世界経済を破綻させる23の嘘

ハジュン・チャン 徳間書店 2010年11月19日

 

「史上最もウイットに富む経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスはかつて『経済学は経済学者の就職口として大いに役立っている』と言った。もちろんこれは誇張ではあるが、当たらずとも遠からず、ではないだろうか。経済学者というのはどうやら、現実世界の経済運営にはあまり適していないようだ。
いや、実際にはそれどころではない。経済学が現実の経済をすっかり害してしまう場合もある、と考えざるを得ない理由がいろいろあるのだ。」

ケンブリッジ大学で経済を教えるハジュン・チャン氏による自由市場資本主義への批判。23のテーマに分けて、難しい数字などはほとんど登場せず例をとり分かりやすく説明されている。

全体的に自分が感じている方向と一致していて読んでいて気持ちよかった。インターネットのインパクトを通信速度だけで比較しているところは少しいただけなかった。それでもインターネットは洗濯機よりも社会的なインパクトが低いというのは納得。マイクロクレジットの裏や失敗は知らなかったため、勉強になった。

物理学では一神教徒がビッグバンを証明するためにいろいろな仮説と理論をこねくり回しても、ほとんど無害だけど、経済学では経済学者が自分の信念から出てきた仮説や理論を適用する場所があるから問題なんだろうか。

特に良かった点は著者が韓国人なので、知らなかった韓国の状況は描かれていたこと。
―民族浄化をしたルワンダは民族的・言語的に韓国に近い。
―世界に投資対象と見なされなかったPOSCO。
―LGは望んでいた繊維産業への参入を政府に阻まれ、強制的に電線産業に参入させられた。
―韓国政府は現代グループに凄まじい圧力をかけて造船所を作らせた。
―韓国の労働市場は柔軟性が高すぎるため、成績優秀者の80%が医学部を進学を望んでいた。
―韓国人は「中国人より儒者」「ロシア人より共産主義」「日本人より国家資本主義」そして現在「アメリカ人より新自由主義」

韓国が極に走ってしまうという傾向があるのは、なんか日頃から感じるところ。とりあえず国家がつぶれないようにハジュン・チャン氏にがんばってもらいたい。

ファミリーゲーム

1999 エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ ナット・キング・コール, ラビン・スプーンフル, ラーズ, 少年ナイフ, ボブ・カリール, リンダ・ロンシュタット

サマースクールで出会ったハリーとアニー。二人はお互いが自身にそっくりだと気づき驚くが、すぐに真実を知るに至る。そして二人はひとつの計画を実行に移した。ドイツ映画「二人のロッテ」のハリウッド版。

好きな映画をたまたまもう一度見たというだけなのだけれども、女の子の父になろうという自分にとっては、昔に見たときとまた違った気持ちがあった。みんな見れ。

アカペラ (新潮文庫)

山本 文緒 新潮社 2011年7月28日

 

山本文緒さんの復帰作。「アカペラ」は2001年作。その後、病気を患い休業。「ソリチュード」は2007年作。「ネロリ」は2008年作。3つの中篇小説。

素晴らしすぎる。以前、知り合いが以前に比べてイマイチとか言っていたので、控えていたのもあったけど、何言ってんだヴォケがぁ!それにしても、どうすれば、こんな気持ちよい文章をかけるのだろうか。あとがきも涙ぐんでしまったです。いや、ほんと、また小説を書いていただきありがとうございます。

Web開発者のための]大規模サービス技術入門 ―データ構造、メモリ、OS、DB、サーバ/インフラ (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

伊藤 直也, 田中 慎司 技術評論社 2010年7月7日

 

「筆者がはてなに入ったころは、どちらかというとはてなは理論よりも実践側に強い会社でした。強いというか、そこでやっていた。Webアプリケーション開発のセオリーをフレームワークにして、とにかく早く少ない工数でWebアプリケーションを作ることに長けてたし、またベンチャーの機動力を生かして新しいテクニックやオープンソースの実装をどんどん取り込んでいってその規模を拡大していきました。
しかし、サービスがヒットして一つ一つの問題が大きくなってくるにつれて、そのようなノウハウが通用しなくなってくる。つまり、課題が本質的になるにつれ、小手先のテクニックでは解決できなくなっていったわけです。そこで必要だったのは、新しい技術やノウハウではなく、ときに古典的だけれども本質的な理論だったというわけです。」

はてなのインターンシップの授業を元にした大規模なWebサービスの技術入門。OSやハードの視点からのパフォーマンスの考察、圧縮などのアルゴリズムなどの理論的な話から、実際に使用しているアプリ、サーバの構成、クラウドの使用まで、事細かにはてなの技術を紹介している。Webサービスになじみのない人にも読める良書。

少なくともWebサービスに疎い私にとってはいろいろは発見がある素晴らしい本だった。はじめはチームマネージメントなどの話から始まったため、どうなることかと心配になったが、読み進めるにつれて、実践的でかつ理論的でビジネス的な視点もある奥深い内容に驚いた。メモリリーク対策に仮想OSの自動再起動を使っているというのはビジネス的な視点も含めて、興味深かった。小さいサービスから始まり、試行錯誤で技術基盤を築いていっている姿勢には好感が持てた。
日本はソフトが弱い。その弱さが今のGoogleやAmazon、Facebook、Twitterにしてやられている状況を生んでいると思う。Googleすごい!じゃなくて、Googleの次は何か?を真剣に悩みたい。

既知からの自由

J.クリシュナムルティ コスモス・ライブラリー 2007年7月

 

結局「空」の話をしている気もしてきた。けど読んでいるだけで、こう、、、自由になれる気がする、、、のはおそらく気のせいだろうけど、やっぱり瞑想が大事と。そして瞑想についても師を持ってはいけない、自分で見つけなくてはいけないというのがなかなか困難に感じるのだけれども、どうなのだろう。

そいで、次は何を読むかなんだけど、この「既知からの自由」も2回目の訳とのことで、この訳のほうが一回目より良いらしい。ということで、この訳者の本を読むことにする。と思ったらすでに一冊読んでいた。代表作はとりあえず押さえよう。

山月記・李陵 他九篇

1994 岩波書店 中島 敦

 

漢学の背景がある中島 敦氏による11篇。

「李陵」「弟子」「名人伝」「文字禍」が心に残った。特に弓をマスターするために修行を積み、遂に「不射の射」をマスターするという「名人伝」は大好き。折に触れて読み返したい短編。

消費税は0%にできる―負担を減らして社会保障を充実させる経済学

菊池 英博 ダイヤモンド社 2009年7月17日

 

消費税にとどまらず、新自由主義のやり口を分析・非難し、それに迎合するマスコミ・官僚・政治家を非難する。元東京銀行のエコノミスト、菊池氏による辛らつな批判。

– いざなぎ以来の景気拡大は悪質な統計偽装
– 新自由主義はエセ経済学、国家を破綻させる、反国家的な破壊行動!
アメリカはチリやアルゼンチンと同様、新自由主義に破壊された。
新自由主義の徒である東大や慶応の教授を名指しで批判。
– 小泉改革の郵政事業民主化も医療費圧縮もアメリカの要望
郵政選挙にてアメリカの保険業界が巨大広告メディア経由で電通に小泉支持広告を依頼!
– 日本は財政危機ではない!諸外国の普通の認識。
500兆円を超える金融試算があり、純債務は300兆円。800兆円はウソ!
– 一般会計からのお金が行く特別会計にはお金がある!
特別会計では歳出の2割が余剰金として余る仕組み、これを一般会計に回せば一般会計が黒字に。
– 財政赤字の原因は医療費ではない!
– 消費税は諸外国と比べてまったく低くない!
– 日本はアメリカよりも小さな政府!
– お金を使わない日本人には、均衡財政は不向き!
橋本内閣は財政改革で倒れた。
– 法人税、取得税は引き上げるべき

著者は消されるのではないか?と心配になる衝撃的な内容。おんとし74歳だからOKなのか?マクロ経済学から新自由主義への総攻撃。日本にもまともな人がいるんだと安心した反面、なぜこのような人が少なく見えるのかが不思議。そして、どうすれば、まともな政策ができるのかが問題。
橋本竜太郎先生が候補者挨拶で国民にも謝り、アメリカにも謝った、というのは知らなかった。

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く

藻谷 浩介 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010年6月10日

 

藻谷氏による現在のデフレの原因を人口の波として分析。この分析により過去に起こっていた経済の動きも理解でき、今後起こるであろう超高齢社会への対応を考える。

伊東千秋氏が何度も薦めていたので読んでみたが、素人には分かりやすく書かれていて良かった。GDPの減少が問題で、結局なんとか付加価値を上げなくちゃいけないってことなのかな。一つ思うのはGDPへの貢献の度合いを企業単位で正規化させて定量的に表す指標はないものかね。それによって税の控除をさせるとかしてほしい。期間工とかで奴隷のように人を使って利益を上げてGDPを下げている企業には負のモチベーションを与えたい。それで経営者がしこたま儲けて海外に投資したら、ほんと意味ないし。ローマの富豪みたいに公共事業を自費でやってくれるなら大歓迎だけど。それにしてもこの本はマクロ経済学者とか新自由主義者とか大企業とか富裕層とか方々から叩かれているのかな。。。がんばってください。

消費税のカラクリ (講談社現代新書)

斎藤 貴男 講談社 2010年7月16日

 

消費税の暗部にスポットをあてた、斉藤貴男氏渾身の一冊。中小・零細企業の生の声が聞ける。

– 消費税は国税滞納額ワーストワン
– 価格に転嫁できない中小・零細業者
– 輸出戻し税
– 派遣に切り替えると合法的に節税できる消費税
– 富裕税廃止の代替財源としての大型間接税
– 不公平税制をただせば税収は増やせる

「本書は消費税論の決定版である」と熱く語られていたので、買ってみた。税務署のひどい仕打ちや、中小企業が価格に消費税を転嫁できない現状など、語られている内容は眠れなくなるほど衝撃的だった。輸出企業が消費税の還付金の割合が多い(トヨタ 2千億円とか)のは知っていたけど、派遣社員の採用まで助長していたとは知らなかった。経団連の売国奴たちは還付金と法人税の減税がほしいだけだから、早く消費税を失くさなければならない。