ウイルス学者の責任 (PHP新書)

2022 PHP研究所 宮沢 孝幸

 宮沢先生はウイルス学の専門家だが、藤井聡先生といっしょにYouTube番組に出られたりしていた。初期の頃から政府の対策に疑問を呈していらっしゃったので、応援する気もあり、買ってみた。

本の構成

 本書は六章立てになっています。一章では国のコロナウイルス政策を批判していて、自身の考えと訴えた施策を説明している。二章ではワクチンの構造や仕組みなどと考え。特に子どもや妊婦に対しての影響を心配している。三章では先生が過去に実際に遭遇したDNAを書き換えるレトロウイルスにまつわる2つの事件に立ち向かった経緯と結果を紹介。猫ではありますが、ワクチンの中にレトロウイルスが入っていたというもので衝撃的です。会社側の不正義について書かれています。四章では自身が関わった今市事件についてです。唯一の物証である猫の毛のミトコンドリアの一致が鍵になっていて、その反証に携わり、国側の不正義を垣間見ます。五章では研究者として大切にしていること、六章ではネイチャーに論文が発表されたりしている自身の研究者としての歴史を語っている。

ポイント ー 世界的な国や会社の不正義

 先生が見つけた試薬の問題を放置する会社やアメリカの機関。日本でも猫のワクチンの問題について農水省は動かない。それで論文にして発表するという手段で対抗している。また今市事件については科学的にありえないことが”科学的に検証された証拠”として検察が提出して、一人の人の人生を左右している。

 統計もそうだが、一般の人が”科学的”というような言葉を聞いたら、自分では検証ができないので信じてしまう。そういうことを国が言い出したら、まずは疑わなくてはいけないのだと改めて思った。

ポイント ー 組織論

 五章では研究室の運営のことも書かれているが、恩師の姿勢などにならったりして自身の方向性も語っている。「ダメだと言われている人を大切にする組織が強い」というのは共感した。ダメな人を排除しようとすると次のダメな人を探してきて、組織として安定性がかける。ダメと言われている人を大切にして、その人にも役割を与えて、組織運営をするのが良いと。いろいろな個性が集まって仕事をするのが良いと至極まっとうなことをおっしゃられていた。

 きっと国とか大きな組織についても同じことが言える気がした。ダメと言われているような人も役割を与えられて幸せに暮らす国が良いのだと思う。国は良い研究でなくて、良い組織を作っている人にお金をもっと投入すべきだと思う。

最後に

 自分の能力を自分のためだけに使う人に対しては正直、残念に思う。長いものに巻かれている人も残念に思う。宮沢先生はそうではない。別のところで「能力のある人はそれを人のために使え」とおっしゃっているのを聞いたし、ご自身でもそれを実践なされていると思う。利他の精神を持った人が増えれば世の中が良くなると思う。そして利他の精神を持った人が多かったからこそ日本が発展したのだと思う。自分もこう有りたいと思う人に出会えてよかったと思う。

 コロナウイルスやmRNAワクチンについて知りたい人や、宮沢先生の歴史について知りたい人にはうってつけの一冊です。

 

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