息子

1991 松竹 山田洋次

 若い時に見て感動した作品。娘に見せたくて見てみたが、自分も以前と変わらず感動できた。ただ昔は気づかなかったお父さんの感情に大きく共感できた。

登場人物

 時代は1990年代のバブル景気のころ。哲夫は岩手から出てきてアルバイトをして不安定な生活を送っている。父の昭男は妻を亡くし岩手で一人暮らし、哲夫を心配している。征子(せいこ)は鉄工所の得意先である製作所で働く工員だが、聴覚に障害がある。

物語の始まり

 東京の居酒屋でアルバイトをしている哲夫は、母の一周忌で帰った故郷の岩手でその不安定な生活を父の昭男に戒められる。その後、哲夫は下町の鉄工所にアルバイトで働くようになるが、製品を配達しに行く取引先で征子という美しい女性に好意を持つが、なかなかきっかけを掴めない。哲夫の想いは募るが、あとから彼女の障害について知る。

テーマ

 哲夫は征子の障害を物ともせずにアプローチしていく。一方の征子ははじめは戸惑うが徐々に真摯な想いを理解していく。二人の様子は美しく描かれている。父の昭男は落ち着かない「息子」を心配しているが、結婚を申し込んだと知って驚く。「本当に哲夫でいいのか?」と征子を本気で心配する。心優しく美しい征子が哲夫で良いというのと昭男は嬉しくて眠れなくなってしまう。

 以前は障害の困難を乗り越えて共に手を取り合って歩む姿が心に残った。もちろんその姿も変わらず印象的だったが、今回は息子を心配する父と喜ぶ父、極めつけの最後の回想シーンがグッと来た。自分もいつかこのような感情を抱くのであろうかと。

最後に

 息子や父の描写の他に、時代の雰囲気の描写が非常に勉強になる。寂れていく農村、地方からの出稼ぎで東京の発展が支えられていたこと。今よりも熱気があった時代。そんな時代描写などは郷愁を感じさせるように描かれてもいるが、実は日本の問題点を描いている気もする。

 息子を持つ父親は特に、子を持つ父親は見なくてはいけない名作。広く鑑賞されてほしい作品です。

かがみの孤城

2017 ポプラ社 辻村深月

おすすめの本などで良く見たので、手にとった。読み始めると面白くて一晩で読んだ。

登場人物

 安西こころは中学生になって学校に行けなくなった。行こうとするとお腹が痛くなる。共働きで忙している親には本当のことを言えないが同級生からのいじめが原因である。5月から家で過ごしている。

物語の始まり

 家に一人でいると部屋の鏡が光りだす。手をのばすと吸い込まれて、狼の仮面をかぶった少女に「安西こころさん。あなたは、めでたくこの城のゲストに招かれました。」と告げられる。鏡の中の城にはこころと同じように自分の部屋から来た子どもたちが6人いた。”オオカミさま”は鍵を見つければ、その城の中にある秘密の部屋に入ると願いが叶うという。城が消えてしまう3月31日までに探す必要がある。
 城は9時から5時まで合いていて、各自の部屋が用意されているので、こころは学校に行かない間にはその部屋に通い出す。他の6人も各自ゲームをしたりして交流が始まる。

テーマ

 「自己紹介が終わって、さっきからまた、みんな、互いに目を合わせなくなっている。黙ってしまう。
 言葉遣いがつっけんどんだったり、たどたどしかったり、いろいろだけど、それでも全員が心と同じことに気づいてそうだと分かったからだ。
 みんな、学校にいっていない。」

 不登校がテーマである社会派のファンタジーである。自分の世代でも友達が不登校になって迎えに行ったりしていたが、いつもお腹が痛くなっていた。娘の小学校でも昇降口に丸くなっていて、校舎に足を踏み入れられない子供をみた。小中高合わせて30万人以上が不登校という。もうマイナーな存在ではない。いじめについても虐められた側が学校を去るのはおかしい。裁判に訴えていじめた側が学校を去るようにしてほしい。

最後に

 自分は何故か不登校にはならなかったが、どちらかというといじめられる側だった。課程でのストレスなどもあると思うが、いじめを発生させてはいけない。また、よくわからない時代錯誤な画一的な教育をしている弊害もあると思う。最低限のラインだけ決めて、あとは自由にやればいいと思う。普通の企業だったらこの不登校の事態を重く見て改善に動くとおもう。教師の事務作業を減らしたり、教師側の労働環境を改善する必要もある。また義務教育は親の義務とされているが、国も教育を受けたくなるような学校を作る義務を負ってほしい。給食費だって教材費だって「義務教育は、これを無償とする」に違反していて、ハードルを作っていると思っている。

 とはいえ、辻村さんの素晴らしい仕掛けのせいで最後は泣かされてしまった。読みやすいし、大人にも子供にもおすすめです!

ジョゼと虎と魚たち

2020 松竹 タムラコータロー

 実写映画を見て、田辺聖子の短編も読んだ大好き大好きな話だが、アニメ化されたと聞いて映像もきれいだったので映画館に見に行った。実写映画とはまったく違う脚本でまた別な方面から考えさせる映画になっていて、素晴らしかった!

登場人物

 恒夫は海洋生物学を専攻する22歳の大学4年生。幼少の頃、メキシコの海のみに生息する「クラリオンエンゼル」を近所のアクアショップで見かけて以来、その群れを自分の目で見ることを夢に抱いている。通称ジョゼは幼いころから車椅子生活を送り、現在は祖母と二人暮らし。外は危ないと外出はさせてもらえず日中のほとんどを家で過ごして、自室で様々な絵を描いている。

物語の始まり

 ある夜のバイト帰りに坂道を猛スピードで下ってくる車椅子の女性、ジョゼを助ける。そのまま家まで送ってくると高額なバイト料を提示されて、ジョゼの相手をするように依頼された恒夫は留学費用のためにアルバイトとして通うようになる。ジョゼの可愛らしい容姿とは裏腹な高飛車な言動に翻弄され、アルバイトを辞めようとする。しかし一緒に様々な場所を訪れるうちにジョゼのことを理解していく。

テーマ

 一番ハイライトされていたのはハンディーキャップを持つ人への偏見や限界や可能性と感じた。いろいろな制約を課される中でできることもあるのかもしれない。けれど、自分がそのような状態に陥ったときに希望をもって前を向いて行けるかは、非常に難しい問題だということを胸元まで突きつけられた。

 もう一つは世界の美しさ・面白さというのだろうか。ジョゼは恒夫といっしょに町に出るようになるが様々なものを初めて体験し子供のように感動する。それが感動的なのだ。私達が何気なく見逃している風景などは何度も見ていたりもう一度見ることができると思っているからかもしれない。それを初めて見たり二度と見れないものだとしたら物の見え方は変わるだろう。

最後に

 映像も美しいし涙なくして見ることができないし、実写版と同じように今後の人生で何度も見返す映画だと思う。実写版を見た人にもおすすめできるし、制約を課される人にも一度自らを省みる機会を与えてくれる映画かもしれない。とにかくおすすめです!

椿の花咲く頃

2019 韓国KBS チャ・ヨンフン

 たまたま見た作品だが、素晴らしい作品。大ファンです。

登場人物

 ドンベクはシングルマザーで幼い息子を育てている。田舎町オンサンに越してきて、「カメリア」というスナックをくる。ヨンシクは学生時代から腕っぷしの強い熱血正義感で、自分でいろいろな事件を解決してしまう。それが功を奏して警察官に就任して、ソウルに赴任する。

物語の始まり

 ドンベクが開店した「カメリア」はその魅力に惹かれて男性客で繁盛する。奥さんたちが切り盛りするケジャン屋の夫たちは身内の店では気軽に話をできずに、カメリアにたむろするようになる。ケジャン横丁の奥さんたちはそれを嫌い、未婚の母であるドンベクに偏見をもっていじめるようになる。
 それから6年後、ソウルで働いていた熱血正義漢の警察官ヨンシクが、半ば左遷される形で故郷に赴任する。意中の女性が見つからなかったヨンシクだが、偶然見かけたドンベクに一目惚れする。
 その頃、世間では6年前にオンサンで起こった未解決の連続殺人事件が、再び関心を集めていた。

テーマ

 ドンベクはカメリアで絡んでくる男性客に確固たる態度で対応する。それがヨンシクがドンベクに真に心を奪われた瞬間である。長いものに巻かれない。シングルマザーや片親がいない人はマイナーな存在であっても胸を張っていきる。ヨンシクも正義感で弱いものに味方して長いものには決して巻かれない。そしてアンチミソジニーであり、女性を軽視する男性と、弱者を軽視するものと戦う。

最後に

 マイナーなものを軽視する文化はどこの国でもあると思うが、それに立ち向かう人々の姿は清々しい。日本や韓国のような男性優位の国では女性蔑視も重要な問題で、それにあがらう姿も美しい。男性である私はヨンシクのようでありたい。男性にも見てほしいけど、女性が見る作品なのかなぁ。そういえば、コン・ヒョジンが整形感がなくて好感が持てる。整形というのもメジャー主義だし、女性蔑視の要素があると思う。

 少子化の原因は、経済問題もあるけど、女性蔑視を重要視している女性と、それを軽視する男性のアンマッチもあると思っている。男性もぜひぜひ見て、ヨンシクのような漢になってほしい!

ノット・オーケー (原題: I Am Not Okay with This)

2020 Netflix Jonathan Entwistle

 主人公役のソフィア・リリーが美しすぎる。動画を見たのはそのため。けど、内容も半端なく良い。青すぎる青春ストーリー。

登場人物

 シドニー17歳、平凡でイケてない部類にはいる女子高生。ペンシルバニアに引越して高校に転入する。ディナはイケてる学生だが、日の当たらないシドニーと仲良くしてくれる。ルイスは鼻持ちならないイケメン学生。スタンリーは変人のご近所さん。シドニーに興味があるよう。

物語の始まり

 シドニーは父親が亡くなって日常のイライラが積もっている。学校のカウンセラーには日記をつけて精神を安定させるように言われる。同じ時期に転入してきたディナと仲良くなり、孤独の日々から脱して楽しい日々を過ごしている。ところがディナは大嫌いなルイスと付き合うことになって、親友を取られたシドニーは心中穏やかでない。そのときにシドニーは自分の中のイライラと周りの異変に気づく。スタンはシドニーに近づくにしたがって彼女の秘密に気づいていく。

テーマ

 シドニーは親ガチャの不条理を感じる。自分がメジャーでないことの諦めや悔しさとイライラ。

最後に

 まずは主人公クラスの人たちの良さ。シドニーもスタンも美しいし演技も素晴らしい。シドニーの能力の演出も良いし、脚本の設定も素晴らし。田舎町のもどかしさが画面から滲み出ている色合いも素晴らしい。
 悶々とした日々を描いた作品は大好き。大好物。たまらないです。何かうまく行かないことがある人は見たほうがいいのか。全体の完成度がたまらなく高いので、そういうところを見る人にもおすすめです!

魔法にかけられて 

2007 ディズニー ケヴィン・リマ

はじめはどこで見たのかAmazonだったのかもしれない。好きなので三回はみています。

登場人物

 ジゼルはおとぎ話の世界・アンダレーシアに住む麗しい乙女で、王子様との出会いを待っている。ロバートはニューヨークで離婚専門弁護士をしていて、妻は他界している。現実主義的な考えを持っている。その一人娘のモーガンもロバートに影響されて現実思考的である。アンダレーシアのエドワード王子はジゼルに会い結婚式をあげようとしたが、ジゼルがいなくなりニューヨークに乗り込む。

物語の始まり

 ジゼルはアンダレーシアでエドワード王子と結婚式に臨むはずだった。魔女に言われるがままに泉の底をみると、魔女に突き落とされて異空間に迷い込んでしまう。暗い場所から這い出すと、そこはニューヨークの交差点のマンホールであった。ジゼルは美しくない現実の世界であるニューヨークにおどろく。城のような建物に入ろうとしているところで、ロバートと一人娘と出会う。雨に濡れて一人で夜のニューヨークを彷徨っている女性を一人にしておけず、ロバートは家に泊めることにする。そこからロバートの日常は非現実的なジゼルの登場によりかき回されはじめる。

テーマ

 ギスギスしている世の中でも見方を変えれば温かい世界に変えることができる。いがみあっている人たちも見方や考え方を変えれば仲良くなれる。みんな温かい世界や、慈愛に満ちた世界を望んでいる。ジゼルは周りの人に温かい見方を与えて世界を変えていく。そしてみんな幸せになっていく。そんな物語です。

最後に

 随所にパンチの効いた風刺が入っている。たとえばネズミやカラス、ゴキブリが部屋を掃除するシーン。都会では忌み嫌われている動物たちが部屋に入ってきて、部屋を掃除する。弁護士も面白くない仕事として描かれている。多くの部分は実写で描かれているが、ディズニーの雰囲気にまったく合っていなくて、その違和感もおもしろい。

 ギスギスした世界に住んでいる人たちがギゼルの魔法によって笑顔になる。いろんな人が元気になっていくのをみて自分も元気になっていきます。楽しい気分になりたい人におすすめの作品です!

Life! (原題: The Secret Life of Walter Mitty)

Secret life of Walter Mitty

 

“To see the world, things dangerous to come to,
To see behind walls, to draw closer,
To find each other and to feel,
That is the purpose of life.”

世界を見よう、
危険に立ち向かおう、
壁の向こうにあるものを見よう
そこに向かって行こう、
互いを見つけよう、
感じるよう。
それが人生の目的だ。

 

ウォルター(ベン・スティラー)は、『LIFE』編集部のネガフィルム管理部門で真面目に働きながらも、地味で平凡な人生を送る冴えない男。ある日出社したウォルターは、突然のライフ社事業再編と、それによるLIFE誌の廃刊を知らされる。

この廃刊を知っていたLIFE誌を代表するフォト・ジャーナリストのショーン(ショーン・ペン)は、LIFE誌のための最後の撮影フィルムを届けた。しかしショーンが「自身の最高傑作ゆえに、最終号の表紙に相応しい」と記す「25番目のフィルム」は撮影フィルムから欠けていた。

25番目のフィルムのありかを聞くため、ウォルターは旅するショーンを追って旅に出る。内にこもりがちの男が自分と向き合い、新しい自分に出会う物語。

 

大自然の映像も美しく、ウォルターが過去の自分を顧みるとともに、力強く自分を再発見していく様に感動した。若い頃の私は未知なるものに出会うために旅をしていたんだった。 私も今の自分を脱して、未知に向かって行かなければ!

 

Webサービス開発徹底攻略 (WEB+DB PRESS plus)

勝間 亮, 石田 忠司, 吉田 俊明, かなだ まさかつ, 牧本 慎平, 成田 一生, 舘野 祐一, 濱崎 健吾, 鈴木 慎之介, 齊藤 宏多, 杉谷 保幸, 江口 滋, 上谷 隆宏, 青木 俊介, 久保 達彦, 池邉 智洋, 谷口 公一, 田淵 純一, 伊野 友紀 技術評論社 2013年1月26日

 

メジャーWebサービスの裏側。

非常に勉強になった。クックパッドが一番混み合うのはバレンタインデーとは。

世界経済を破綻させる23の嘘

ハジュン・チャン 徳間書店 2010年11月19日

 

「史上最もウイットに富む経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスはかつて『経済学は経済学者の就職口として大いに役立っている』と言った。もちろんこれは誇張ではあるが、当たらずとも遠からず、ではないだろうか。経済学者というのはどうやら、現実世界の経済運営にはあまり適していないようだ。
いや、実際にはそれどころではない。経済学が現実の経済をすっかり害してしまう場合もある、と考えざるを得ない理由がいろいろあるのだ。」

ケンブリッジ大学で経済を教えるハジュン・チャン氏による自由市場資本主義への批判。23のテーマに分けて、難しい数字などはほとんど登場せず例をとり分かりやすく説明されている。

全体的に自分が感じている方向と一致していて読んでいて気持ちよかった。インターネットのインパクトを通信速度だけで比較しているところは少しいただけなかった。それでもインターネットは洗濯機よりも社会的なインパクトが低いというのは納得。マイクロクレジットの裏や失敗は知らなかったため、勉強になった。

物理学では一神教徒がビッグバンを証明するためにいろいろな仮説と理論をこねくり回しても、ほとんど無害だけど、経済学では経済学者が自分の信念から出てきた仮説や理論を適用する場所があるから問題なんだろうか。

特に良かった点は著者が韓国人なので、知らなかった韓国の状況は描かれていたこと。
―民族浄化をしたルワンダは民族的・言語的に韓国に近い。
―世界に投資対象と見なされなかったPOSCO。
―LGは望んでいた繊維産業への参入を政府に阻まれ、強制的に電線産業に参入させられた。
―韓国政府は現代グループに凄まじい圧力をかけて造船所を作らせた。
―韓国の労働市場は柔軟性が高すぎるため、成績優秀者の80%が医学部を進学を望んでいた。
―韓国人は「中国人より儒者」「ロシア人より共産主義」「日本人より国家資本主義」そして現在「アメリカ人より新自由主義」

韓国が極に走ってしまうという傾向があるのは、なんか日頃から感じるところ。とりあえず国家がつぶれないようにハジュン・チャン氏にがんばってもらいたい。

ファミリーゲーム

1999 エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ ナット・キング・コール, ラビン・スプーンフル, ラーズ, 少年ナイフ, ボブ・カリール, リンダ・ロンシュタット

サマースクールで出会ったハリーとアニー。二人はお互いが自身にそっくりだと気づき驚くが、すぐに真実を知るに至る。そして二人はひとつの計画を実行に移した。ドイツ映画「二人のロッテ」のハリウッド版。

好きな映画をたまたまもう一度見たというだけなのだけれども、女の子の父になろうという自分にとっては、昔に見たときとまた違った気持ちがあった。みんな見れ。