知の技法―東京大学教養学部「基礎演習」テキスト

1994 東京大学出版会 小林 康夫, 船曳 建夫

 

東京大学教養学部文系1年必修科目「基礎演習」のサブ・テキストとして編集された本。制度化された領域を超えて、全ての「学」に共通する技術・作法としての「知の技法」を習得させる1つの試み。2,3年という短いスパンで使える教科書を目指したと書いてあった気がする。

不得意なところは飛ばして、ざっと読んだ。某所にあとがきが面白いと書いてあったので、もう一度よまないと駄目かもしれん。

Web開発者のための]大規模サービス技術入門 ―データ構造、メモリ、OS、DB、サーバ/インフラ (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

伊藤 直也, 田中 慎司 技術評論社 2010年7月7日

 

「筆者がはてなに入ったころは、どちらかというとはてなは理論よりも実践側に強い会社でした。強いというか、そこでやっていた。Webアプリケーション開発のセオリーをフレームワークにして、とにかく早く少ない工数でWebアプリケーションを作ることに長けてたし、またベンチャーの機動力を生かして新しいテクニックやオープンソースの実装をどんどん取り込んでいってその規模を拡大していきました。
しかし、サービスがヒットして一つ一つの問題が大きくなってくるにつれて、そのようなノウハウが通用しなくなってくる。つまり、課題が本質的になるにつれ、小手先のテクニックでは解決できなくなっていったわけです。そこで必要だったのは、新しい技術やノウハウではなく、ときに古典的だけれども本質的な理論だったというわけです。」

はてなのインターンシップの授業を元にした大規模なWebサービスの技術入門。OSやハードの視点からのパフォーマンスの考察、圧縮などのアルゴリズムなどの理論的な話から、実際に使用しているアプリ、サーバの構成、クラウドの使用まで、事細かにはてなの技術を紹介している。Webサービスになじみのない人にも読める良書。

少なくともWebサービスに疎い私にとってはいろいろは発見がある素晴らしい本だった。はじめはチームマネージメントなどの話から始まったため、どうなることかと心配になったが、読み進めるにつれて、実践的でかつ理論的でビジネス的な視点もある奥深い内容に驚いた。メモリリーク対策に仮想OSの自動再起動を使っているというのはビジネス的な視点も含めて、興味深かった。小さいサービスから始まり、試行錯誤で技術基盤を築いていっている姿勢には好感が持てた。
日本はソフトが弱い。その弱さが今のGoogleやAmazon、Facebook、Twitterにしてやられている状況を生んでいると思う。Googleすごい!じゃなくて、Googleの次は何か?を真剣に悩みたい。

Effective C++ 原著第3版

2006 ピアソン・エデュケーション スコット・メイヤーズ, 小林 健一郎

 

C++でプログラムを書く上での55のガイドライン。

かなり難解な分類に属する本で、読むのにかなりの時間を要した。内容はC++の奥の奥まで踏み込んでいて、知らなかったことに多く出会えた。今までまともにC++のプログラムを書いていた風に振舞っていた私はなんだったのだろうと思った。

また、その素晴らしい内容と対照的に、このような55あるガイドラインを守らないと普通に動かないC++言語の限界を感じた。やはりJavaなどに比べるとC++は成功した言語とはいえないと感じる。

悪について

1965 紀伊國屋書店 エーリッヒ・フロム, 鈴木 重吉

1965 紀伊國屋書店 エーリッヒ・フロム, 鈴木 重吉

 

「防衛という名をかりない侵略戦争は、ほとんど例がない。防衛を正しく主張した者は誰かという問題は、一般に勝者によって決められたり、またはずっと後になってはじめて客観的に歴史家が決定することもある。」

「復讐の動因は、集団または個人のもつその強さと生産性とに反比例する。無能な者や不具者は自尊心が傷つけられたり砕かれると、その回復の手段として頼れるものはただひとつしかない。つまり「眼には眼を」というたとえのように復讐することだけである。一方、生産的に生きている人にはそういう必要はほとんどない。たとえ傷つけられ、侮辱され、損害を与えられても、生産的に暮らしている過程そのものが過去の傷を忘れさせる。生み出す能力というもおは、復讐の欲求よりも強いことが分かる。」

フロムによるフロイトの理論をベースとした人間分析。決定論に飲まれるのが「悪」。その反対が「自由」。悪に退行・衰退していく過程を、ネクロフィリア、(集団の)ナルチシズム、近親相姦的強制という3つのオリエンテーションの視点から分析する。

個人的にはフロムの決定論からの脱却のための自由は支持するけれど、フロイトのボキャブラリーで語るのに限界があると思う。「ネクロフィラス」->物質主義・産業主義、「ナルチシズム」->集団が持つ主義への陶酔、「近親相姦的なきずな」->血族・種族・家族への結合欲。ちょっと無理やりすぎるんじゃないか?それにこの3つで説明しきれるの?まず肛門リビドーとか出てきた時点で、すんなり納得できなくなってくる。ともあれ、他の人道主義の方々もお勉強する予定。

潮騒

1955 新潮社 三島 由紀夫

 

伊勢湾を見渡す小さな歌島で暮らす新冶と初江の恋の物語。

内容を知らずに読んだので、何が起こるかとドキドキしていたが、普通に青春小説として終了したので驚いた。ひさしぶりに爽やかな小説を読めてうれしかった。

破戒 (1954年)

新潮社 島崎 藤村

 

被差別部落出身の丑松が自分の中に芽生える想い、父の戒め、社会の狭間で、人生を考える。島崎藤村の代表作。

なんかイメージよりも淡々としていて、そんなにドラマチックでもない。典型的で新しい発見がなかったかもしれない。