名誉と順応―サムライ精神の歴史社会学

2000 NTT出版 池上 英子, 森本 醇

 

本書はルース・ベネディクト女史が作った日本観に真っ向から立ち向かう池上女史による日本文化の再検証した書籍の日本語訳である。サムライの名誉文化の遷移を通して、中世から始まり明治維新に至るまで、膨大な資料に基づき仔細に検証することにより、従属的だと思われがちな日本人の自己意識を分析している。そのサムライの自律性が折にふれて日本を動かすエネルギーの源になっている。この自律性は、社会の安定という背景の中で、何度も危険に晒されているが脈々と生き続けているのだ。また為政者の立場からすれば、名誉文化という資源を使って、サムライたちを飼いならした歴史でもあるという。

日本の歴史をほとんど理解していないアホな私にでも読める素晴らしい書であることは間違いない。しかし、翻訳本ということもあるが、私の頭が悪いせいもあり、独特の日本語が激しく読みにくかった。また引用されている日本研究者がほとんど欧米圏ということが不思議だった。サムライが日本を動かしてきたというのは納得するが、他の90%の民衆はどうなのだろうか。とは言うものの、なぜか私もサムライの行動様式には心震えるものがある。本書にも登場する松陰先生は私の中のヒーローである。葉隠も読みたくなってしまった。けれど、インパクトがあったのはそのような理想的なサムライ像と一線を画す、中世の初期にはサムライが「屠家」として差別的に呼ばれていたこと、自死の形骸化した手順、サムライ=少年のために命を賭けるショタコンというイメージ、などかもしれない。次は「サムライズムの倫理と資本主義の精神」をぜひ書いて欲しい(笑)

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