たそがれ清兵衛

2005 山田洋次 真田広之, 真田広之, 宮沢りえ, 小林稔侍

 

時は幕末、庄内地方の小さな藩の下級武士・井口清兵衛は、ふたりの幼い子どもと老母の世話をするため、勤めが終わる“たそがれ”どきにとすぐに帰宅することから「たそがれ清兵衛」と同胞たちからあだ名される冴えない男。しかし、幼なじみ朋江の危機を救ったことから、実は剣の腕が立つことが世間に知れてしまい、ついには藩命で上意討ちの討ち手に選ばれてしまう…。

画面も脚本もキャストもスキなくできている。感動もした。ただ荒っぽさがなかったようか気がする。宮沢りえを美しいと感じる自分が不思議だった。

ゆれる

2007

 

弟の猛は、故郷を離れ、東京でカメラマンとして成功。一方、兄・稔は実家のガソリンスタンドを継いで慎ましく生活している。母の一周忌に実家に帰った猛は幼馴染の智恵子と再会して、兄・稔と共に渓谷に出かける。その渓谷で事件が起こり、兄と弟の愛憎がぶつかりあう。

スタイリッシュなタイトルバック、象徴的なシーンやカットなど、洗練されている作品であると感じた。けれど、兄弟がいるせいか、逆に感情移入できなかった。物語がどんどん内に引っ張れるような内省的なストーリーで、ときに圧迫感を感じた。作者が持っていきたかった方向を冷静にみてしまった。リアルを追求して、物語にいるような典型的な人間になってしまっていたのではないかとも感じる。

ローマ人への20の質問

2000 文芸春秋 塩野 七生

 

ローマ人の物語の塩野先生の本。一般的に流布されているローマ像などについての率直な質問と答えが会話としてかかれている。

やはりローマを肯定する論調。ローマ人の物語からの引用も多かった。塩野先生のスタンスが随所に語られている。

復習になったのかな?特に読まなくて良かったかも。ローマ人の物語は途中で止まってしまっている。1巻から再読したい。

化粧師

2002 田中光敏 椎名桔平, 椎名桔平, 菅野美穂, 池脇千鶴, 田中邦衛, いしだあゆみ

 

化粧師、古三馬。女たちは彼に化粧をしてもらうのを待ち望んでいる。大正を舞台とした様々なドラマ。

風景がキレイ。時子(池脇千鶴)がなかなかメインストーリーに絡んでこないのはヤキモキした。うーん。うーん。全体的にエピソードはうーん。

そうだ。化粧シーンはよかった。ベッドシーン以外がラブシーンになっている映画はたまにあるけど、この場合は化粧シーンがラブシーン。官能的に美しく描かれていてよかった。

バーバー吉野 スペシャル・エディション

2004

 

その町の少年は「吉野がり」というぼっちゃんがりにする風習があった。子供たちは町に1軒しかない「バーバー吉野」の女主人は伝統を愛し、朝、学校に登校する子供たちの髪型をチェックするのが、日課であった。しかし、そこにカッコよい髪型をした男子が転校してくる。そこから始まる少年たちの物語。

牧歌的な情景。そこには足りないものがないくらいの平和が、美しくソツなく描かれている。全体的に完成度がかなり高いのではないだろうか。

もたいさんは最高だったのだけど、物語にはどこかパンチが足りない。スタンドバイミーのような少年のかかえる葛藤がなかったのだろうか…。カナリアの男の子をまた見れたのがよかった。

ある愛の詩

2006 アーサー・ヒラー アリ・マックグロー, アリ・マックグロー, ライアン・オニール

 

「愛とは決して後悔しないこと」

オリバーは代々ハーバード大学出身という大富豪の御曹司。彼は美しいジェニファーに出会う。ジェニファーは普通の家。オリバーは父親の反対を押し切り結婚する。父と袂をわかち、オリバーは援助を受けずに大学院に進むため、ジェニファーが働き家計を支える。オリバーは晴れて法律事務所に勤務することになるが、、、。テーマ曲が有名な愛の抒情詩。

ヒロインが主人公の家に行くときのシーンが面白かった。あれは女性にとっては嬉しいのだろうか…。学歴社会のアメリゴでは旦那の勉強のために妻が働くというのがあると聞いたことがあるが、こんな感じなのだろうか。ストーリー自体はシンプルすぎて、ひっかかってこないかな…。

楽園

1995 新潮社 鈴木 光司

 

古代のモンゴル沙漠で生き別れた二人。二つの魂は強い絆によって、時空を超えて出会う。壮大な愛のファンタジー。

壮大さのわりに短くまとまっているので、食い足りない感がある。人類が世界に広がっていく過程で実際にあったかもしれない物語なので、そういうロマンは好きである。最終章は映像化を意識しているのか描写的であった印象がある。

アジアンタムブルー

2005 角川書店 大崎 善生

 

雑誌の編集者の山崎は、みずたまりを撮りつづけるカメラマンの葉子と出会う。取材先で葉子は倒れ、末期ガンであることがわかる。人はどこまで人につくせるのか。せつない愛の物語。

物語はやっぱり後半から加速していく。しかし、なぜかその波に乗れなかった。なぜだろうか。精神状態だったのか、一気に読めなかったからだろうか。パイロットの方がグッときた。作りこまれた舞台装置が見えてしまったのかな。

落下する夕方

1996 角川書店 江國 香織

 

梨果は8年間つきあって、いっしょに生活をおくった健吾と別れる。別れの原因である健吾が好きになった華子が家におしかけてきて、梨果とくらし始める。奔放な華子に梨果、そして健吾も翻弄される。「私は冷静なものが大好きです。冷静で、明晰で、しずかで、あかるくて、絶望しているものが好きです」(あとがきより)

悲愴感が漂っても不思議ではないストーリーだけど、静寂と虚無感が広がる。

海を抱く―BAD KIDS

1999 集英社 村山 由佳

 

高校生の物語。サーフィンにとりつかれている光秀と、副生徒会長の恵理。自分の性的衝動が抑えられない恵理はあるとき、誰でも相手にするという光秀の家に押し入り、関係を迫る。性、恋、家族、性などのテーマを盛り込んだ青春物語。

すごい分かりやすいキーワードを盛り込んだストーリーになっているために、典型的になっている感がなくはない。全体の物語としてはキレイにまとまっている、というか、まとまってしまっている。中学生や高校生が読んだら衝撃をうけるのかもしれない。