
「もしあたしが無視とかされても、アオちんはべつになんにもしないでいいよ。みんなと一緒に無視しててほしいくらいだよ、そのほうが安全だもん。だってあたしさ、ぜんぜんこわくないんだ、そんなの。無視もスカート切りも、悪口も上履き隠しも、ほんと、ぜーんぜんこわくないの。そんなとこにあたしの大切なものはないし」
葵はいじめが原因で転校した。新しい学校でナナコに出会う。クラスのどのグループにも属さずにみんなに笑顔をふりまく。そんなナナコを葵は好きだったが、そのナナコもしまいにはイジメの対象になる。けれど、二人は校外で密かに会っていた。
それから月日が流れ、家事に閉塞感を抱く小夜子は、大人になった葵・楢橋葵に出会う。葵は女性経営者として会社を切り盛りしていた。小夜子は仕事を通じて自信を取り戻していくが…。過去と未来の物語が同時に進み、葵の過去が明らかになっていく。
守ってあげる。強く肯定してあげる。親から受けて当然のものが与えれない人もいるのだ。がっくりする。自分を殺すか親を殺すかというところまで行き着くのだろうか。自分がそういう子どもに会ってもチャンと受けとめる自信がないかも、とか思うと、ますますがっくりする。“高校3年間一人で弁当を食べてた”と告白されたことがある。きっとその言葉にはその言葉以上の想いが含まれていたのだろうと思う。今の自分には何ができるだろう。この物語は大好きです。