贅沢な骨

2002 行定勲 麻生久美子, 麻生久美子, つぐみ, 永瀬正敏

 

ホテトルをするミヤコと、共同生活をするサキコ。ミヤコはお客の新谷に惹かれるが、新谷はサキコに惹かれる。

うーん。色とか独特な空気がよかった。

ベター・ハーフ

2005 集英社 唯川 恵

 

バブル絶頂期、文彦と永遠子の盛大な結婚式。文彦の浮気相手が控え室の永遠子を刺そうとする。新婚旅行先のハワイから永遠子は不倫相手だった人に電話をかける…。バブル期から2000年にかけて、時代を象徴する事件を織り込みながら、結婚した二人が長い月日と事件を経て夫婦になっていく物語。

ちょっと典型的な事件を強引に主人公夫婦に背負わせた感がある。最近も周りに離婚の話があったが、月日を経て夫婦になっていく人はどのくらいいるのだろう。その前に別れたり、夫婦にならずに共同生活を営み続けたり、そんな感じなのかな。ストーリーとしては目新しさは感じなかった。

レクサスとオリーブの木―グローバリゼーションの正体〈上〉

2000 草思社 トーマス フリードマン, Thomas L. Friedman, 東江 一紀

 

レクサス=グローバリゼーションの象徴。オリーブの木=文明や個々人の文化やアイデンティティの象徴。レクサスとオリーブの木のせめぎあいを、筆者自身が見聞きした小さいエピソードの集合によって描いた作品。相手は中東のインターネットカフェであった若者からグリーンスパンまで様々。筆者のフリードマンは“継続可能な”グローバリゼーションを指向している。グローバリゼーションは貧富の格差を助長するが、最低の生活を底上げすることができるもので、かつ、腐敗した政治などを壊す力もある。しかし、グローバリゼーションによってマクドナルドがどこにでもあるというように、世界が均質化してしまうことはさみしいことで、オリーブの木は必ず必要なものであるとも。いずれにしてもグローバリゼーションは通信技術に裏打ちされているもので、衛星放送、電話、インターネットなどによって相互に情報が行きかうことで人々がより良い外の世界を知ることができるために、それを止めることはできない。

たまたま見つけた黒川清先生が薦めていた本の中に入っていたので遅ればせながら読んでみた。マクドナルドがある国同士は戦争をしない、という直感的に法則を提言があったり面白い。永続的な持続にはセイフティネットが必要だという説は私がグローバリゼーションをイメージしたときには対極にあるものだと思っていたが、そういうものではないらしい。たしかにインターネットを初めとした昨今の著しい通信技術の発達がある限り、グローバリゼーションという世界が相互に接続する仕組みを止めることはできないと思う。エピソードにもあったがグローバリゼーション反対の運動すらもインターネットを通じてグローバルに行われているという状態である。アメリカ文化の流入だけでなくて逆流もあるということだったが、たしかに日本のアニメ文化が世界に広まったりしているし、アメリカ以外の地域との接続による文化の相互作用もある。これは均質化ではなく相互作用だ。これがパクス・グローバリアーノに結びついてくれれば良いと切に願う。

青い春

年度: 2001 国: 日本 公開日: 2002/06/29 松本大洋の人気漫画を「ポルノスター」、「アンチェイン」の豊田利晃が監督、主演は松田龍平。

 

男子校の学園青春映画。不良(死語?)の頭を誰がやるとかやらないとか、希望の持てない未来とか、それに対する憤りとか、基本的に暗いかな…。

映像がいろいろ凝っていた。役者も良いけど、ストーリー的には鬱になるからお勧めはしない…。

パール・バック聖書物語 旧約篇 (1)

1981 社会思想社 パール・バック, 刈田 元司

 

旧約聖書を読みやすくした翻訳本。作者は「大地」のパールバック(大地はカナリお薦め)。アダム、ノアの箱舟、アブラハム、モーゼの出エジプト、ダビデとゴリアテの対決、その後ダビデが王になる、などのエピソードがつづられている。イスラエル、ユダヤ人の歴史がわかる。始めの方は放牧生活を中心としているが、後のほうは国と戦争の話が主になっているような印象。

叔母から「旧約聖書は人類の闘争などの歴史のすべてが書いてある」と以前聞かされたので読んで見たいと思っていたが、やっと簡易版を読むに至った。どうだろう。少なくても簡易版を読んだ限りでは人類の普遍的な大きな流れを感じるとまではいかなかった。けれど旧約聖書そのものだと筋を追いにくいようなイメージがあるが、こちらは普通に物語していてサラサラ読める。

物語の始めの方で「遠方から嫁いで来たリベカはラクダの上から、遠くに夫となるイサクを見とめると、結婚式まで顔が見れないようにベールをした」との記述があったが、この遊牧民族の風習が2000年以上の月日を越えて、今も教会で行われていて日本人が真似をしていると思うと壮大さと滑稽さが入り混じる。出てくることは知っていたがレンズ豆のスープも登場。女性が子供をもうける箇所で「○○が新しい国民を生んだ」みたいな記述が使われていたが、一人の子供が国民になるというスケールのデカさにビビッた。ほかには、、、従わないものをやたらに殺している気がした。モーゼも隣人を殺すべからずみたいな十戒を受けておきながら、一緒に逃げてきたけど十戒に従わない人たちを皆殺しにしている…汗。あと主からの飢えを凌ぐために謎の食物“マナ”が毎朝降ってきた、とあったがこれはいったい何だろう。マナ食べたし。

歴史としてはイスラエル国とユダ国という二つの国に分かれてイスラエル国は滅びた、という過去にはちょっとビックリした。その後、ユダ国も征服されるが、その国民は捕虜になるが彼らをユダヤと呼ぶというのも知った。ユダヤ民族は過去によく捕虜になっているが、どうも占領国の中枢に入って行くのがうまいように感じた。それでいて自分の国を運営するのはあまり得意でないような印象を受けた。いずれにしろ、世界で重要な地位にいるユダヤ民族をもう少し学びたい。旧約聖書はユダヤ教キリスト教イスラム教の聖典なので一度で3度美味しい(?)ので、やはりもう少し詳しい旧約聖書の簡易版をまず読んで、その後にオリジナルかな。

「二人が喋ってる。」「金魚の一生」 犬童一心監督作品集

2004

 

大阪の二人組みの女芸人の会話劇。現在と出会った頃のシーンが交互に折り重なり、離れられない二人の関係を映し出していく。

思ったよりもおもしろかった。大阪の街中で撮影されているが工夫してカメラに気付かれずに撮影できているとのこと。監督というのは撮影方法も考えるものだとわかった。犬童監督は大阪の人だと思ったら違っていた…。

吉本の芸人たちがたくさん登場するがこれも見所の一つかもしれない。夢の中のシーンで歌詞を読み上げるシーンがあるが内容や言い回しが面白かった。

誰がために

2006 日向寺太郎 浅野忠信, 浅野忠信, エリカ, 池脇千鶴, 小池徹平, 眞島秀和, 菊地凛子

 

古びた写真館をとりしきる主人公は、美しい女性と出会い、子供を身ごもり結婚に至る。子供を身ごもった最愛の人は少年に殺される。やり場の無い怒り抑えようとするが…

池脇千鶴さんは主人公の幼馴染という役どころだけど良い良い良い。改めてあの演技が良いと思ったけど、感情を表す微妙な仕草とかが、シーンの切れ目で切れてたりすることがあった気がする…涙。全体としてはなにか空々しいというか、重いテーマのわりに何故か心に迫ってこない…。なぜだろうか人物のディテイルが伝わってこないのだろうか…。

地球 塩の旅

2004 日本経済新聞社 片平 孝

 

世界の塩の生産について写真を中心に紹介している。

塩湖、岩塩鉱山、塩田などが順番に説明されている。なにしろ絶景と呼べるような風景が美しい。シャンデリアまで塩でできた教会、インカの高山にある塩田など興味深い。いろいろ行ってみたいところも多数あった。日本古来の塩の生成についても説明してある。最後に説明されているサハラ砂漠で塩を決死の思いで運ぶキャラバンは胸を打つ。

塩屋さんが書いた塩の本

1990 三水社 松本 永光

 

「伯方の塩」の社長が書いた塩の本。塩の歴史、製造法、活用法、自然塩の普及を目指した起業の顛末なども書かれている。基本的に現在の減塩の流れを否定するなど、全編に渡って塩の効用を賛美している。

歴史の話は世界の塩にまつわるエピソードが書かれていて面白かった。塩田などによる方法が最も原始的な方法だと思っていたが、海藻(カイソウ)に海水をかけて、それを燃やして、かん水(濃い塩水)を作る方法が日本で古来から行われており、百人一首などにも登場するということだった。より効率的な塩田による製法ができたことにより、この製法は行われなくなったが、皇族などはこれを食べていたとか書かれている。この塩を食べてみたい。減塩がより健康的というのは科学的な観点からは微妙らしい。岩塩の色は泥や鉄などの不純物らしい。最も驚いたのは「赤穂の天塩」が(今はわからないが)この本によると中国で科学的に精製された塩化マグネシウム(にがり)を“添加”しているということだった。原料の塩は赤穂の天塩も伯方の塩もメキシコなどの外国の塩だ。これは専売公社時代に海水から塩を精製することが制限されていたから。

今は海水から塩を精製しても良くなったようなのでシママースなどの海水塩を使ってみたいなぁと思った。

ベンゴ

2002 トニー・ガトリフ アントニオ・カナーレス, アントニオ・カナーレス, トマティート, ラ・パケーラ・デ・ヘレス, ベルナルド・パリージャ

 

スペインを舞台にロマ人の主人公にしたストーリーをロマの音楽を中心に描いている。

ロマ人とはいわゆるジプシーと呼ばれている国を持てずに世界に散らばっている民族だ。スリランカで掘っ立て小屋に住んでいるジプシーを見たことがある。以前、ラッチョ・ドロームというロマ音楽の映画を見て、DeepForestなどに使われている曲などが登場して、ロマ由来の切実な内容だということを知って驚くと共に、ロマ人たちの音楽性にひどく感動した。それと同じような映画を探してみたが、結果的に同じ監督だったようだ。スペインのフラメンコなどがロマ人によって演奏されたり歌われたり踊られたりするが、そのエネルギーは心のギリギリまで迫ってくる。その源はやはり歴史の重みなのかもしれない。ぜひ生で体感したいなぁと思う。