天使の梯子

2004 集英社 村山 由佳

 

カフェでバイトする慎一は、お客として来た女性に目を留めた。10年ぶりだったが、ひと目で彼女が中学の担任教師だった夏姫であることに気付く。夏姫との仲を深めたいが、彼女には歩太という分かつことのできない存在がいる。迷う3人はゴールを見つけることができるのか。『天使の卵』の続編。

夏の文庫本フェアに村山さんの作品がかなりあったので、もう一冊くらい読んでみた。男性の視点で書かれているが違和感がなかった。腹を割って話すというシーンがよかった。

雨はあした晴れるだろう

2000 角川書店 三浦 綾子

 

「雨はあした晴れるだろう」「この重きバトンを」「茨の蔭に」の3篇。

白と黒がハッキリしている。鋭すぎる正義に痛みを感じる。自分の中の“罪”を感じるのか。やっぱりキリスト教的な手法なのかな。「茨の蔭に」で子供が犠牲になっているのはやるせない。ほんとにそれだけはやめて欲しい。

柔らかい心

角川書店 鎌田 敏夫

 

イタリアで自立して生活する律子の元に一通の写真が届く。二人の少女が写っている写真だ。「私とあなたは病院で取り違えられたんや、二十八年前に」日本から来た美弥はさらりと告白する。それから律子は自分自身を見つめなおす。

ソツがない。芸術に対する考え方が好き。女性の手練はすごい。こんな女性を作り上げられる作家さんはモテるだろうなぁ~って。

ストロベリーショートケイクス (出演 池脇千鶴)

魚喃キリコの同名コミックを原作に、現代を生きる4人の女性の姿を描く。恋を切望する少女、一途な想いを抱えたデリヘル嬢、自尊心の高いイラストレーター、愛に飢えたOL、4人の女性の恋愛を通して女心をえぐりだした作品。

痛し…。魚喃キリコさんの漫画は何冊か読んでいるし、痛さには免疫があると思っていたが、痛すぎ~~。ベッドシーンで涙が出てきた作品は初めて~~。下着姿がよく出てきたが、妙に気恥ずかしかった。「それ見せてくれるな」みたいな。現実では特異点にいるような女性の痛さを10倍くらいにして描いているのかなぁ。ふと思ったのがみんな「求めている」ってことかな。「求めている人は多いけど、与える人って少ないのよ」という山本文緒の文を思い出す。与える人の需要は多いからモテるらしいヨ!w

池脇千鶴さんはスッピンっぽいメイクと前髪はよかったけど、後ろ髪とあの服装とかどうなの?と、おもた。

チルドレン

2007 講談社 伊坂 幸太郎

 

奔放な「陣内」を周りの人の視点から描いた短編集。時系列はバラバラだが短編同士は関連しているので、長編と言っても良いかもしれない。短編ごとに仕掛けが用意されている。ホロリなミステリー。

やっぱり正義漢な伊坂氏。読むにつれて、言動の一貫しない「陣内」を好きになってしまうのである。涙が出た話もあった。うまいのー。今のところの伊坂氏の中で一番好きな作品です。氏の作品はもう3冊読む予定。

シュガーレス・ラヴ

2000 集英社 山本 文緒

 

正座してただけで骨折する「骨粗鬆症」。美人と言われてトイレにも立てない「便秘」。恋人からの電話を待って眠れない「睡眠障害」。月に一度、些細なことでイライラする「生理痛」。フードコーディネーターの「味覚異常」。恋が、仕事が、家庭が、女性たちの心と体を蝕んでゆく。ストレスに立ち向かう現代女性にスポットをあてた10つの短編。

ホロリ度が高めなので、お薦めかも。
もちろん、救いがない話もあるよ☆

パラレルワールド・ラブストーリー

1998 講談社 東野 圭吾

 

通勤途中に会う女性に想いをよせるようになった崇史。けれど彼女は毎日、手の届かないガラスの向こうにいるのだった。脳研究の最先端の研究所に勤める崇史と、同僚で親友そしてライバルの智彦。その智彦が恋人として紹介した麻由子。彼女はガラスの向こうにいた女性だった。“1年前”と“現在”が交互に語られ、数々の謎が徐々に明らかになっていく。崇史は真実にたどり着けるのか?ラブストーリーも入ったSFミステリー。

同じように過去と現在が同時進行する「アヒル…」がどのカードが“ババ”なのか分からない“ジジ抜き”なら、この作品は“ババ抜き”である。明らかな矛盾点や不審点があり、数々の伏線により、ジョーカーに近づいていく。グイグイと読まされてしまった。

時をかける少女 通常版

2007 細田守 仲里依紗, 石田卓也, 板倉光隆, 原沙知絵, 谷村美月, 垣内彩未, 関戸優希

 

高校生のマコトはある夏の日に時間を跳躍する“タイムリープ”の力を身につけてしまう。はじめはそれを巧みに利用して日々を楽しんでいた彼女だが、仲良しの同級生の友達チアキから告白され、それを強引になかったことにしようと時を戻した。そこから運命の歯車が狂い始めていく…。SF青春ストーリー。

最初はヒロインを“アニメの中のキャラって感じ”みたいに思って傍観していたけど、終盤にはストーリーにのまれてしまった。矛盾点などがいろいろあるみたいだけど、楽しめる。ヒロインの気持ちにも同感。気持ちを受け止めるって大事なことだなぁ、と思いまくる。筒井康隆氏は家族八景が合わなかったからダメかなぁと思ったけど、もう少し読んでも良いかも。

映画アニメっていうとジブリと大友克洋ぐらいしか知らなかったけど、昨今の技術革新のせいか映像がすごい。タイトルバックもオシャレだったし。いろいろアニメ映画が出てきているみたいだから、もっと見てみたい。

文明の衝突

1998 集英社 サミュエル・ハンチントン, 鈴木 主税

 

文明のアイデンティティの境界でのぶつかり合いなどを主軸にした冷戦後の世界像を論じた書籍。

やっと読み終わった。長かった…。っていうか、進まなかった。図書館から電話がかかってきてしまった。とりあえず胃に流し込んだ。何度か反芻しないとダメかも。

シンドかったけど、おもしろかった。西欧化と近代化という2つの概念にまずビックリした。日本は近代化したけど西欧化はしなかったそうな。トルコは近代化と西欧化を両方した。だから西欧化の方に破綻が来ていると…。ケマルゥゥーーーみたいな。近代化に西欧化は必要ないという。たしかに結果的にはそうだ。経済的発展によって非西欧の自文化に自信ができて国家のアイデンティティが重要になってくるってのはフリードマンに近いのか?あと人口の比率と、紛争の相関関係。共産主義の失敗は西欧主義の失敗の予兆だ。とか、いろいろ書ききれない。まあ、エジプトが栄えた時代もあったし、ローマが世界の中心だった時代、イスタンブールがスペインがイギリスが、、、そしてニューヨークが世界の中心だった時代があったと言われるのだろう。

日経ビジネスではアメリカの研究者が「あの欠陥理論!!」と否定していたが、文明を中心にした視点は面白いと思う。けれど、企業や軍事産業、暗躍するCIA、モサドなどの諜報機関にはふれられておらず、民意によって国が動いているという口ぶりが、なんとも空々しい。

つーか、日本も美しい国とか言っていないで、もうちっと具体的にアジアの中の日本のアイデンティティを定義しなおさないとダメなんじゃないか?と思う。儒教的な思想とかも。それが国家の品格とかなのか?

まあ、血肉になる主食の後はデザート(小説)だ( ´Д`)ハァハァ

ファースト・プライオリティー

2005 角川書店 山本 文緒

 

31歳の女性をテーマにした30もの短編集。

どうやって、こんなに沢山の人たちを作り出せるのだろう?と不思議。ちょっとテーマとは離れているけど「バンド」は普通にグッと来た。『「息子」「チャンネル権」「空」「当事者」が好き。どれもスゴイけど、これを読む自分に後ろめたさというか不健全さを感じる…。