パイロットフィッシュ

2001 角川書店 大崎 善生

 

主人公の山崎のもとにかかってきた一本の電話。受話器の向こうから聞こえてきたのは、かつて付き合っていた由希子の声。現在と過去が混ざり合い一本の線となって流れ出す。

ちょっと自分の中で整理できてない感じ。良いとも悪いとも言えない。すごい技巧的だし、ストーリーも後半に向かって面白くなっていくが、その中で感じた感情というものが一言で表せるようなものではなかった。悲しいでも嬉しいでも爽やかでも喪失でも虚無でもない。感情を排除するような運命というか必然というか絶対。よくわからない。

孤独な夜のココア

2000 新潮社 田辺 聖子

 

田辺聖子が描く恋愛、それに続く結婚を描く12の短編。

なんかイイなぁ~というのもあったけど、全体的には平和な感じ。手ぬるいというか、前に読んだのはもっとシビアだった気が。けど、好きです。

あげまん

2005 伊丹十三 宮本信子, 宮本信子, 津川雅彦, 大滝秀治, 高瀬春奈, 北村和夫, 宝田明, 洞口依子

 

伊丹監督の代表作のひとつ。捨て子だったナヨコは老夫婦に育てられるが、中学を出たナヨコは芸者の世界に飛び込む。男に運をもたらすという「あげまん」ナヨコの半生を描く。

宮本信子さんが演じる若いころの主人公はちっと厳しい…?けど、彼女のなにか浮世離れしたような存在感はナヨコにあっていたと思う。浮気が発覚したときに「あげまん」はどう対処するのか?とか興味深々だったが普通だった…。クライマックスはちょっと盛り上がりに欠けた感がある。

本編に2回ほど出てくる主人公の決め台詞は実際にどこかの社長が奥さんに言われたとか聞いたことがあるので、人にもよるのかもしれないが、なるほどこういう風に言われると実力が引き出されるものなんだなぁ~と思った。しっかし、やっぱりパートナーが良くても本人の実力がないと駄目だろう…。無いものは引き出せないから。あいたたたた。

おっと、他の人のレビューを見て思い出した。「もう会えねぇのか。つまんねぇなぁ。」 は好きな台詞。言いたいし、言われたい。

インフルエンザ危機(クライシス)

2005 集英社 河岡 義裕

 

鳥インフルエンザの現状と著者の研究の歴史をつづった本。理論的な部分も図によりわかりやすく解説されている。

会社で鳥インフルエンザにはまっている?人がいるので本が転がっていたので読んでみた。著者の研究の道のりが入っているためにタイトルのインフルエンザというのが薄れてしまっている感がある。けれど、日本ではあまり報道されていないが鳥インフルエンザの危機は着実に広がっており、その規模はわからないがパンデミック(世界的流行)の日は必ずくると思わせられた。

著者の研究の話もおもしろかった。アメリカと日本の文化の違いから、新しい論文を発表したとたんCAIからコンタクトがあったというエピソードや、新しい発見に至る過程など研究を志す人には研究のおもしろさの何たるかが伝わる一冊ではないだろうか。

キッチン

2002 森田芳光 川原亜矢子

 

言わずと知れた吉本ばななの代表作。肉親を失ったみかげが、雄一の家に住まうことになる。不思議な空気感が漂う作品。

原作を読んだのは何年前だろう…。ストーリーはほとんど忘れてしまっていたが、テンポとか技巧的でない映像などが意外によかった。

芸能人とかに疎い私は主人公役の川原亜矢子って名前だけでは現在活躍している人だとはわからなかったが、後で知ってビックリ。

シネマ de 昭和 女の一生

2006 岩下志麻, 栗塚旭, 山田洋次, 小川真由美, 竹脇無我, 田村正和, 林光, 左幸子, 宇野重吉, 野村芳太郎

 

モーパッサン原作の女の一生を舞台を日本に移して再現。お嬢様育ちの主人公といっしょに育てられた女中を対比させる。不幸を重ねていく自立していない女性の一生を描く。

全体的にはかなりの完成度なのではないだろうか。しかし、私は何でこれを見ようと思ったのだろうか…。原作も読んだことがあってドンヨリしたのだが、また同じ気持ちを味わうことになった。

原作中の教会が絡んでいた部分がなかった。その教会とのからみで原作の父親が神について自分の意見を述べているところにいたく感動したが当然その部分はなかった。また主人公の妊娠はたしか「自分は妊娠している」と言って、夫に避妊をさせないことによって妊娠するという画期的な方法だったように記憶しているがそれがなかった。それは入れてほしかったなぁ。あと侮辱された父親が憤慨して刀を持ち出すところが日本的で良かった。

後は、、、劇中の若い青年が田村正和だと後で知ってビックリ。

CURE キュア

2001 黒沢清 役所広司

 

まったく関係ない人が頚部をX印に切り裂かれる連続殺人事件。殺人者はなぜそれを行ったかまったくわからない。刑事である高部は事件を追い始めるが捜査線上に人の心を操る一人の男が浮かんでくる。

怖い。ちょっと途中、見れなかった(笑)カットとか音とかが怖い。けど、なんだろうな。怖いだけっていうか、解決を見ないというか、納得できない。もっとCUREというテーマに肉薄してほしかった。

下弦の月 ~ラスト・クォーター

2005 緒形拳, 栗山千明, 陣内孝則, 蓜島邦明, 成宮寛貴, 二階健, HYDE, 落合扶樹, 黒川智花, 矢沢あい

 

家庭に居場所がないミヅキは仲間と戯れるのがスキだけど、彼氏に裏切られてしまう。町を彷徨ううちに不思議な洋館にたどり着く。洋館からは昔から知っている懐かしい曲が流れている。洋館でアダムという青年と出会う。19年に一度の下弦の月。矢沢愛原作のストーリー。

家庭問題が絡んでいるのは矢沢愛っぽいがミステリーチックなストーリー。原作は読んだが忘れてしまっていたが、複雑なストーリーにもかかわらず、意味がわからないところなどはなかった。随所に使われているCGもよかった。お金がかかってそう。ただ、全体としてはパッとしない。個人的には栗山さんの骨っぽい顔が苦手…汗。HYDEは美形というか何かかもし出していてよかった。

東京物語

2005

 

年老いた両親が子供を訪ねて広島から遥々東京に出てくる。子供たちは忙しく、あまり両親の相手を出来ない。唯一、戦死した息子の奥さんが血がつながっているわけではないのに大切に扱ってくれる。

丁寧な言葉遣いなどが新鮮。両親に挨拶する様など、儒教の影響が今よりも濃いような気がした。けど、外見的な様式の違いはあれ、現代と心情などは変わっていないのかなぁと思った。たぶん40代くらいの人は是非見た方がよいと思う。とりあえず、手紙をもらって返事を書いていない、ばーちゃんに手紙を書こうと思いました。

紀雄の部屋

2004

 

薬学部でプロレスオタクの紀雄。紀雄はプロレスを見に行ってバトンガール?をしている綾子に一目ぼれする。その綾子にキャンパス内でたまたま出会い付き合うことになる。

映像はアングルとかは微妙。だけど、独特のテンポとかキャラとか愛嬌のある音楽とか、全体的に好印象。つぐみさんはGJ。他の出演者のキャラはいいけど、彼女の演技がなかったら、この映画は成立していないんじゃないかな、といったところ。