パイロットフィッシュ

2001 角川書店 大崎 善生

 

主人公の山崎のもとにかかってきた一本の電話。受話器の向こうから聞こえてきたのは、かつて付き合っていた由希子の声。現在と過去が混ざり合い一本の線となって流れ出す。

ちょっと自分の中で整理できてない感じ。良いとも悪いとも言えない。すごい技巧的だし、ストーリーも後半に向かって面白くなっていくが、その中で感じた感情というものが一言で表せるようなものではなかった。悲しいでも嬉しいでも爽やかでも喪失でも虚無でもない。感情を排除するような運命というか必然というか絶対。よくわからない。

孤独な夜のココア

2000 新潮社 田辺 聖子

 

田辺聖子が描く恋愛、それに続く結婚を描く12の短編。

なんかイイなぁ~というのもあったけど、全体的には平和な感じ。手ぬるいというか、前に読んだのはもっとシビアだった気が。けど、好きです。

ブスの瞳に恋してる

2004 マガジンハウス 鈴木 おさむ

 

「森三中」の大島さんとの結婚した放送作家の破天荒な結婚生活を洗いざらいブチまけた痛快エッセイ。結婚の経緯から、2年後の生活までが綴られている。超シモネタ系のエピソードから胸キュンエピソードまで満載で、結婚の定義を揺さぶる問題作!!

初めから大爆笑した!!さすが売れっ子劇作家という感じ。けど、ほんとに可愛いなぁ~と思うシーンもいろいろあった。最後は温かい気持ちになる。あまり結婚というものに良いイメージがわかなかったけれど、こういう結婚生活ならばいいなぁ~という憧れすら沸いた。う○こを見せ合えるそんな温かい家庭を作りたいと思いました(←ちょっとズレちゃってる)

新しい神様

2001 土屋豊, 雨宮処凛, 伊藤秀人

 

右翼団体に実際に属している(いた)雨宮さんを中心としたドキュメンタリー。右翼バンドもやっている。監督に渡されたハンディカメラでイジメられて居場所がなかった自身の話や右翼団体に入ったキッカケ。彼女はカメラを持って、北朝鮮へ行って思想を学んでくる。おまけに北朝鮮ではヨド号事件(右翼組織によるハイジャック)の関係者がお酒によって冗談とか言っているところまで撮影されている。ドキュメンタリーの撮影を通して変わっていく彼女が心境と共に綴られている。

ちょっとレビューに書こうか否か迷ったが、当時の話題作だったようなので、大丈夫と判断。。おもしろい。心情の吐露とか大好きだけど、社会との関係を築けない空虚感がある、生きているのだか死んでいるのだかわからない、リストカット、自分がない。そんな女性もカメラの前では普通に悩む女性。見れば見るほど普通に見えてくる。言っていることも理性的で自分や世界を冷静に理解している。たまに天皇がいないと生きていけない、とか言っているけど…。雨宮さんは親天皇、民族主義。監督は反天皇、個人主義派。この構図も面白いけど、雨宮さんは何か監督に恋心を抱く?!何気に編集や構成もしっかりしていて、起承転結になっているし、低予算。素晴らしいです。

つーか、ちょっと検索したら…。雨宮さんって有名なの?これを機に本も出版しまくっているみたいだ…。どれか読も。

ビルマの竪琴

2001 市川崑 中井貴一, 中井貴一, 石坂浩二, 川谷拓三, 渡辺篤, 小林稔侍, 浜村純

 

終戦直前のビルマ。水島が所属している小隊は物資も尽きてタイに逃げ延びようとしている。精魂が尽きている小隊を元気づけようと元音楽教師の隊長は隊員に歌を教えている。水島は自分で作ったビルマ風の竪琴でその歌に伴奏をつける。小隊はタイの国境直前で日本の降伏を知り、小隊も降伏する。

その後、イギリス軍の要請で水島のみ近隣で抵抗を続けている日本軍の降伏の説得に行き、小隊の他の者は800キロ離れたウドンという土地にある捕虜収容所に徒歩で移動する。全員残らず日本に帰したいと願う隊長は水島に任務終了後には必ずウドンに来いと言う。水島は結局、説得できずに、そこの日本軍は最後まで戦うことになり、水島は戦いに巻き込まれるが運良く生き延びる。

僧侶に扮した水島はウドンに向かって歩き始める。しかし、その途中には、いくつもの野ざらしにされた日本兵の屍を見る。水島は屍に目をそむけて逃げるように走りさるが…。戦後のアジアを舞台にした熱い熱い人間のドラマ。

久しぶりに泣き度が高い作品だった。たぶん泣きポイントではない初めの盛り上りですら泣いてしまった。大人のための童話と監督が言っていたが、原作はもっとファンタジーっぽいということ。けれど、映画はリアルな部分もあわせ持っていて、心がえぐられる。セルフリメイクの作品でカラーで撮りなおした作品ということだった。キャストも良いし、おばあちゃんの役の人は天才的だった。

とりあえず首相は靖国神社とかの施設じゃなくて、海外行って祈ってきやがれ!と思った。とは言うものの、以前は自分の旅のテーマの一つだったのにすっかり忘れていた。いずれにしろ日本人だったら一度は見たほうが良いと思う。

ニライカナイからの手紙

2006

 

風希は母と6歳で別れ、母は東京にたつ。風希は沖縄で育ち、年に一度、誕生日に母から手紙をもらう。高校を卒業した風希は写真を勉強しに東京に来る。もちろん母に会うという目的もあったのだが…。涙なしには見られない感動のストーリー。

もちろん蒼井優さんは良い。というかメチャメチャ自然に泣いててビックリ。今まで見た中で演技が一番よかった。南果歩さんも母役として出ている。よいよい(^o^ ストーリはもう少し複雑でも良かったかも…。色やカットはキレイ。逆光ショット最高。何度か蒼井優さんの逆光ショットが出てくるがどれもキレイすぎ!額に入れて飾りたい!!

そういえば写真とサンシンやりたい。

あげまん

2005 伊丹十三 宮本信子, 宮本信子, 津川雅彦, 大滝秀治, 高瀬春奈, 北村和夫, 宝田明, 洞口依子

 

伊丹監督の代表作のひとつ。捨て子だったナヨコは老夫婦に育てられるが、中学を出たナヨコは芸者の世界に飛び込む。男に運をもたらすという「あげまん」ナヨコの半生を描く。

宮本信子さんが演じる若いころの主人公はちっと厳しい…?けど、彼女のなにか浮世離れしたような存在感はナヨコにあっていたと思う。浮気が発覚したときに「あげまん」はどう対処するのか?とか興味深々だったが普通だった…。クライマックスはちょっと盛り上がりに欠けた感がある。

本編に2回ほど出てくる主人公の決め台詞は実際にどこかの社長が奥さんに言われたとか聞いたことがあるので、人にもよるのかもしれないが、なるほどこういう風に言われると実力が引き出されるものなんだなぁ~と思った。しっかし、やっぱりパートナーが良くても本人の実力がないと駄目だろう…。無いものは引き出せないから。あいたたたた。

おっと、他の人のレビューを見て思い出した。「もう会えねぇのか。つまんねぇなぁ。」 は好きな台詞。言いたいし、言われたい。

インフルエンザ危機(クライシス)

2005 集英社 河岡 義裕

 

鳥インフルエンザの現状と著者の研究の歴史をつづった本。理論的な部分も図によりわかりやすく解説されている。

会社で鳥インフルエンザにはまっている?人がいるので本が転がっていたので読んでみた。著者の研究の道のりが入っているためにタイトルのインフルエンザというのが薄れてしまっている感がある。けれど、日本ではあまり報道されていないが鳥インフルエンザの危機は着実に広がっており、その規模はわからないがパンデミック(世界的流行)の日は必ずくると思わせられた。

著者の研究の話もおもしろかった。アメリカと日本の文化の違いから、新しい論文を発表したとたんCAIからコンタクトがあったというエピソードや、新しい発見に至る過程など研究を志す人には研究のおもしろさの何たるかが伝わる一冊ではないだろうか。

ヘアスタイル

2006 岩田ユキ, ハロルド松村, 宮野雅之 浅見れいな, 浅見れいな, 山本浩司, アキ, 松尾政寿

 

浅見れいなさんをフィーチャーしたオムニバス。いちおうヘアスタイルというものが意識されていて「おさげの本棚」「アフロアメリカン」「マッシュルーム」という異なる監督による3話。「ストップ・ザ・自分探し」というサブタイトルもつけられているようだ。

映像は「嫌われ松子…」などのスタッフがかかわっているらしくウマい。コンセプトをしらないで見たので、浅見れいなさんがすべてで主演していると気付かなかった。それくらいうまく異なる人格を演じ分けられていた。表情も豊かで、体の動かし方も演じ分けている。それぞれの短編の世界に没入できた。

キッチン

2002 森田芳光 川原亜矢子

 

言わずと知れた吉本ばななの代表作。肉親を失ったみかげが、雄一の家に住まうことになる。不思議な空気感が漂う作品。

原作を読んだのは何年前だろう…。ストーリーはほとんど忘れてしまっていたが、テンポとか技巧的でない映像などが意外によかった。

芸能人とかに疎い私は主人公役の川原亜矢子って名前だけでは現在活躍している人だとはわからなかったが、後で知ってビックリ。