞した話題作。

 

プロテスタンティズムと資本主義の倫理が宗教の観点から現代世界のありようを説明したとすると、これは歴史と地理的な観点からそれを説明しているように感じた。本書では地理的な環境要因により、偶然にこのようになったと結論付けている。この結論は概ね納得できるが、著者も民族ごとの保守性について触れている箇所もあり、環境による要件ですべて理由付けするのは無理があると感じる。企業でいうと、「アップルの成功の原因はアメリカで起業したからです」と説明できるだろうか?たしかにバングラデシュにジョブズが生まれても今日の成功を勝ち取ることはできなかっただろう。ただアメリカという環境要因だけでは説明できないのは自明で、企業の性質や決定なども大きく影響している。他者を排除した性質については大勢に影響なし、とのことなのだろうか。また、動物・植物にも家畜化・栽培化できるできないという性質的な要因があり、それが今日の状況に影響している、とも著者が言っているので、それが人間に適用できなことの方が不思議だ。

さらに、富と権力が欧米に分配されているというのはちょっと違っているかもしれず、実はユダヤ人に分配されているのかもしれない。さらに欧米が技術的経済的に他の地域を圧倒しているのは、この数百年のことであって、次の数百年はどの民族が世界を圧倒するのかは分からない。時期によって世界の中心は違っていた。メッカが世界の中心であった時期もあったし、ローマが世界の中心であった時期もあった。ニューヨークがいつまで経済の中心であるかは分からない。

いずれにしろ著者が提示した命題は素晴らしいもので、読み物としてドラマチックで面白いのは間違いなので、一読はお勧めする。ただ、結論については一説として留めておくのが賢明だろう。

グローバリゼーション 人類5万年のドラマ (上) 単行本

ナヤン・チャンダ (著), 友田 錫 (翻訳), 滝上 広水 (翻訳) 2009

 

長いスパンで歴史・人類の足跡を鳥瞰したいとこの本を手に取った。

移住・貿易・布教・海外遠征・侵略などの7つの観点で、人類がアフリカを出てからの動きを観察し、分析した書籍。ストーリー仕立てになっており、読みやすい。近年の多国籍企業によるいわゆるグローバリゼーションについては、ポジティブな立場でかかれており、不可避なものとして結論している。

著者が訴えたいことが「多国籍企業によるグローバリゼーションは不可避だよ」というのであれば、もう少し経済的な観点や一般の人に及ぼす影響などの観点で書いてほしかった。人類のドラマと多国籍企業の話をいっしょにするのは違う。人類の歴史は鳥瞰できたから、よしとする。