アレクサンダー大王―未完の世界帝国

1991 創元社 ピエール ブリアン, 福田 素子, 桜井 万里子

 

カラーの絵や写真もちりばめてアレクサンダーの偉業を解説した書籍。歴史的意義にも触れている。

アレキサンダーがものすごいスピードで征服できたのは、天才的な戦術もあったのだろうが、ダレイオスが治めていたペルシャのリソース・インフラがあったからだと感じた。またそのリソース・インフラを使ったからこそ簡単に滅びたのだと思う。

さらに注目すべきは「アレキサンダーと近代植民地主義」の項だろう。なぜ彼がこんなにメジャーかがはっきりする。

「19世紀半ば以降、アレキサンダーが成しとげた業績は、中等教育を受ける生徒の教材として取り上げられるようになった。当時の教科書において一貫して強調されているのは、ヨーロッパ以外の国々に工業文明をもたらした植民地制服の積極的な面だった。平和、諸民族間の融和、都市化と商業の進展、ヨーロッパからの文化モデルの伝播など。それらは、ヘレニズム時代からローマ時代にかけてプルタルコスや他の多くの作家たちが述べてきた決まり文句の、陳腐な繰り返しにすぎない。」

「教科書の執筆者たちは、古代の作家たちの記述にあるアレキサンダーの性格のかんばしくない面を、目立たないように隠したり、さらに否定してしまう傾向があった。同時代の政治家や文筆家(ナポレオン、モンテスキュー)の判断が、しばしばその拠り所として持ち出された。」

「神父はアレクサンダーの制服に見いだした「科学的」意義を強調するのである。以後多くの作家たちが、躊躇なくこのアレクサンダーの制服を「発見の旅」に仕立て直すことになる。これはR・ドマンジョンの主導のものに作り上げられた「植民地地理」のきわめて特徴的な視点である。」

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