白鯨〈上,下巻〉 (1952年)

1952 新潮社 田中 西二郎

 

捕鯨船の船長エイハブは、彼の足をとった宿敵、白鯨モービーディックを追って航海を続ける。

小説だと思って読み始めたためか、途中、大変厳しかった。最後の数章は物語的にも面白かった。訳注を追いながら、ゆっくりと読めばよいのかもしれない。あとがきを読んで笑ってしまった。

「つまりこの小説の構成は、最初の導入部と最後の急端のような事件の展開とを除くと、中間の六十五章というものは、作者はこの物語の選ばれた情況、つあり海について、捕鯨業について、捕鯨船の構造と要員と貯蔵品について、鯨の分類について、鯨に関する人類の伝説と歴史について、鯨美術について、それから捕鯨ボートの構造、装備について、追撃の方法について、捕らえた鯨の処理の手続きについて、鯨が船側に横づけになるとその解剖学を頭から尾に至るまでしらべ、そこから脱線して考古学上の鯨について-つまり実地の経験と文献の知識とを総動員したお喋りが続くのであって、この間、物語の進展には少しも関係のない論文(?)の形をとった章が実に三十五の多きにのぼり、またほぼ論文に近い内容の章が他に九章を数える。」

つまり、ほとんど鯨にまつわる論文である。けど、(その論文をほとんど読み飛ばしたが)知らなかったものもあった。一頭のオスと複数のメスという集団で行動しているという点は常識なのかもしれないが極めて哺乳類的で興味深かった。あとは某書で批判していた「捕鯨で鯨の生態に壊滅的なダメージを与えたのは他でもない西欧圏だ」ということを十分に裏付ける。まさに鯨油のための乱獲の描写であった。

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