老けない人の免疫力

2007 青春出版社 安保 徹

 

タミフルの効果は発熱期間を1日短縮するだけ!で、副作用が多いというところから薬の害悪を語り始め、健康法、癌の治療にまで免疫力の見地から分析する。薬いくない!自然治癒!笑う!運動!お風呂!食事!寝る!

縄文食で玄米が出てきたけど、縄文時代に米を食べてたっけ??サプリメントはたくさん発売されているから効くんだ!とか結論していて、ちょっと疑問点があったけど、概ね当たり障りの無くトレンドを捕らえているという印象。まあ、科学的なところを読んで、それ以外は読まなくても良い感じ。

母性社会日本の病理

1997 講談社 河合 隼雄

 

西欧を父性社会と定義し個の倫理が支配するとし、日本を母性社会と定義して、場の倫理が支配するという。日本がかかえる問題の根源は、父性的な個の倫理と、母性的な場の倫理のバランスが悪く、日本は場の倫理、平等を重視しすぎていることだと説く。その後、著者のユングの解説、ユング研究所での日々、日本人の深層心理、浦島太郎伝説の分析へと続く。

心理学、特にフロイトなどの夢分析は性に合わない。ユングもどうも駄目である。西欧との比較による二元論的な日本分析は古めかしく感じた。面白かったのは著者のユング研究所でのイザコザの話と、浦島太郎の話かもしれない。浦島太郎=しまこが40歳で釣りの途中に大亀に会うが、亀は女になったので嫁にして、ともに海に入る。一体、何なのだろうか・・・。

トム・ジョウンズ

岩波書店 フィールディング, 朱牟田 夏雄

 

ロンドンから帰ったオールワージ氏は寝床に入ろうと掛け布団をあげると、赤ん坊が熟睡していた。優しいオールワージ氏はその赤ん坊を保護し育てることになる。この赤ん坊こそがトム・ジョウンズであり、素直でやさしい男子に成長するが、その出生ゆえに時には困難にも出会う。そんなトム・ジョウンズの半生を描いた作品。モーム十選の一つだが、絶版。

モーム十選って面白くなくね?と思っていたところに、別の読書案内の雑誌で丸谷才一氏が薦めていたから読んだ本。ストーリーの進みが遅いし、人物も典型的だし、第一主人公にいまいち人間味が足りなくて感情移入もできない。ただ勉強になったところもいくつかあるので、以下、引用。

「真に賢い善良な人は、人も事物もありのままに受け入れて満足し、その短所に文句も言わねばそれを矯正しようともしないのである。彼らは親戚知友に欠点を認めてもそれを本人に向かっても他人に対してもおくびにも出さず、しかも愛情を減らしもしないでいられるのだ。」

「人間、善良な心と公明な性質だけでは、心中に大きな慰めを感じ誠実な誇りを持つことはあっても、決してそれだけでは世間に通用しないことを彼らは悟るであろう。慎重と細心とはいかに善良な人間にも必要である。この二つは善のいわば護衛兵、これなしでは善もあん如とはしれおられぬ。諸君の意図が、いな、行動が、本質的に善であるというだけでは十分でない。諸君はそれが善と見えるように配慮せねばならぬ。いかに内側が立派でも、同時に美しい外観を保持せねばならない。たえず外観に気をつけるのでなければ、悪意嫉妬の徒が必ずこれにとんでもない濡衣を着せて、その結果は、オールワージほどの叡智善良の士もそれを見透かして内部の美しさを見ぬくことはできない。若い読者諸君は、すべからく座右の銘として、いかなる善人も慎重の原則を無視することはできぬ、また善の権化といえども外観を体裁と世間態の衣で飾らぬかぎり美しく見えぬ、という句を銘記したまえ。」

『私は生まれながらに足りないところがあるとみえて、ほかの人の持つ感覚がないのです。世の中には音や見てくれの喜びを喜ぶ感覚というものがあるにちがいないのに、私にはそれがありません。だってもし世間の人たちが、私が世にもつまらない些事と思うことをやはりつまらないと思うなら、まさかそれを手に入れようとしてああまであくせくしああまで犠牲を払い、またそれを手にすればあんなに意気揚々と得意にはなるまいじゃありませんか。』

日本の誕生

1997 岩波書店 吉田 孝

 

どのように「倭」という国号が「日本」という変わったか?という疑問に端を発して、日本の歴史を周辺国の動きと共に追ってゆく。

読みにくい。結論も良く分からん。
自ら「日本」を名乗り始めたんだ!って言いたいのかな。

恐るべき子供たち

1957 岩波書店 コクトー, 鈴木 力衛

 

「この愛情は、愛情についての知識に先立つものだけに、いっそう彼の心をむしばんだ。それは救いようのない、漠然とした、強烈な苦しみであり、性欲も目的も伴わぬ清浄な欲望であった。」

孤児のエリザベート、ポールは現実と乖離したその世界に浸る。ジェラール、アガートも加わり、愛憎の中で繰り広げられる悲しい物語。

こてこての描写は良いのだけど、その描写ごしにしか物語を感じることができなかったので、感情移入が難しかった。物語そのものは美しいと思うのだけれども。

トコトンやさしいモータの本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)

谷腰 欣司 日刊工業新聞社 2002年5月

 

モータについて、概要、しくみ、種類、選び方、などが包括的に書かれている本。

ちょっと一般的すぎたかもしれない。雑学編でおもしろいものを見つけた。走磁性細菌。北半球の細菌や北極へ、南半球の細菌は南極へ、移動しつづけるのだとか。

異邦人

1954 新潮社 カミュ, 窪田 啓作

 

母の死を悲しまず、翌日に浜辺であった女と関係を結び、太陽のせいと人を殺害する。虚無の世界に生きるムルソーを描いたカミュの代表作。

うーん。あんまり面白くなかった。

音符と昆布

年度: 2008 国: 日本 公開日: 2008/1/26

 

フードコーディネーター・モモは、鼻に障害があり、匂いを感じない。そんなモモに今まで聞かされていなかった姉・かりんが訪ねてくる。挙動不審のかりんはアスペルガー症候群だという。二人は何かを共有することができるのだろうか。

池脇千鶴さんファンなのでマイナスなことはあまり書きたくはないが、これはちょっと悲しかった。安っぽい演出は高級魚を化学調味料で調理しているような感じさえした。予算の都合か日程の都合だったのだろうか、残念な内容である。