留学

1968 新潮社 遠藤 周作

 

「こんな小さな美術館に入っても、ぼくらはすぐに長い世紀に亙るヨーロッパの大河の中に立たされてしまうんだ」

留学をテーマにした三部作。周囲の期待や自尊心の中でそれぞれの主人公が葛藤する様子が描かれている。

西欧文化が素晴らしいものだということは言うまでもないことだけど、それと同じく素晴らしい日本文化を比べることはあまり意味のないことだと思う。相互に影響されあっていけば良い。というのは頭では分かっているのだけど、実際に留学したら、そうも言ってられない状況に陥るのかもしれない。徐々に遠藤秀作の世界にはまってくるのを感じた。

沈黙

1981 新潮社 遠藤 周作

 

「翌日、拷問は以下のようにして始まった。七人は一人ずつ、その場にいるすべての人から離れて、煮えかえる池の岸に連れていかれ、沸き立つ湯の高い飛沫を見せられ、恐ろしい苦痛を自分の体で味わう前にキリストの教えを棄てるように説き勧められた。(略)しかし全員、神の恵みに強められていたため、大きな勇気を得て、自分たちを拷問にかけよ、自分たちは信奉する教えを絶対に捨てぬと答えた。」

江戸時代、幕府がキリスト教を禁止する中で、決死の思いで日本に渡航した宣教師の物語。布教する中で拷問を受ける人々を見て、彼が感じたこととは?

熱心に布教に家に来るキリスト教系の信者がいた。普段は無視していたが虫のいどころがわるく、戸口に出ていじわるな質問をしたことがある。「韓国ではほとんどキリスト教に改宗したのに、なぜ日本ではそのようにならないのか?」答えて曰く「風土の違いですかね。韓国ではコンビニのように教会がありますよ」と。そんなに違う風土なのか?との疑問が沸いた。しかし、現実に普及しない。某書によると1%未満ということだ。不思議な現象に思える。

そして“沈黙”。この言葉は物語の中ではあまりにも重い。また、人々のために生きるとはどういうことなのか?その中でぶち当たるキリスト教の根源的な問題。物語の運びも素晴らしく、鬼気迫っている。キリスト教などは置いておいても、読むべき小説だと思う。

イエスの生涯

1982 新潮社 遠藤 周作

 

幸いなるかな 心貧しき人
天国は彼等のものなればなり
幸いなるかな 泣く人
彼等は慰められるべければなり

田舎町に50代にも見える老けた30歳すぎの大工がいた。彼は突如、扶養する家族をすてて、新興宗教に入る。最後は弟子に売られて、扇動者として見せしめの刑に処された。その数年のできごとがその後の世界を左右している。それは死を賭して布教をした弟子たちの影響が少なからずあるだろう。しかし彼等はイエスの存命中は尊敬される職業にもついておらず、むしろ駄目人間だった。

『ふしぎなこの転換と変わりようは一体、どこから来たのか。「無力なる男」イエスの彼らに与えた痕跡がそうさせたというのだろうか。私たちがもし聖書をイエス中心と言う普通の読み方をせず、弟子たちを主人公にして読むと、そのテーマはただ一つ-弱虫、卑怯者、駄目人間がどのようにして強い信仰の人たりえたかということになるのだ。』

本書は、遠藤周作氏の聖書観、イエス観である。

2000年後の世界に影響を与えているイエスという人がどのような人であったか?というのは常に興味をそそられる。「誰かがわたしの服に触れた」という下りはすごい迫力があった。無力でもいいのだ。こんな感受性をもった素晴らしい人が実在してくれたことを祈るばかりだ。

The Notebook

Warner Books

 

“Who did she know in Raleigh who took time off to fix a house? Or read Whitman or Eliot, finding images in the mind, thoughts of the spirit? Or hunted dawn from the bow of a canoe? These weren’t the things that drove society, but she felt they shouldn’t be treated as unimportant. They made living worthwhile.”

ノアは夏祭りで会てひとときを過ごしたアリーを忘れられずにいた。ある日アリーがノアを訪ねてくる。それから数日、二人は会えなかった日々を埋めるようにすごし始めるのだが…。

ソラニン 1 (1)

2005 小学館 浅野 いにお

 

音楽のために好きでもないバイトをする種田。彼と同棲する芽衣子はOLをして生活を支えていた。けれど、ある日芽衣子は会社を辞めてしまう。世界との違和感を拭えないまま生きていく二人を描いた作品(のように思う)

爆発的に良かった☆

椿姫

新潮社 デュマ・フィス, 新庄 嘉章

 

アルマンは貴婦人のような美貌をもった娼婦マルグリットに恋をし、愛を勝ち得る。二人は愛に満ちた平和な日々を送っているが、マルグリットは突然に彼の元を去り、もとの放蕩生活に戻る。憎しみにとらわれたアルマンは明に暗にマルグリットを攻撃するのだ。しかし、その後、彼はことの真相を知るのである。歌劇としても知られる悲しい恋愛小説の傑作。

こんなん読んでていいのだろうか。まあ、いいか。

急変する中国人の人生観―庶民が語る社会主義的市場経済の実際

はまの出版 2004年5月

 

25人の中国人(北京付近に在住?)が直接語る形で自身の現状や半生を語る形で中国の今(2004年)をつづってる。

垣間見える社会の仕組みと、その変化。その中で真摯に努力している人もいればそうでない人もいる。こうも変化が急だと大変だろうなぁーという感想。