サバがトロより高くなる日 危機に立つ世界の漁業資源

2005 講談社 井田 徹治

 

「私たちの食卓やスーパーの店先にある魚介類を手がかりに、海の環境や漁業資源の問題をたどり、二十一世紀のシーフードとの付き合い方を考えてみようというのが、本書の狙いである」―――「乱獲の実態」「養殖は漁業を救えるか」「不当表示と代用品」「漁業の明日」の4章。データを元に冷静に漁業を分析をしている。

ニュートラルな視点で包括的に漁業を網羅していて良かった。アメリカは戦争とか温暖化とかで、国際的にメチャクチャやっているという印象があったけど、漁業についてはマトモなことに驚いた。むしろ日本がメチャクチャだけど、国際会議でチャンと非を認めてたりもしているらしく、商社ではなく国内漁業の保護を志向しているようなので、ちょっと安心した。

魚によってはある程度の個体数がいないと増えていかないことがあるので、10万匹の魚がいても絶滅に向かっていたりすることがあるらしい。ワシントン条約まで言及されているのには驚いた。

どうも沿岸をコンクリートで固めたりするのも漁獲量に影響しているようだ。これは「犬と鬼」に書かれていたテトラポットを配置すれば儲かる公共事業のせいもあるんじゃないか?

「われわれは、少しばかり欲張ることをやめて、もう少し魚たちに休息期間と休息場所を与えてやるべきではないだろうか、というのが、著者の意見である。そして、もっとシーフードを大切にして、ありがたがって食べようと思う」(あとがきより)

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