大日本・満洲帝国の遺産 (興亡の世界史 18)

2010 講談社 姜 尚中,玄 武岩

 少しづつ読み進めている興亡の世界史の中に近代日本を扱ったものがあったので手にとった。満州帝国とその中でつながってくる岸信介氏と朴正煕氏に焦点を当てて解説している。

 折しも孫の安倍晋三氏が銃殺されたのもあり、その祖父を知ることは意味がある。私は消費税を上げた安倍政権にはかなり否定的である。本書の著者たちも韓国系の方々であり大日本帝国を否定的に描いていし、それを率いていた岸信介を否定的に描こうとしているが、私は岸信介に否定的な印象は受けなかったのが正直なところである。

本の構成

 岸信介と朴正煕の生い立ちから始まる。清朝滅亡後に張作霖が日本の支援を受けながら満州は実行支配していたが、張作霖が殺されてしまい。息子の張学良に引き継がれるが彼は国民政府に、(TODO)、をしてしまう。満州を支配したい日本政府は1931年に満洲事変を起こして満州国を建国する。満州国建国の前から日本人を移住させようと夏目漱石に紀行を書かせたりして宣伝するがうまく行かず、植民地の韓国から満州国を成功する土地として移住者を募る。そして朴正煕も軍にはいるため満州国へ移住する。
 建国された満州国は立憲共和制の国だったものの日本の傀儡国であり、日本の官僚たちが送り込まれる。その中の産業部次長に岸信介が名を連ねる。そこで彼は宮崎正義からの着想を経て国家社会主義の実験を主導していく。そして戦後、岸は満州で行った国家社会主義を日本で実行していき、高い経済成長を実現する。
 一方で朴正煕は大統領になり独裁方向に傾いていくが、満州国を真似た国家社会主義や重工業への移行を成し遂げていく。

 どうも話の流れが追いにくいようにも感じた。誰しもが知っているだろうと著者が思うことについてはスッポリと抜けていて、突然に戦後に飛んでいたりする。岸信介が書いた文章などの紹介も多いのでそこは興味深いが初学者へも少し配慮があって良い気がした。

気になったポイント1 国家主導

 満州国での岸信介は国家社会主義の実験を行った。特殊会社法による満州に一業一社の特殊会社を作るとともに、資本を確保するために満州重工業開発株式会社を作るために裏で辣腕を奮ったのが岸信介だった。そして戦後に生き残った彼は、日本で保守合同を経て政権を取り「新長期経済政策」(1957年)を掲げる。それは池田内閣の「所得倍増計画」につながっている。岸は自由化の外圧に巧みに対応しながら、統制を温存してGDP12%の伸びを実現した。

 岸信介はCIAの工作員だったと記録も残っているが、国家社会主義によって日本の高度経済成長の基礎を作り出したというのは知らなかった。これはアメリカには特にプラスになっていないようにも感じるが、どういうことを命令されていたのかは気になるところである。この国家社会主義は今は日本では自由主義によって破壊されているが、特に中国では適用されて発展を支えている。この当時の国家社会主義については宮崎正義の研究があるようなので、勉強していきたい。

気になったポイント2 韓国と満州国の関係

 日本は韓国の経営はうまくできていなかったのか、新天地を求めて韓国全土から満州への移住者が増加していっている。満州での韓国人への圧迫も問題になっている。それもあってか満州国では日本・朝鮮・漢・満州・蒙古の五族融和が掲げられているが、建国で安定してさらに移住者が増加している。

 なぜ韓国の経営がうまく行っていなかったは気になる点である。台湾では日本人が祀られていたりするほど、(全てとは言わないが)一部では慕われていることもある。韓国人の反日はもちろん民族独立の道具として使われているのもあるとは思うが、こういう経営の失敗もあるようにも感じた。このあたりの事情はもう少し知りたいところである。

最後に

 全体的な感想としては、申し訳ないがとにかく読みにくい。何か文章に凄みをだそうとしているのか、鬼胎などのパワーワードが頻出したり、鉤括弧が多用されていたり、「人口に膾炙する」とか2連続で出てきたりしていた。構成ももう少し工夫してほしかったが、何とかそこに耐えられれば岸信介の業績を知ることができるのは良いと思った。朴正煕についてはあまり知識も興味もなかったので、さらっと流してしまったが、知りたい人にとっては有意義な書籍だと思う。

 岸信介が日本再建連盟で出していた5大政策は、真の独立、反共産主義、米アジアとの経済・通商強化、地方復興と中小企業の育成、憲法の改正。憲法の改正についてはどう改正するのかが重要だが、他は特に異論がなく、現在の日本で実行してほしい政策である。このようなことができる政党が出てきてくれることを祈りたい。もちろん祈っているだけでなくて、政治に積極的に関わることは大切だし、投票を超えてボランティアなどもがんばりたい!

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