2007 幻冬舎 小松 正之
「トロが食べられなくなるだけで済むなら、まだマシだ。」「このまま事態が悪化すれば、国内の漁業生産量はかぎりなくゼロに近づいていくだろう。」
著者は水産庁を経て、水産総合研究所センターに在職。政府側から水産を見ている人だ。日本は国内事情にあった漁業体制を築けなかったため、漁業が衰えている。90%以上が外国産。そしてその外国産は激しい争奪戦にさらされている。マグロにかぎらず、エビもサケも日本に回ってこなくなる恐れは十分にある。漁業の生産と消費の両面から考える必要がある。というのが著者のスタンスだ。
75%以上はもう獲ってはいけない魚。また魚はかなり割高な贅沢品である。日本でもマグロの刺身や寿司を誰もが日常的に食べれるようになったのはごく最近にすぎない。魚を食べることが発展途上国ではステイタスシンボルになっているということ。
安全性の話としては地中海産の魚は国内産の10倍のダイオキシンを含んでいる。日本で養殖された魚も外国産のエサを使っているが輸送のために日本で使用禁止になっている農薬なども使われているらしい。
行政の問題としてはほとんど使われなくなった漁港などの整備に予算が当てられている。けれど外国に比べて漁船や漁港の設備は貧弱で、それが漁師離れを起こしている原因にもなっているとのこと。予算の3分の2は公共事業だと。「犬と鬼」のテトラポッドにも触れられていた。行政の人だから読んでいるっぽい。漁業権が既得権益化していることも問題。TACなど含めてノルウェーなどが持っている漁業戦略が日本には欠落しているとのこと。
漁獲量には周期があり、90年代前半まで日本近海で獲れていたマイワシ、マサバが獲れなくなり、いまはゴマサバ、サンマが獲れるとのこと。しかしサンマは科学に基づかない国の規制によって大量に獲れない。アホ。
クジラについては面白かった。まずイルカとクジラの生物的な違いって大きさだけなのだそうな…。捕っちゃまずいクジラも何種類かいるが今はマッコウクジラやミンククジラは健全だということ。またクジラの資源が悪化したのは、アメリカが鯨油ほしさに乱獲したのが原因だって。著者はミンククジラのことを「海のゴキブリ」と呼ぶそうな。もう科学的なところでは国際的に争うべきところがない、という。
「今、マグロがそうなっているように、世界の人々がクジラを食べ始めれば、資源の争奪戦が始まる。いや、それより何よりいちばん深刻なのは、またしてもクジラの資源が脅かされるようになることだ。なにしろ欧米諸国には、鯨油のためにクジラを乱獲し、絶滅させかけたという『前科』がある。そういう人々が、これまでの主義主張を翻してクジラを食べる側にまわり、エゴを剥き出しにすれば、再び過ちを繰り返さないとも限らない(中略)日本としてはあくまでクジラをいかに『持続利用』すべきかを考え、そのために必要な情報を発信しながら冷静に議論を進めていくべきだ。その議論を先頭になってリードしていくだけの知識や経験が日本にはある。」
クジラに対しては何か罪悪感を感じていたが、プロパガンダかも。サンマ、ゴマサバを食べましょー。