世界経済危機 日本の罪と罰

野口 悠紀雄 ダイヤモンド社 2008年12月12日

 

第一章、輸出立国モデル崩壊、小泉改革意味なし。第二章、住宅ローンは分散投資でリスク回避できない、日本は先進的な金融工学を使いきれていない。第三章、日本は米国への輸出で儲けた、住宅への投資はアメリカ文化。第四章、中国、日本、OPECのマネーがアメリカに還流、円安バブルによって日本企業設ける。第五章、食料問題へは輸入自由化が有効。第六章、日本と中国へのダメージは大きい、アメリカの経常収支赤字が縮小しない限り危機は続く。第七章、投資の方法、円高のメリット、産業の転換。

食料自由化をやけに押していた。

日本人と日本文化―対談

1996 中央公論社 司馬 遼太郎, ドナルド・キーン

 

司馬遼太郎氏とドナルド・キーン氏の対談。宗教、美、文学、日本に影響を与えた外国人、いろいろ深く広く語る。

ますらおぶり、たおやめぶり、とかポロっと出てきてわからんかった…。二人ともすごすぎて付いていけない(T T)

日本経済は本当に復活したのか

2006 ダイヤモンド社 野口 悠紀雄

 

第一章、日本の産業は変化していなくて駄目である。第二章、アメリカの産業はすごいのである。第三章、日本式の株の関係が駄目である。第四章、企業の社会的責任とか世迷いごとである。第五章、日本の財界は駄目である。第六章、グーグルとインテルとシスコシステムはすごいのである。第七章、郵政民営化は駄目である。第八章、人口減少は別に良い。第九章、小泉政権は税制を変えなかったから駄目である。第十章、年金を民営化すべし、地方自治とか地方が望んでない、東大もコンピュータサイエンスがないから駄目。第十一章、アイルランドかっこいい、FTAに労働者は反対すべし、農作物の輸入自由化すべし。

またも農作物の輸入自由化。消費税の目的税化の無意味はわかった。しかし、著者は相当グーグルマップに感動したらしい。

閉塞経済―金融資本主義のゆくえ (ちくま新書 (729))

金子 勝 筑摩書房 2008年7月

 

我々にとって、障害者であってもそれが個性である、多様な個性のうちの一つであると思えるかどうかが問われています。そこまで行かないと、本当の意味での豊かな社会、多様で自由で平等な社会にはならない。

1)バブルの経済学
石油エネルギーなどの大きなエネルギー革命がないから、投資機会がなく、バブルが起こる…?バブルを説明している経済学もない。
2)構造改革の経済学
市場は万能ではない。政府主導の国家戦略が必要。
3)格差とインセンティブの経済学
結果の平等と機会の平等はどちらも重要。結果が機会を左右する。インセンティブが医療制度を駄目にしている。「大きな政府」vs「小さな政府」、官vs民、機会の平等vs結果の平等などは成長率を左右していない。

まあ、とうちゃんから薦められた本だから左よりだったけど、至極当然のことが書いてあったようにも思える。

格差社会―何が問題なのか

2006 岩波書店 橘木 俊詔

 

統計によると格差が増加している。母子家庭、単身高齢者、若者。所得格差によって生産性は変わらない。効率性と公平性のトレードオフは両立しない。最低賃金の是正。日本の公的教育支出は世界最低レベル。日本の生活保護基準は厳しいすぎる。税の累進性の低下。逆進性の高い消費税。

兎にも角にも多様性流動性の高い活力ある社会。エントロピーを下げ続けない民族は滅亡する、と思う。

死刑のすべて―元刑務官が明かす

2006 文芸春秋 坂本 敏夫

 

実際の死刑の現場、イメージ。死刑までの過程。死刑囚の立場。構成した死刑囚。裁判で演技する被告。死刑を反対する遺族。法務省キャリア官僚。荒れている刑務所の所長。いろいろな側面から書かれていて興味深かった。

以前「もりのあさがお」を読んだときに買った本。死刑は賛成の立場で読んだ。なんにしろ刑務官の負担が大きい。心の優しい人ほど負荷が大きい。あまりにも悲しい。死刑制度を支えてくださって、本当にありがとうございます。

世界経済入門

2004 岩波書店 西川 潤

 

…「追いつけ追い越せ」というキャッチアップ精神の下にナショナリズムが強調され、国民動員がはかられた。かつて、この精神は軍国主義の土台となった。戦前には、異なる意見は「非国民」としう言葉の前に弾圧された(しかし、最近もイラクでの日本人ボランティアらの拉致事件に際して、同じものの見方が「自己責任」と言葉を変えて、政府高官らから投げかけられたのをみると、いかに、この偏狭なナショナリズムが私たちのメンタリティの底に残っているかを痛感させられる)。…

世界経済の入門書…ってヒドイ説明。

1)21世紀初頭の世界経済
グローバル化と地域化
貿易の流れと自由貿易協定
多国籍企業と海外投資
国際通貨体制と円
2)地球経済の諸要因
世界人口はどうなる?
食糧問題のゆくえ
エネルギーと資源
工業化と公害・環境
3)世界経済の将来と日本
南北問題と地域秩序
グローバル化、軍事化と市民社会
新しい豊かさを求めて-日本の選択

網羅的かつ示唆的で大変良かった。Updateを繰り返しているようなので、次のものもぜひ読みたい。現行の経済体制を指示する立場でなく、世界をもっと鳥瞰している。

死海のほとり

1983 新潮社 遠藤 周作

 

今はキリスト教から離れて久しい主人公がエルサレムを訪れて、イエスの生涯を追うという物語。現在の旅行と、当時イエスに関係した人の物語が交互に語られる構成。「イエスの生涯」と表裏をなす作品とのこと。

遠藤周作のイエス観、ここに極れり、といった感じ。無力で線が細く恐れ怯えるイエスが徹底的に描かれている。以前に「パフォーマーだった」というイエス観を見たことがあるが、どちらかというと、この駄目駄目イエスの方が良い。もしかして、歴史上屈指の「痛い人」だったんじゃないかとも思ってしまうほど。だが、それがいい。