船を編む

2013 松竹 石井裕也

 大好きな映画でこれまで何度も見ている。何か俗世から離れたような辞書編集の雰囲気がスキなのか、あのひたむきに物事を突き詰めていく主人公たちの様子がスキなのか。とにかく好きである。

登場人物

 マジメ(松田龍平)は大学院で言語学を専攻するが、玄武書房の営業部に配属になる。ひょんなことから辞書編集部に異動になり、辞書編集に打ち込むようになる。かぐや(宮崎あおい)はマジメが住んでいる早雲荘の大家さんの孫娘で板前。早雲荘に住むようになる。

物語の始まり

 玄武書房の辞書編集部に人が足りなくなり、辞書編集部の荒木と西岡は適当な人材がいないか営業部に探しに行く。とても営業には合っていなさそうなマジメが実は言語感覚が優れている事がわかり、ヘッドハンティングされる。マジメは辞書編集部の人たちの辞書づくりに対する真摯な思いを受け止め、「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味がこめられた中型百科事典『大渡海』の編集に打ち込んでいく。

テーマ

 テーマは言葉ではあるが、長い時間に渡り言葉と向き合い人生をかけて一つの仕事に真摯に打ち込んでいく姿も描き出されている。何か物を作り出すというのは魂を削る仕事だと思う。辞書にも作成そのものだけでなく様々な周辺の業務を通じて多くの人々の魂が込められている。

最後に

 朴訥としたマジメさんが好きでもあるし、なにげに熱い荒木さんも好きだ。西岡さんもいいし、かぐやさんの透明感も良い。家のシーンも良いし、居酒屋のシーン、編集室のシーン、料亭のシーン、辞書の紙を触るシーン、荒木の家のシーン。好きな映画はどこを切り取っても良い。思えば俳優陣もみんな好きだ。松田龍平さんと池脇千鶴さんは超絶好きだ。宮崎あおいさん、オダギリジョーさんも好きだし、才気あふれる黒木華さんまでも出ている豪華キャスト。熱くてしっとりとした良作はこちらです!ぜひ御覧ください!

 

イコライザー2

2018 ソニー・ピクチャーズ アントワ・フークア

 イコライザー1が面白かったので、2を探していたがつにネトフリで見つけたので即みてしまった。うーん、1の方が壮大でいいかな。けど2も面白かった。

登場人物

 ロバートは元CIAの工作員だが、引退して個人タクシーを営みながら悪事を働く人を罰して働いている。普段の趣味は読書で表向きは平穏に暮らしている。

物語の始まり

 ロバートは変装して列車に乗っている。近くの男が立ち上がったのに合わせて、ロバートも立ち上がってついていく。食堂車でロバートは男と話し、自分の娘の誘拐に携わっていることをやめるように言うが手下を使って実力行使してくるので、すべての手下を数秒で仕留める。

テーマ

 世の中には不正が溢れている。悪に染まるな、かならず裁かれる、ということだろうか。ロバートは小さな問題・不正を一つ一つ潰してくれている。一方でロバートの範囲の悪が裁かれたりするが、世の中にある悪すべてには物理的に対応できない。何かもっと大きな国家レベルの悪は野放しにされている気がする。そういうのは一人の力ではどうにもならないのかも。

最後に

 身近な弱きに寄り添うロバートがカッコいいのは間違いないが、趣味が読書というところがまた深みがある。憧れのヒーローである。3も出るらしいので楽しみである。
 ちょっと残虐なところもあるけど弱きを助けるヒーローを見たい人にはおすすめです!男性ウケするヒーローなのではないかと思う。

ジョゼと虎と魚たち

2020 松竹 タムラコータロー

 実写映画を見て、田辺聖子の短編も読んだ大好き大好きな話だが、アニメ化されたと聞いて映像もきれいだったので映画館に見に行った。実写映画とはまったく違う脚本でまた別な方面から考えさせる映画になっていて、素晴らしかった!

登場人物

 恒夫は海洋生物学を専攻する22歳の大学4年生。幼少の頃、メキシコの海のみに生息する「クラリオンエンゼル」を近所のアクアショップで見かけて以来、その群れを自分の目で見ることを夢に抱いている。通称ジョゼは幼いころから車椅子生活を送り、現在は祖母と二人暮らし。外は危ないと外出はさせてもらえず日中のほとんどを家で過ごして、自室で様々な絵を描いている。

物語の始まり

 ある夜のバイト帰りに坂道を猛スピードで下ってくる車椅子の女性、ジョゼを助ける。そのまま家まで送ってくると高額なバイト料を提示されて、ジョゼの相手をするように依頼された恒夫は留学費用のためにアルバイトとして通うようになる。ジョゼの可愛らしい容姿とは裏腹な高飛車な言動に翻弄され、アルバイトを辞めようとする。しかし一緒に様々な場所を訪れるうちにジョゼのことを理解していく。

テーマ

 一番ハイライトされていたのはハンディーキャップを持つ人への偏見や限界や可能性と感じた。いろいろな制約を課される中でできることもあるのかもしれない。けれど、自分がそのような状態に陥ったときに希望をもって前を向いて行けるかは、非常に難しい問題だということを胸元まで突きつけられた。

 もう一つは世界の美しさ・面白さというのだろうか。ジョゼは恒夫といっしょに町に出るようになるが様々なものを初めて体験し子供のように感動する。それが感動的なのだ。私達が何気なく見逃している風景などは何度も見ていたりもう一度見ることができると思っているからかもしれない。それを初めて見たり二度と見れないものだとしたら物の見え方は変わるだろう。

最後に

 映像も美しいし涙なくして見ることができないし、実写版と同じように今後の人生で何度も見返す映画だと思う。実写版を見た人にもおすすめできるし、制約を課される人にも一度自らを省みる機会を与えてくれる映画かもしれない。とにかくおすすめです!

君の膵臓をたべたい

2017 東宝 月川翔

 なんとなく見たが切ない物語が良かった。浜辺美波さんがキレイだった。

登場人物

 主人公の「僕」は友人や恋人などの関わり合いを必要とせず、人間関係を自己完結する。さくらは天真爛漫で積極的であるが、不治の病にかかって余命が幾ばくもない。

物語の始まり

 母校で国語教師になった「僕」(小栗旬)は、老朽化により閉鎖が決まった図書館の蔵書整理を任され、図書委員と一緒に作業をしていました。教え子と話す中で、かつて1人の少女・桜良(浜辺美波)と過ごした日々を回想する。
 学生時代に主人公である「」(北村匠海)は病院で偶然「共病文庫」というタイトルの本を拾う。その本はクラスメイトである桜良がつづっていた秘密の日記帳で、彼女は膵臓の病気により長く生きられないことが書かれていた。秘密を知った「僕」は桜良に死ぬまでにやりたいことを一つづつやっていくことに付き合うことになる。

テーマ

 人に想いを伝えるなら早いほうがいい。一方で時空を超えて届く想いもある。生きるということは人との関わりの輝きと煩わしさに交わって生きるということなのかもしれない。

最後に

 匠海さんはカッコいいし、美波さんもキレイ。とりあえずこの二人を見ているだけどもハッピーになるが、切ない物語の最後の余韻もたまらない。切ない青春映画が好きな人にはおすすめです!

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

2018 ビターズ・エンド 湯浅弘章

印象的なタイトルで娘と見た。

登場人物

大島志乃は高校1年生の女子。人前で母音で始まる言葉を発しにくくなる症状を抱えている。加代は名前が言えない志乃を笑わずに接してくれたクラスメイト。音楽好き。

物語の始まり

初めて高校に登校する。生徒がひとりずつ自己紹介をしていく。苦手な自己紹介。自分の番が迫ってくる。自分の番になって必死になって何とか立ち上がる。話そうとしてもどうしてもうまくいかない。自分の名前が言えない。。。

テーマ

自分の弱点やコンプレックスと向き合っていく。弱点を馬鹿にしない友達。なんだろう、勇気の話だと思う。

最後に

自分も弱点を抱えて生きている気がする。誰しも多かれ少なかれあるかもしれない。人を受けれるのと同じくらい自分を受け入れるのは難しい。必要なのは勇気なのかもしれない。そんな勇気づけられた映画だった。受け入れる勇気、大きな勇気。そんな勇気が欲しい人にはおすすめの映画です!

響 -HIBIKI-

2018 東宝 月川翔

何気なく見た。

登場人物

鮎喰響は本好きの人を寄せ付けないような少女。高校に進学するが、冬休みの時間をかけて小説を書き新人賞に応募する。花井ふみは文芸誌編集者で響の小説原稿を受け取る。祖父江凛夏は文芸部の先輩。

物語の始まり

花井ふみは新人賞の担当だが、送られてきた「お伽の庭」の原稿を読み感動する。しかし宛名も住所もなかったが、応募要項に沿わすために急ぎ自分たちで電子化する。響は高校に進学するが部活に所属する必要があり、文芸部に入ろうとする。部室に行くと、不良たちがたむろしている。響きは構わず入りたい旨を伝えるが、不良と衝突し、指を折る。また文芸部先輩の凛夏とも衝突するが、依頼した響の短編を読んでその才能に気付く。

テーマ

文芸という世界。夢に向かって努力する人たち。響の文芸に対する天性の才能と、血の滲むような努力をする人たちの対比。

最後に

平手さんの雰囲気が良いのかなんとも好きになった。文芸の熾烈な戦いも伝わってきた。やっぱり夢に向かって地を這うような努力をしている人たちが良いのか。小説自体は出てきていないのに深い深い小説なんだというのが伝わってきたのが不思議な体験だった。これは演出が素晴らしいのか。後から気付いたけど、映画と漫画は違うようだったので、ぜひ漫画を読みたい!文芸の世界を垣間見たい人はぜひ見てみてください。

マネー・ショート 華麗なる大逆転 (原題: The Big Short)

2015 パラマウント映画 アダム・マッケイ

登場人物

マイケル・バーリは元医者でファンドマネージャー。かなり変わり者である。マーク・バウムは世の中の矛盾や不正を暴くのが好き。ジャレド・ベネットはドイツ銀行の社員。住宅市場には懐疑的。

物語の始まり

マイケルは住宅ローンをまとめた債権に問題があることを見抜く。空売りをしようとするが相手を探すなかでゴールドマンサックスやドイツ銀行などが受けいれてくれる。売った方は笑いが止まらない。総額13億ドル。マークは間違い電話からマイケルの動きを感知する。ドイツ銀行のジャレドを尋ねて、住宅ローンは破綻寸前という分析を披露され債権の空売りの売り込みを受ける。マークは大急いで住宅市場を調べ始める。実際に貸し手と借り手に話を聞いてバブルだと確信する。また独自にこの市場に辿り着いた若手個人投資家もつらなる。しかし、誰もいつ住宅市場が破綻するかは分からない。。。

テーマ

嘘だらけの金融市場。市場は真実に収束する。曇りなき眼で真実を見通す力がいる。また耐える力。

最後に

住宅市場の結末を知っている私たちでも手に汗握る。当事者はどんな感じだったのだろう。資料から真実に辿り着く人や、現場から真実に辿り着く人など、様々。とにかく事実がベースとなっているのでおもしろい。投資をしている人はぜひ見て欲しいかも。

クレイマー、クレイマー (原題: Kramer vs. Kramer)

1979 コロンビア ピクチャーズ ロバート・ベントン

名作なのでみた。さすが名作。父子家庭をテーマにした物語。

登場人物

テッドはニューヨークで働くサラリーマン。仕事一筋で生きてきた。妻のジョアンナは家事と子育てを一手に引き受けている。

物語の始まり

ジョアンナは何か自分が打ち込める仕事をしたいと夫テッドに相談を持ちかけるが、向かい合わない。ジョアンナはテッドに別れを告げてきた。テッドは冗談だと思っていた。翌日会社から自宅に電話をかけても誰も出ない。その日からテッドの生活は一変し、5歳の息子ビリーと父子二人きりの生活を始めるが、テッドは以前と同じようにはとても働けないことに気づいていく…。

テーマ

結婚がテーマの気もするが、結婚生活はほとんど出てこない。むしろ、テッドと息子との一変した父子家庭の生活がテーマ。父子生活の大変さもテーマだが、子供と向き合うことの楽しさにもフォーカスしている。

最後に

子育てをすると、子供というのはもちろん大変さもあるけど、楽しい。新しく成長していく人間と接するのは幸福なことだとも思う。仕事に打ち込みすぎなお父さんにはぜひ見てほしい!Happy wife, Happy life.という言葉あるが、子供も入れて、Happy family, Happy life.だと思う。

ソルト (原題:Salt)

2010 コロンビア ピクチャーズ フィリップ・ノイス

アンジェリーナジョリーに惹かれてみた。

登場人物

ソルトはCIAに所属する女性諜報員であり北朝鮮に拘束される。夫のマイクの熱心な保釈に向けた活動により、捕虜交換という形で釈放される。テッドはソルトのCIAの上司。

物語の始まり

ソルトの夫であるマイクの誕生日に突然、ロシアからの亡命者オルロフがCIAに出頭する。ソルトが尋問するとオルロフは、幼少期から特殊な訓練を受けたロシアのスパイがアメリカに潜入していることを話し始める。そのスパイの一人がアメリカ副大統領の葬儀でそこに出席するロシア大統領を暗殺すると話し、そのスパイの名は「イヴリン・ソルト」であると告げる。
 尋問を聞いていたCIA防諜部の人はソルトが二重スパイではないかと疑うが、ソルトや上司のテッドは否定する。家にいるはずの夫マイクと連絡がつかないことが分かった彼女は、マイクの安否を確認するために自らもCIAから逃走を始める。

テーマ

愛と復讐ではないだろうか。夫マイクへの愛がソルトに新しい生きる意味を与えた。

最後に

残忍さも少しあるスパイ映画だが、逃走劇は手に汗握る。ソルト役のアンジェリーナ・ジョリーのアクションも見どころ。現実から逃避したくて、熱くて息つく暇もないアクションを見たい人にはおすすめです!

ワンダー 君は太陽 (原題: Wonder)

2017 ライオンズゲート スティーブン・チョボスキー

ネトフリにあったから見てみた。

登場人物

オギーは顔の形が変形している病気で、27回の手術を受けている。小学5年生になり容態が安定して学校に通うようになる。ジャック・ウィルは差別なく接してくれる。ジュリアンは大人にはいい顔をする、いじめっこ。

物語の始まり

オギーは親が心配するなか、中等部に転入する。オギーの顔を見たクラスメートは予想通りの微妙な反応をする。学内を案内してもらう。ジャック・ウィルはフェアに接してくれるが、ジュリアンは優しくないとわかり、やりかえす。家に帰ると両親から学校のことを聞かれる。母イザベルはジュリアンを許してやれという、一方、父ネートはやられたらやり返せという。それでもオギーは学校に行きたいと言って両親を驚かす。しかし、授業で頭角を表すようになると、いじめられるようになる、、、

テーマ

人と違いこととはどんなことか。多様性を受け入れるというのはどんなことか。病気を持つ人がいる家族はどんなのか。

最後に

人ななぜか違うものを排除しようとする。それはDNAレベルでそれを望んでいることだからなのか。人が集団の団結を維持するために発達してきた機能なのか。しかしそのDNAは現代でも必要なのだろうか。今は人の気持ちや命を何とも思わないで金儲けしようとしようとするような輩を本能的に排除するべきだと思う。違いことを受け入れる世の中になるように多くの人に見てもらいたい!